やさしいハイエナさん
「こちょこちょ」
「ヴワァッ!!?ちょっ、やめてくださいよぉ」
ソファからはみ出したジュンくんの足をくすぐる。ジュンくんは色気のない叫び声を上げて足を引っ込め、なんだかんだ甘い顔で笑ってくれた。
ハイエナみたいだなんて言われているけれど、私のことはかなり甘やかしてくれる。料理に失敗しても、急にデートに行けなくなっても、私がわがままを言っても、ジュンくんは笑って許してくれる。
ソファに横たわるジュンくんに覆い被さると、ジュンくんは読んでいた雑誌をテーブルに置いて、私の頭を撫でてくれた。
「どうしたんすかぁ、不機嫌な顔して」
「……ジュンくんって怒らないよね」
「はあ?くすぐったくらいで怒らないでしょ」
「他のことでも、私が理不尽なこと言っても怒らないから……」
そうっすかね、とジュンくんは微笑みながら私を見つめる。金色の瞳が私を映している。綺麗だなぁ、と彼を見つめて、ジュンくんのお腹の辺りに腰を下ろした。
「なまえのわがままとか理不尽なんて、おひいさんに比べれば大したことないですよ。また何かやらかしたんすかぁ?」
「……これからやらかすのっ!」
バッとジュンくんの脇腹に手を伸ばし、ひたすらくすぐってやる。首筋とか脇腹、脇、色んなところをくすぐって、ジュンくんが怒るのを待った。
「うわっ!!ちょっ、あは、はははっ!やめっ、も、タンマタンマっ、あははは!」
ジタバタするのを上手く避けてくすぐり続ける。なんか爆笑してるのも可愛いなぁ、なんて思っていると、腕を捕まえられた。
「っもう!何してんすかあんたっ、もう怒りましたからね!」
「ひゃあっ!?」
がっしり腕を掴まれると、すぐにぐるんと上下を交代させられ、今度はジュンくんがニヤリと笑いながら私をくすぐる。
「あはははっ、やだあ!ジュンく、ごめ、っきゃははは!」
「な〜んだ、自分も弱いんじゃないっすか。やめませんよぉ、お望み通りカンカンに怒ってますからね」
どうしてくすぐられるとこんなに笑ってしまうのだろう?散々くすぐられて、涙が出てきたところでジュンくんがやっと手を止めた。
「ごめ、ごめんなさ……っはぁ、はぁ……もぉしないかゃ……」
「…………ダメですよぉ、俺もう堪忍袋の緒が切れちまいましたから」
ジュンくんはそう言いながら笑って、私の服の中に少しだけ手を入れる。つう、と脇腹のあたりをなぞられるだけでもくすぐったい。
「っ、ふふ、やだ……ジュンくん、」
「くすぐってませんよ、触ってるだけ」
「やだ、くすぐったいもん……」
「……くすぐったがりの人って感度も良いらしいっすよ」
悪戯っ子みたいに笑って、ジュンくんがお腹の辺りにキスをする。ジュンくんは優しい。同い年の大学生はきっと遊び三昧で、恋人が出来たら割と直ぐにでもそういうことをするのだろうけれど、ジュンくんは違う。
付き合い始めてもう一年経つけれど、私に手を出すことはないし、したいとも言わない。……でもそれって本当に優しさなのだろうか。
「試してみる……?」
ドキドキしながらジュンくんを見上げると、彼は一瞬眉間に皺を寄せたあと、繕うように笑って私の頭をわしゃわしゃと撫でた。あぁ、また誤魔化される。
「なぁに言ってんすか、まだ真昼間ですよ」
「……夜でもしないくせに。なんだか、私ばっかりジュンくんのこと好きで、私ばっかり掻き乱されて……さみしい」
不貞腐れたように言ってしまって、尚更自己嫌悪に陥ってしまう。ジュンくんは私の頭を撫でる手を止めて、そのままするりと首筋を撫でた。
「して欲しいんすか?」
真面目な声色に、逸らした目線を彼へ戻す。ジュンくんは真っ直ぐ私を見下ろしていた。まるで肉食獣みたいなギラついた瞳で。
「……これでも我慢してるんすよ、あんたのこと大事にしたいし……でも俺の好きが伝わってねぇのは、ムカつきますねぇ?」
指先が首筋を謎る。彼の頭が近付いて、首にかぷりと噛みつかれた。軽く噛み付いたあと、皮膚を舌でなぞり、飢えたけもののような瞳が間近で私を捕らえる。
「好きですよ。このまま食っちまいたいぐらい」
なぁんちゃって、と笑うジュンくんは、やっぱりすぐに私から離れようとする。咄嗟に胸ぐらを掴んで引き寄せ、そのままキスをした。
唇を割って、彼の犬歯をなぞる。深くキスをしたあと唇を離すと、ジュンくんからはもう笑顔が消えていた。
「せっかく逃げるチャンスをあげたのに、無駄にしちまうんすね。覚悟できてます?」
「ずぅっと前から出来てるもん。……早く食べて、ひとつ残らず、全部」
彼の首に腕を回してそう言うと、ジュンくんはニヒルに唇を吊り上げ笑った。今までの甘い微笑みじゃなくて、えものを前にしたけものの恍惚な笑みだ。
「じゃあ遠慮なく、いただきますよ」
「ふふ、召し上がれ」
ずっと食べてほしかったのに、ジュンくんがあんまり優しいからこんなに時間がかかってしまった。大好きなやさしいハイエナさん、次からはもうちょっと早く食べてほしいな。
「ヴワァッ!!?ちょっ、やめてくださいよぉ」
ソファからはみ出したジュンくんの足をくすぐる。ジュンくんは色気のない叫び声を上げて足を引っ込め、なんだかんだ甘い顔で笑ってくれた。
ハイエナみたいだなんて言われているけれど、私のことはかなり甘やかしてくれる。料理に失敗しても、急にデートに行けなくなっても、私がわがままを言っても、ジュンくんは笑って許してくれる。
ソファに横たわるジュンくんに覆い被さると、ジュンくんは読んでいた雑誌をテーブルに置いて、私の頭を撫でてくれた。
「どうしたんすかぁ、不機嫌な顔して」
「……ジュンくんって怒らないよね」
「はあ?くすぐったくらいで怒らないでしょ」
「他のことでも、私が理不尽なこと言っても怒らないから……」
そうっすかね、とジュンくんは微笑みながら私を見つめる。金色の瞳が私を映している。綺麗だなぁ、と彼を見つめて、ジュンくんのお腹の辺りに腰を下ろした。
「なまえのわがままとか理不尽なんて、おひいさんに比べれば大したことないですよ。また何かやらかしたんすかぁ?」
「……これからやらかすのっ!」
バッとジュンくんの脇腹に手を伸ばし、ひたすらくすぐってやる。首筋とか脇腹、脇、色んなところをくすぐって、ジュンくんが怒るのを待った。
「うわっ!!ちょっ、あは、はははっ!やめっ、も、タンマタンマっ、あははは!」
ジタバタするのを上手く避けてくすぐり続ける。なんか爆笑してるのも可愛いなぁ、なんて思っていると、腕を捕まえられた。
「っもう!何してんすかあんたっ、もう怒りましたからね!」
「ひゃあっ!?」
がっしり腕を掴まれると、すぐにぐるんと上下を交代させられ、今度はジュンくんがニヤリと笑いながら私をくすぐる。
「あはははっ、やだあ!ジュンく、ごめ、っきゃははは!」
「な〜んだ、自分も弱いんじゃないっすか。やめませんよぉ、お望み通りカンカンに怒ってますからね」
どうしてくすぐられるとこんなに笑ってしまうのだろう?散々くすぐられて、涙が出てきたところでジュンくんがやっと手を止めた。
「ごめ、ごめんなさ……っはぁ、はぁ……もぉしないかゃ……」
「…………ダメですよぉ、俺もう堪忍袋の緒が切れちまいましたから」
ジュンくんはそう言いながら笑って、私の服の中に少しだけ手を入れる。つう、と脇腹のあたりをなぞられるだけでもくすぐったい。
「っ、ふふ、やだ……ジュンくん、」
「くすぐってませんよ、触ってるだけ」
「やだ、くすぐったいもん……」
「……くすぐったがりの人って感度も良いらしいっすよ」
悪戯っ子みたいに笑って、ジュンくんがお腹の辺りにキスをする。ジュンくんは優しい。同い年の大学生はきっと遊び三昧で、恋人が出来たら割と直ぐにでもそういうことをするのだろうけれど、ジュンくんは違う。
付き合い始めてもう一年経つけれど、私に手を出すことはないし、したいとも言わない。……でもそれって本当に優しさなのだろうか。
「試してみる……?」
ドキドキしながらジュンくんを見上げると、彼は一瞬眉間に皺を寄せたあと、繕うように笑って私の頭をわしゃわしゃと撫でた。あぁ、また誤魔化される。
「なぁに言ってんすか、まだ真昼間ですよ」
「……夜でもしないくせに。なんだか、私ばっかりジュンくんのこと好きで、私ばっかり掻き乱されて……さみしい」
不貞腐れたように言ってしまって、尚更自己嫌悪に陥ってしまう。ジュンくんは私の頭を撫でる手を止めて、そのままするりと首筋を撫でた。
「して欲しいんすか?」
真面目な声色に、逸らした目線を彼へ戻す。ジュンくんは真っ直ぐ私を見下ろしていた。まるで肉食獣みたいなギラついた瞳で。
「……これでも我慢してるんすよ、あんたのこと大事にしたいし……でも俺の好きが伝わってねぇのは、ムカつきますねぇ?」
指先が首筋を謎る。彼の頭が近付いて、首にかぷりと噛みつかれた。軽く噛み付いたあと、皮膚を舌でなぞり、飢えたけもののような瞳が間近で私を捕らえる。
「好きですよ。このまま食っちまいたいぐらい」
なぁんちゃって、と笑うジュンくんは、やっぱりすぐに私から離れようとする。咄嗟に胸ぐらを掴んで引き寄せ、そのままキスをした。
唇を割って、彼の犬歯をなぞる。深くキスをしたあと唇を離すと、ジュンくんからはもう笑顔が消えていた。
「せっかく逃げるチャンスをあげたのに、無駄にしちまうんすね。覚悟できてます?」
「ずぅっと前から出来てるもん。……早く食べて、ひとつ残らず、全部」
彼の首に腕を回してそう言うと、ジュンくんはニヒルに唇を吊り上げ笑った。今までの甘い微笑みじゃなくて、えものを前にしたけものの恍惚な笑みだ。
「じゃあ遠慮なく、いただきますよ」
「ふふ、召し上がれ」
ずっと食べてほしかったのに、ジュンくんがあんまり優しいからこんなに時間がかかってしまった。大好きなやさしいハイエナさん、次からはもうちょっと早く食べてほしいな。