友人に誘われ、ある日、高校のとき仲の良かったグループで飲みに行くことになった。いきなり決まったことだったからつむぎくんに報告することもなく、私は久しぶりに会う友だちとかなり遅くまでお酒を飲んでいた。

「あ、やばい。終電あと五分なんだけど……間に合わないや」

ふわふわとアルコールの回った頭でけらけら笑いながらそう言うと、隣に座っていた男友だちもつられて笑った。

「じゃあ家来ちゃう?」
「あはは、何言ってんの」

タクシーでも拾って帰ろう、と鞄を取ってスマホを見る。画面を見てギョッとした。つむぎくんから何件か着信が入っていて、一番直近のメッセージには「もう電車無くなっちゃうと思うので、迎えに行きますね」と書かれてあったから。

 迎えにって言ったって行先も教えていないのに、と思いながら友だちに適当な言い訳をしていそいそと店を出た。すると、ちょうど店先まで来ていたつむぎくんとばったり出くわした。

「つむぎくん」
「こんばんは。あ〜、やっぱりべろんべろんですね。ダメですよ、俺に内緒で飲み会なんて」

そっと手を握られる。不思議に思うこともたくさんあるけれど、ひとまずつむぎくんに会えたことが嬉しくてついつい笑ってしまった。

「つむぎくんなんでいるの?」
「もちろん、心配だったからですよ〜。歩けますか?」
「うん……私、今日のこと言ってたっけ?」
「いえ、教えてもらってないですよ。今後は心配なのでちゃんと言ってくださいね」

 うん、と返事をして、ふらふら歩きながらつむぎくんの肩に頭を預ける。つむぎくんは広い道まで出ると、タクシーを拾ってくれた。私がぼんやりしているなか、つむぎくんは運転手さんに自分の家の住所を告げる。

「…………あんまりこういうことが続くなら、お家に閉じ込めちゃいますからね」

ふと、小さくそう囁かれ、随分物騒な冗談だなとくすくす笑って彼を見た。薄暗い車内に、不意に外の灯りが差し込み彼の顔を照らす。一瞬だけ見えたつむぎくんの表情が冗談を言っているふうにはとても見えなくて、私は返す言葉もなく黙り込んでしまった。

 つむぎくんは家に着いてドアを閉めるなり、玄関先で私をぎゅうっと強めに抱きしめてきた。びっくりしながらも、広い背中に手を回して抱き返してみる。

「……えっと、心配かけてごめんね」
「いえ、大丈夫ですよ」
「うん……迎えに来てくれてありがとう、大好きだよ」
「はい、俺も大好きです」

噛み締めるようにそう言って、つむぎくんはやっと身体を離した。

 ……それにしても、どうして私の居場所がわかったんだろう? 気にはなるけれど、何となく聞くのが怖くて酔いが覚めたあともつむぎくんには訊ねられなかった。