競馬で勝ったりパチンコで大当たりした日は必ずどこかしらでなまえに出会す。ただの偶然だとは思うが、実際なまえに会った日に打ちに行くとまぁまぁの確率で当たるモンだから、会うたび少し浮き足立つようになった。

「わっ」
「お……っと、悪ぃ悪ぃ」

そして今日、たまたま曲がり角でぶつかった。会えてラッキー、と思う気持ちはすぐに消え失せてしまった。慌てて支えたなまえが泣いていたせいで。

「うおッ、ど、どうしたよ? そんな痛かったのか? 打ちどころが悪かったとか?」
「あ、ごめんなさい、なんでもないんです……すみません、それじゃ」

 顔を前髪で隠すように俯いて、なまえは足早に立ち去ろうとする。が、やはり放っておけなくてその手を掴み引き止めた。

「なんにもねーってことはねぇだろ、なんかこのままじゃ俺っちが泣かせたみてぇだし」
「んう、ごめんなさい……」

大きい瞳からぼろぼろ零れてくる涙を袖口で拭ってやる。胸が変な痛み方をしていた。泣いているところなんて初めて見たが、得をしたとは微塵も思えなかった。

「ほら、せっかくの別嬪が台無しだぜ? このまま泣き止まねぇンなら気晴らしに二人でパチンコでも打ちに行くか?」
「……ふふ、行きませんよ」

 泣きながらも微かに笑ったのを見て、少しだけ安堵する。ぎゅうっと抱き締めてしまいたい衝動に駆られるが、あんまり良くないだろうと自制して軽く頭を撫でるだけにしておいた。

「ま、パチンコは冗談にしても、話くらいなら聞いてやれるからな。あんま抱え込みすぎンなよ」
「はい……ありがとうございます、」

結局なんで泣いていたのかも訊けねぇまま、まだ用事があるからと言われて手を振った。

 その日の帰りはどこにも寄らなかった。こんな日に勝ったってスッキリしねぇだろうから。それにしても、なんで泣き顔を見たり笑顔を見たりするたびにここまで一喜一憂してしまうのか。

俺にとっての勝利の女神みたいなモン、というだけではないような気がした。まだはっきりとはわからねぇけど。