ゆらゆら、水面のうえをやわらかなひかりが踊っているようだった。俺は腕を枕にしてテーブルに頭をあずけ、ぼんやりと太陽の射し込む硝子のコップのなかを、ぬるくなった水を見つめていた。

「……凛月くん。あれ、寝てる?」
「んー……起きてるよぉ」
「あ、起きてた」
「なに、やっと俺のこと構う気になった?」

顔は上げないまま、なまえのほうを向いてにやにや笑ってみせる。彼女ははにかみ笑うと、ちょこんと俺の隣に腰を下ろした。

「別に意地悪してるんじゃないよ、やることが残ってたから」
「ふーん」

 わさと拗ねたような声を出せば、なまえは困ったように俺の顔を覗き込む。そのとき不意に、彼女の虹彩を陽の光が透かすように照らした。一瞬、呼吸も忘れてそのひかりに見入ってしまう。

「凛月くん?」

彼女の甘い声で、はたと正気に戻った。余裕ぶって微笑みを浮かべ、彼女の頬に触れる。

「やること、終わったんだよね?」
「……んん……でも、そろそろ夕飯の準備しなきゃ……」
「そんなのいいじゃん、今日くらいさ……それともなに、良い子で待ってた俺にご褒美をあげるより大切なことが他にあるわけ?」

 唇を触れる直前まで近づけて甘く囁くと、なまえはほんのり頬を赤くして目を伏せた。なんだかんだ言ってなまえは俺に甘い。頬に添えた右手の親指で彼女の耳を撫で、唇を食むようにキスをする。薄目で彼女の顔を覗き見ると、長い睫毛にひかりが反射してきらきら輝いて見えた。

 ゆっくり瞬きをするたび、ゆらゆらとなまえの虹彩のなかでひかりが踊る。この瞬間だけは、太陽の眩いひかりですら俺のもの。どんなものより綺麗に照らされるなまえも含めて全部全部、俺だけのもの。