幸せな日
昨日の晩からずっとそわそわしていた。今日は夏目くんと付き合い始めてから、初めてのデートの日だ。どんな服を着ていこうとかどんな髪型で行こうとか、手は繋いでいいんだろうかとか、色々なことを考えていたらぐっすり眠れなくなってしまった。
どきどきと緊張しながら約束の時間より少し前に待ち合わせ場所に着くと、そこには既に夏目くんがいた。私が慌てて駆け寄ると彼はいつもどおり涼しい顔で微笑んだ。
「やァ、おはよウ。そんなに慌てなくてもボクも今来たところだヨ」
「お、っおはよう! ほんとに?」
「フフ、どうだろうネ? ちょっと早いけどもう行こうカ」
「うん」
さりげなく手を握られる。それだけでも浮き足立ってしまうのに、ちらりと隣にいる彼を見たとき、またしても爽やかな笑顔を返されてしまったので余計にどきどきしてしまった。
まずは水族館に行き、そのあと夏目くんが調べてくれたお洒落なカフェに行って、それから少し歩いてゲームセンターに立ち寄った。
どこに行っても何をしてもずっと楽しくて、今日死んじゃうんじゃないか、なんて馬鹿なことを本気で考えてしまう。
とはいえ、何もかも忘れていられるほど現実は甘くない。幸せな時間だって必ず終わりがやってくる。
真っ赤に燃えるような夕焼けの空を見て、なんとなく泣きそうな気分になった。このままずっと一緒にいられたら良いのに。今日がずっと終わらなければいいのに。
「……どうしたノ、そんな暗い顔しテ」
「えっ、あ……ごめんね、いっぱい歩いて疲れちゃったかも」
夕ご飯まで一緒に食べ終え近くの公園でひと息ついていると、夏目くんが少し心配そうに私の顔を覗き込んだ。咄嗟に誤魔化したけれど、夏目くんにジッと見つめられてやっぱり本心を打ち明けてしまった。
「ううん、嘘、疲れてない……すごく楽しくて幸せだから、このまま今日が終わっちゃうのがなんか、寂しくて……ごめんね、暗い顔しちゃって」
「ウウン、謝らなくていいヨ。でも魔法使いのボクとしてハ、そんな寂しそうな顔で帰すわけにはいかないんだよネ。……そこデ、キミにはとっておきの魔法をかけてあげよウ♪」
夏目くんは得意げにそう言って、私の手を取った。私が首を傾げて手を見つめていると、小声で「目を瞑っテ」と囁かれる。少しどきどきしながらも言われたとおりに目を瞑った。
「…………もういいヨ、目を開けてごらン」
「……わ、」
恐る恐る目を開けると、手首に可愛らしいブレスレットが付けられていた。小さな赤い石のついたブレスレットだ。
「夏目くん、」
ありがとう、と顔を上げて言おうとしたとき、彼の柔らかい手に頬を撫でられ、そのままくちびるが重なった。私がびっくりしてぽかんとしていると、夏目くんは悪戯が成功した子どもみたいに無邪気に笑った。
「心配しなくてモ、次はもっともっと楽しくて幸せなデートにしてあげル」
「……もうこれ以上なんてないよ〜……」
みるみるうちに顔に熱が集まるのがわかった。夏目くんは相変わらず満足気に笑っている。胸がいっぱいになって溶けてしまいそうだった。
日の沈んだ薄暗い公園で、夏目くんだけがきらきら光って見えたのも、彼の魔法のせいなんだろうか。だとしたらもう一生この魔法は解けないんだろうな、なんて、ちょっと贅沢すぎるだろうか。
どきどきと緊張しながら約束の時間より少し前に待ち合わせ場所に着くと、そこには既に夏目くんがいた。私が慌てて駆け寄ると彼はいつもどおり涼しい顔で微笑んだ。
「やァ、おはよウ。そんなに慌てなくてもボクも今来たところだヨ」
「お、っおはよう! ほんとに?」
「フフ、どうだろうネ? ちょっと早いけどもう行こうカ」
「うん」
さりげなく手を握られる。それだけでも浮き足立ってしまうのに、ちらりと隣にいる彼を見たとき、またしても爽やかな笑顔を返されてしまったので余計にどきどきしてしまった。
まずは水族館に行き、そのあと夏目くんが調べてくれたお洒落なカフェに行って、それから少し歩いてゲームセンターに立ち寄った。
どこに行っても何をしてもずっと楽しくて、今日死んじゃうんじゃないか、なんて馬鹿なことを本気で考えてしまう。
とはいえ、何もかも忘れていられるほど現実は甘くない。幸せな時間だって必ず終わりがやってくる。
真っ赤に燃えるような夕焼けの空を見て、なんとなく泣きそうな気分になった。このままずっと一緒にいられたら良いのに。今日がずっと終わらなければいいのに。
「……どうしたノ、そんな暗い顔しテ」
「えっ、あ……ごめんね、いっぱい歩いて疲れちゃったかも」
夕ご飯まで一緒に食べ終え近くの公園でひと息ついていると、夏目くんが少し心配そうに私の顔を覗き込んだ。咄嗟に誤魔化したけれど、夏目くんにジッと見つめられてやっぱり本心を打ち明けてしまった。
「ううん、嘘、疲れてない……すごく楽しくて幸せだから、このまま今日が終わっちゃうのがなんか、寂しくて……ごめんね、暗い顔しちゃって」
「ウウン、謝らなくていいヨ。でも魔法使いのボクとしてハ、そんな寂しそうな顔で帰すわけにはいかないんだよネ。……そこデ、キミにはとっておきの魔法をかけてあげよウ♪」
夏目くんは得意げにそう言って、私の手を取った。私が首を傾げて手を見つめていると、小声で「目を瞑っテ」と囁かれる。少しどきどきしながらも言われたとおりに目を瞑った。
「…………もういいヨ、目を開けてごらン」
「……わ、」
恐る恐る目を開けると、手首に可愛らしいブレスレットが付けられていた。小さな赤い石のついたブレスレットだ。
「夏目くん、」
ありがとう、と顔を上げて言おうとしたとき、彼の柔らかい手に頬を撫でられ、そのままくちびるが重なった。私がびっくりしてぽかんとしていると、夏目くんは悪戯が成功した子どもみたいに無邪気に笑った。
「心配しなくてモ、次はもっともっと楽しくて幸せなデートにしてあげル」
「……もうこれ以上なんてないよ〜……」
みるみるうちに顔に熱が集まるのがわかった。夏目くんは相変わらず満足気に笑っている。胸がいっぱいになって溶けてしまいそうだった。
日の沈んだ薄暗い公園で、夏目くんだけがきらきら光って見えたのも、彼の魔法のせいなんだろうか。だとしたらもう一生この魔法は解けないんだろうな、なんて、ちょっと贅沢すぎるだろうか。