くちびる
彼女の、桜桃のようなくちびるが好きだ。そのくちびるが弧を描いて花が咲くような笑顔になることも、くちびるの間から発せられる俺の名前も、何もかもが愛おしい。ただキスをするだけでこんなにも満たされるのは、きっと後にも先にも彼女くらいのものだろう。
「……零、ちょっと」
「うん?」
真っ白なシーツに埋もれ、俺に押し倒されたままの彼女は少し不機嫌そうにくぐもった声を出した。軽く肩を押され、夢中で続けていたキスをやむなく中断する。
「流石にちょっとキスしすぎ……くちびる腫れちゃうよ」
「大丈夫じゃよ〜」
「んっ、もう……しつこい!」
「ぎゃん!」
ちょうど股の間に膝蹴りを喰らい、思わず間抜けな叫び声を上げて彼女の上に倒れ込む。彼女は少しやり過ぎただろうかと心配まじりに俺の顔を覗き込んだ。
「おぬし、……おぬしっ、それは反則じゃろ、つ、使えなくなったらどうするんじゃ……!?」
「ご、ごめん、しつこかったから」
「だいたいしつこいってなんじゃ、失礼な! ちょっとキスが好きなだけじゃろ! 失礼しちゃうぞい!」
「なんだ元気そうじゃん、良かった」
「うぐぐ」
内臓に響く痛みをなんとか堪え、かぷりと彼女の憎らしいくちびるに噛みつく。彼女は諦めたようにくすくす笑うと、俺の頬を両手で包んで自らくちびるを触れさせた。
「ねぇ、零」
「……なんじゃ」
「私、キスも好きだけど、零に名前呼んでもらうの好きなの。好きとか愛してるって、可愛いって言ってもらうのも好き。……今日はなんにも言ってくれないの?」
猫がじゃれつくような愛らしいおねだりをされては、もう無理やりキスで口を塞ぐことなどできるはずもなかった。彼女の柔らかな手のひらにくちびるを寄せ、少し悔しく思いながらも彼女のためにくちびるを開く。
「……愛しておるよ、なまえ」
「ふふ、私も」
彼女のくちびるは三日月のように弧を描く。ついまたキスをしてしまったけれど、これは彼女のくちびるがうつくしい月と同じように引力を持っていたからであって、俺のせいではない。……決して。
「……零、ちょっと」
「うん?」
真っ白なシーツに埋もれ、俺に押し倒されたままの彼女は少し不機嫌そうにくぐもった声を出した。軽く肩を押され、夢中で続けていたキスをやむなく中断する。
「流石にちょっとキスしすぎ……くちびる腫れちゃうよ」
「大丈夫じゃよ〜」
「んっ、もう……しつこい!」
「ぎゃん!」
ちょうど股の間に膝蹴りを喰らい、思わず間抜けな叫び声を上げて彼女の上に倒れ込む。彼女は少しやり過ぎただろうかと心配まじりに俺の顔を覗き込んだ。
「おぬし、……おぬしっ、それは反則じゃろ、つ、使えなくなったらどうするんじゃ……!?」
「ご、ごめん、しつこかったから」
「だいたいしつこいってなんじゃ、失礼な! ちょっとキスが好きなだけじゃろ! 失礼しちゃうぞい!」
「なんだ元気そうじゃん、良かった」
「うぐぐ」
内臓に響く痛みをなんとか堪え、かぷりと彼女の憎らしいくちびるに噛みつく。彼女は諦めたようにくすくす笑うと、俺の頬を両手で包んで自らくちびるを触れさせた。
「ねぇ、零」
「……なんじゃ」
「私、キスも好きだけど、零に名前呼んでもらうの好きなの。好きとか愛してるって、可愛いって言ってもらうのも好き。……今日はなんにも言ってくれないの?」
猫がじゃれつくような愛らしいおねだりをされては、もう無理やりキスで口を塞ぐことなどできるはずもなかった。彼女の柔らかな手のひらにくちびるを寄せ、少し悔しく思いながらも彼女のためにくちびるを開く。
「……愛しておるよ、なまえ」
「ふふ、私も」
彼女のくちびるは三日月のように弧を描く。ついまたキスをしてしまったけれど、これは彼女のくちびるがうつくしい月と同じように引力を持っていたからであって、俺のせいではない。……決して。