クリスマスといえば連想するもの。それはたとえばきらきら光るクリスマスツリーであったり、いつもより豪勢な夕食であったり、甘いホールケーキだったり、綺麗にラッピングされたプレゼントだったりする。どれもこれも幸福と結びつくものだ。

でもオレはそんなにクリスマスが好きじゃない。幼少期の苦い思い出と、どうしても紐付けてしまうからだ。

「クリスマスイヴには音楽特番、当日には生放送のバラエティに出演する予定でありますのでそのつもりでいてくださいね」
「はいはい、わかってますよ〜」

茨にみっちり予定を抑えられ、クリスマスも結局仕事、仕事、仕事。忙しさで思考を押し潰しているほうがずっと楽で有意義だから、まぁそれも別に構わないかと思っていた――去年までは。

 今年は恋人をほっぽって仕事に行かなければいけないから、何となくバツが悪い。本当は二人で過ごしたかったけど、まぁそうそう上手くはいかないものだ。彼女のほうも普通に仕事だと言っていたし、世のカップルも皆案外そんなものなのかもしれない。

 何とか仕事を終えると、時刻はもう十時に差し掛かろうとしていた。飲みの誘いも体良く断って一目散に彼女と同棲している家へ帰る。外から見ると、部屋の電気がついていた。

「ただいま、っす」
「おかえり〜! お疲れさま! メリークリスマス!」

小走りで帰宅すると、彼女が待ってましたと言わんばかりに奥から駆けつけてきた。珍しくミニスカサンタなんて俗っぽいコスプレをしてるもんだから、つい笑ってしまう。

「何してんすかアンタ、今日仕事だったんじゃ」
「早めに切り上げて帰ったの! なんてったって今日はクリスマスだからね〜」
「酔ってます?」
「シラフだよ、失礼な。ほらご飯食べてケーキも食べよ」

 彼女は上機嫌そうにニコニコ笑いながら、オレの手を取ってリビングへ引っ張る。その後ろ姿も、丈の短いスカートにニーハイという何ともフェチズムを感じさせられるもので、ついついゴクリと唾を飲んでしまう。

「じゃじゃーん! いっぱい働いてお疲れのジュンくんにはクリスマスプレゼントだよ」
「……っす」
「反応薄! 照れてる?」
「照れてねぇ」

テーブルに並んだ豪勢な夕食とケーキを見て、咄嗟に言葉を見失う。困惑とかではなく、ただ単に感動してしまったのだ。彼女はそれを知ってか知らずか楽しそうに笑いながら、オレの頭を撫でてきた。

「美味しいご飯食べてケーキも食べて、お風呂であったまってあったかいベッドで一緒に寝ようね」
「……ちょっと今メシより風呂よりアンタが欲しいんですけど」
「プレゼントは最後まで開けちゃダメでーす。おすわり! せっかく頑張って作ったご飯が冷めちゃうでしょ」
「おすわりて、犬じゃねーんすよオレは……」

 とは言いつつ彼女に言われるがまま渋々テーブルにつく。満足そうな彼女はオレの向かいに腰掛けて、心底幸せそうに笑った。

「はい、じゃあ改めて。メリークリスマス、ジュンくん」
「はいはい、メリークリスマス。……ありがとうございます」

こんなクリスマスが来年も再来年も続いてくれるなら、オレだって人並みに、いやそこいらの人間以上にクリスマスが愛しくなるのかもしれない。こうして毎年、彼女が目の前にいてくれるなら。