あなただけの
マジック用の鳩はみんな、羽の一部を予め切断されるらしい。もちろん私はマジシャンではないから皆がそうしているのかは知らないけれど、遠くに行ってしまわないよう羽を間引くことがあるそうだ。
そうやってマジシャンの相棒として躾られた鳩は、舞台でその美しい白い羽根を羽ばたかせ観客を驚かせる。私はそれが少し、羨ましかった。
朝、目を覚ますと庭で鳩たちに餌をやっている渉が窓の向こうに見えた。楽しげにはしゃぎながら餌をやっている姿は朝日よりきらきらと眩しく映る。
手ぐしで髪を整え、顔を洗い、リビングから窓を開けて庭に出ると渉が大型犬みたいに元気よく振り返った。
「やぁやぁ、おはようございます! 今朝は早いですねぇ、お腹が空きましたか?」
「渉、」
小さく名前を呼ぶと、渉は不思議そうに首を傾げて私に近付いた。その手の指先を控えめに握ってから、ぽすんと身体を任せるように彼に抱き着いた。
「……悪い夢でも見ましたか?」
「ううん。隣に渉がいなかったから」
「おや、随分可愛いことをおっしゃいますね! これは失礼しました」
私が黙って彼に抱き着いたままでいると、彼はぽんぽんと私の頭を撫でてから、突然私の膝裏と肩を支えて抱き上げてきた。
「では私たちも朝食にいたしましょう! 本日はこの日々樹渉が甲斐甲斐しくお傍でお世話させていただきますよ!」
「ふふ、ありがと」
抱き上げられたまま彼の頬に唇を寄せると、彼はにっこり笑って唇にキスをし直してくれた。
一緒に居られる、それだけでもこんなに胸がいっぱいになるほど幸せだ。けれど私はよくばりだから、ついついもっと先を求めてしまう。
「渉、変なこと言ってもいい?」
「もちろん、大歓迎ですよ」
「……私ね、渉の鳩に嫉妬したの」
「それはそれは……どうしてです?」
渉はソファへ私を下ろすと、跪いて私の手を包み込むように握った。
「私も渉の為だけに生きたい。足の健を切って遠くへ行けないようにして、ずっと渉の傍にいられたら良いのに、って思って」
「おや、まぁ……フフ、随分熱烈なプロポーズですね」
「もう」
「貴女が本当に望むのならそうしましょうか」
微笑みを浮かべたまま、彼は私の手の甲にキスをする。私は真意を探ろうと彼の綺麗な瞳を見つめるけれど、いつもの冗談のようには思えなかった。
「この美しい脚を切って、私から離れないよう鎖で繋いで、他の誰にも見せないようにしてしまいましょうか」
「……してくれるの?」
私が声を震わせながらそう訊ね帰すと、渉は数秒間黙ったあと、仮面を被るようにニッコリと笑って見せた。
「フフ、冗談ですよ。さて、朝食はパンでいいですか?」
「うん……」
渉は立ち上がって私の額にキスをすると、キッチンへ向かってしまった。
「ほんとにしてほしいのにな」
ぽつりと独り言をこぼすと、彼は聞こえたのか聞こえていないのか、私を振り返って少し困ったように笑った。
そうやってマジシャンの相棒として躾られた鳩は、舞台でその美しい白い羽根を羽ばたかせ観客を驚かせる。私はそれが少し、羨ましかった。
朝、目を覚ますと庭で鳩たちに餌をやっている渉が窓の向こうに見えた。楽しげにはしゃぎながら餌をやっている姿は朝日よりきらきらと眩しく映る。
手ぐしで髪を整え、顔を洗い、リビングから窓を開けて庭に出ると渉が大型犬みたいに元気よく振り返った。
「やぁやぁ、おはようございます! 今朝は早いですねぇ、お腹が空きましたか?」
「渉、」
小さく名前を呼ぶと、渉は不思議そうに首を傾げて私に近付いた。その手の指先を控えめに握ってから、ぽすんと身体を任せるように彼に抱き着いた。
「……悪い夢でも見ましたか?」
「ううん。隣に渉がいなかったから」
「おや、随分可愛いことをおっしゃいますね! これは失礼しました」
私が黙って彼に抱き着いたままでいると、彼はぽんぽんと私の頭を撫でてから、突然私の膝裏と肩を支えて抱き上げてきた。
「では私たちも朝食にいたしましょう! 本日はこの日々樹渉が甲斐甲斐しくお傍でお世話させていただきますよ!」
「ふふ、ありがと」
抱き上げられたまま彼の頬に唇を寄せると、彼はにっこり笑って唇にキスをし直してくれた。
一緒に居られる、それだけでもこんなに胸がいっぱいになるほど幸せだ。けれど私はよくばりだから、ついついもっと先を求めてしまう。
「渉、変なこと言ってもいい?」
「もちろん、大歓迎ですよ」
「……私ね、渉の鳩に嫉妬したの」
「それはそれは……どうしてです?」
渉はソファへ私を下ろすと、跪いて私の手を包み込むように握った。
「私も渉の為だけに生きたい。足の健を切って遠くへ行けないようにして、ずっと渉の傍にいられたら良いのに、って思って」
「おや、まぁ……フフ、随分熱烈なプロポーズですね」
「もう」
「貴女が本当に望むのならそうしましょうか」
微笑みを浮かべたまま、彼は私の手の甲にキスをする。私は真意を探ろうと彼の綺麗な瞳を見つめるけれど、いつもの冗談のようには思えなかった。
「この美しい脚を切って、私から離れないよう鎖で繋いで、他の誰にも見せないようにしてしまいましょうか」
「……してくれるの?」
私が声を震わせながらそう訊ね帰すと、渉は数秒間黙ったあと、仮面を被るようにニッコリと笑って見せた。
「フフ、冗談ですよ。さて、朝食はパンでいいですか?」
「うん……」
渉は立ち上がって私の額にキスをすると、キッチンへ向かってしまった。
「ほんとにしてほしいのにな」
ぽつりと独り言をこぼすと、彼は聞こえたのか聞こえていないのか、私を振り返って少し困ったように笑った。