甘い罠
※俺零さんです。
帰り道、ふらふら歩いていると公園のベンチに見慣れた人影を見つけた。見つかる前に少し髪を整え直して、咳払いをしてから公園に入ってベンチに座るなまえに声をかけた。
「よう。……ってまた何か食ってんのかよ」
「ん、零。またってなに、いっつも何か食べてるみたいな言い方しないでよ」
さりげなくなまえの隣に腰を下ろして、彼女の持っているものに興味があるかのように装って手に触れた。わざわざ触れてみなくてもわかっていたが、どうやらコンビニで売っている小さなクレープのようだ。
「なまえ……お前さぁ、先週会った時はここでおにぎり食いながら絶対痩せてやる〜とかなんとかほざいてなかった?」
「ほざくってなに!? ダイエットするもん! ほんと!」
「じゃあそのカロリーの塊みて〜なスイーツはなんなんだよ」
「こっ……これは……し、新発売って……期間限定って書いてたから! あっあと今日ちゃんと運動したしノーカンなの!」
なまえは言い訳がましくそう言って、またクレープに口をつけた。頬を膨らませている様子がハムスターのようで、ついその柔らかそうな頬を指でつついてしまった。別に俺としてはこのままでも、とは思いつつ、ふと思い立って彼女のわき腹をつついた。
「うわっなにやめて!!」
つつくかつつかないか、寸前のところで手を叩き落とされる。相当触られたくないらしい。とはいえ拒まれたのが少しショックで、つい意地の悪いことを言ってしまう。
「そんなに触られたくね〜ならしっかりダイエットしろよ」
「そ……っダイエットはするもん! ほんとに!」
ふーん、と興味なさげなふうを装い、バッ、とクレープを持ったなまえの手首を掴む。そのまま食べかけのクレープをひとくちで食べきってやった。なまえは驚きと悲しみと怒りの混じった顔で俺を見て口をぱくぱくさせている。
「明日からするじゃなくて今からしっかりダイエットしろよ、俺のためにな」
「……なんで零のためなの?」
「そりゃこのままだとお前が見せるどころか触らせてもくれなさそうだからに決まってんだろ」
「別に痩せても触らせたりしないもん」
ふい、とそっぽを向いて、なまえは小さくつぶやく。掴んだままの手首を引き寄せるが、頑なに顔を合わせようとしない。髪の隙間から見えた耳は真っ赤になっていたが。
「お〜い、何照れてんだ」
「もーうるさい! ダイエットはするけど別に零は関係ないから! もう帰る!」
「おー、送って行くぜ」
「いらない!」
クレープのゴミを押し付けられ、そのまま逃げるようになまえは公園を出て行った。ひらひらと手を振ると、なまえは一度だけ振り返って不満げな顔をし、また前を向いて小走りで帰ってしまった。口のなかにはまだ、甘ったるいクリームの味が残っていた。
帰り道、ふらふら歩いていると公園のベンチに見慣れた人影を見つけた。見つかる前に少し髪を整え直して、咳払いをしてから公園に入ってベンチに座るなまえに声をかけた。
「よう。……ってまた何か食ってんのかよ」
「ん、零。またってなに、いっつも何か食べてるみたいな言い方しないでよ」
さりげなくなまえの隣に腰を下ろして、彼女の持っているものに興味があるかのように装って手に触れた。わざわざ触れてみなくてもわかっていたが、どうやらコンビニで売っている小さなクレープのようだ。
「なまえ……お前さぁ、先週会った時はここでおにぎり食いながら絶対痩せてやる〜とかなんとかほざいてなかった?」
「ほざくってなに!? ダイエットするもん! ほんと!」
「じゃあそのカロリーの塊みて〜なスイーツはなんなんだよ」
「こっ……これは……し、新発売って……期間限定って書いてたから! あっあと今日ちゃんと運動したしノーカンなの!」
なまえは言い訳がましくそう言って、またクレープに口をつけた。頬を膨らませている様子がハムスターのようで、ついその柔らかそうな頬を指でつついてしまった。別に俺としてはこのままでも、とは思いつつ、ふと思い立って彼女のわき腹をつついた。
「うわっなにやめて!!」
つつくかつつかないか、寸前のところで手を叩き落とされる。相当触られたくないらしい。とはいえ拒まれたのが少しショックで、つい意地の悪いことを言ってしまう。
「そんなに触られたくね〜ならしっかりダイエットしろよ」
「そ……っダイエットはするもん! ほんとに!」
ふーん、と興味なさげなふうを装い、バッ、とクレープを持ったなまえの手首を掴む。そのまま食べかけのクレープをひとくちで食べきってやった。なまえは驚きと悲しみと怒りの混じった顔で俺を見て口をぱくぱくさせている。
「明日からするじゃなくて今からしっかりダイエットしろよ、俺のためにな」
「……なんで零のためなの?」
「そりゃこのままだとお前が見せるどころか触らせてもくれなさそうだからに決まってんだろ」
「別に痩せても触らせたりしないもん」
ふい、とそっぽを向いて、なまえは小さくつぶやく。掴んだままの手首を引き寄せるが、頑なに顔を合わせようとしない。髪の隙間から見えた耳は真っ赤になっていたが。
「お〜い、何照れてんだ」
「もーうるさい! ダイエットはするけど別に零は関係ないから! もう帰る!」
「おー、送って行くぜ」
「いらない!」
クレープのゴミを押し付けられ、そのまま逃げるようになまえは公園を出て行った。ひらひらと手を振ると、なまえは一度だけ振り返って不満げな顔をし、また前を向いて小走りで帰ってしまった。口のなかにはまだ、甘ったるいクリームの味が残っていた。