一段と冷える冬のころ、家でぬくぬくとこたつに籠っていると、不意にこたつの上に置いていた端末がぶるぶる震えた。相手もちゃんと確認せずに電話を取ると、予想だにしない相手の声が聞こえてきた。

「もしもし。今、家かや?」
「んぇ? うん、え、どしたの? もしかして来るの?」
「来るっていうかもう来ちゃった♡」
「なんでよ〜……私今日完全にオフの気分なんだけど」

文句を言うだけ言いつつも、突然の訪問にどうしても頬がゆるんでしまう。電話越しだからバレてないはずなのに、零は楽しげにくすくす笑った。

「うむ、すまんすまん。今日はデートのお誘いに来たんじゃよ。でも寒くて凍えそうなのでお家にあげてほしいのじゃ……」
「いいよもう来てるなら早く入りなよ」
「わ〜い♪」

 間もなくして、がちゃりと鍵を回す音がし、ドアが開けられた。振り返って彼を見ると、綺麗な黒髪にはちらほら雪がついていた。

「わ、外、雪降ってるの?」
「うむ、す〜っごく寒いぞい。あっためておくれ」
「うわマジでやめて近寄らないでっ、きゃあ! 冷た!」

彼はコートも脱がずに私の後ろに腰を下ろし、後ろから私のお腹に腕を回して長い脚をこたつに突っ込んだ。こたつと零の間に挟まれ、背中や彼の触れているところが冷えるのを感じる。

「冷たい……も〜……何しに来たのほんとに」
「あぁそうそう、デートのお誘いじゃよ。お家デートの」
「それ押しかけてきただけじゃん」
「だって会いたかったんじゃもん」

うるうるとあざとい上目遣いでこちらを見つめて、零は私の肩に顎を乗せる。

「全然可愛くないからね」
「むぅ……あんずの嬢ちゃんにはこれでいけるんじゃが」

 と、彼が少し身体を離した瞬間その鳩尾に向けて肘を入れてやる。痛がっている間にさっと立ち上がってこたつから出た。

「っな、なに、なにをするんじゃ……!?」
「…………そういうんじゃないって知ってるけど、なんでわざわざ他の女の子の名前出すの……、ばか」

我ながら子供っぽい拗ね方をして、そのまま少し冷たくなったベッドにもぐりこみ頭まで毛布を被る。私が毛布にくるまって出てこなくなると、零はもぞもぞとこたつから這い出てベッドに近付いた。

「すまぬ、そういうつもりはなかったんじゃけど」
「知ってる」
「うむ……、その、……なまえ。俺もベッド入っていいか?」
「だめ」

 少しだけ毛布から顔を出して、零をジトッと見つめる。零は困ったように笑うと、毛布越しに私の背中を撫でた。

「だめ?」
「…………ばか」

口ではそんなことを言いながら、毛布をあげてスペースをあける。すると零はやっとコートを脱いでもそもそとベッドに潜り込んできた。そしてそのまま有無を言わさず強く抱き締められる。

「……うん、こうしているのが一番落ち着くのう」
「ん……」
「迂闊な言い回しをしてしまってすまんかったのう、そういう問題では無いのは百も承知じゃけど、おぬしをこれ以上ないほど深く愛しておるよ」
「知ってる。……拗ねてごめんね」

 彼の胸板に埋めていた顔をあげると、彼は嬉しそうに笑って私のうえに覆い被さった。私が逃げられないように肩をベッドに押さえ付けて、そのままキスをしてくる。唇の冷たさは何度も繰り返しキスをするうちに雪が溶けるようになくなってしまった。

「……おぬしの肌は柔らかくてあったかいのう」
「零がかたくて冷たいんだよ」
「それはまぁ、そうかもしれぬ」

お互いまったく違う温度が、触れ合うたびに混ざりあって溶け合う。私はこうして零に触れてもらうのが何より心地好くて幸せで、大好きだった。

 きっと彼もそうなんだろう。寒い日にもこうして熱を分け与えられたらそれが何より幸せなことなのだと、多分彼も知っている。そんなのわざわざ問いたださなくたって、彼の触れるところから全部伝わってくるのだ。