また一年
ゴーン……と、テレビ越しに鐘が鳴った。私はこたつに入ったままみかんを剥く手を止めて、ふと後ろを振り返った。
「零〜、明けちゃったよ〜?」
数分前、すぐに戻ってくると言ってトイレに行ってしまった恋人に向けて、少し大きめに声をかけてみる。彼は間もなく水を流すと、ちょっと恥ずかしそうにいそいそとリビングに戻ってきた。
「あけましておめでとう。……なんだか間抜けな感じになっちゃったのう」
「あけましておめでとうございます。ふふ、いいんじゃない」
零は狭いのにわざわざ私の隣に入ってきて、甘えるように距離を詰めてきた。私が笑いながらみかんを剥きはじめると、零の手がそっと私の手を止めさせた。隣に顔を向ければ、ちゅ、と優しくキスをされる。
「……ふふ、新年初キスじゃ」
「はあ」
「初えっちもこのまましちゃおうかの」
「なんかおっさん臭いなぁ。ほら、みかん剥いてあげるから我慢して」
「おみかんじゃなくて我輩のを剥いてほしいんじゃけど」
「包茎じゃないのにどこをどう剥くのよ、ていうか正月からバカじゃないの」
くだらない会話を交わしながら、またみかんを剥く。ようやく剥けたみかんのひとつを彼に差し出すと、彼は素直に口を開けた。みかんをその口に食べさせて、自分もひとつ、みかんを食べる。
「甘いねぇ」
「……酸っぱいんじゃけど?」
「そう? 結構甘いよ」
「全然、んむ」
少し不貞腐れたように文句を言う彼の頬に手をあて、そのままくちびるにキスをする。深く、長く、キスをしてからくちびるをはなせば、零は不意打ちに驚いたのかほんのり顔を赤く染めた。
「ね。甘いでしょ」
「…………うむ、……やっぱり食べちゃってもいいかや?」
「ん? いいよ」
「ではありがたく……」
半分くらいはやってもいいか、とみかんを半分に割ってやると、零はみかんを丸ごと取り上げて机の端に置いた。そしてそのまま、床に押し倒される。
「まずは一発、大事にいただくのじゃ」
「まって食べていいって私じゃなくてみかんのほう、」
「みかんも後でた〜くさん剥いてやるからの」
「も〜……明日初詣行けなくなるじゃん……」
楽しげに笑う彼の顔を両手で挟んで頬をいじる。零は軽々と私の手を床に押しつけると、首すじに顔を近づけ皮膚に吸い付いた。
「おぬしの初めては全部ほしいんじゃよ、毎年毎年、いの一番に我輩におくれ」
零は愛おしげにその紅い瞳を細め、片手で私の頬を撫でる。同じような言葉を去年も聞いたような気がした。
「……そんなのお互いさまだけどね」
そっとその手に擦り寄って、くすりと微笑んでみせる。
「くく、そうじゃな。では相思相愛ということで、遠慮なくいただこうかの」
「手加減はしてよ、明日ほんとに何にもできなくなっちゃう」
「そうしたら零ちゃんが手取り足取りお世話したげる♪」
「もう、ほんとバカ」
口ではそんなことを言ってみるけれど、私は彼とふざけながらこうして触れ合うのが何より好きだった。年が明けても何かが変わることはない。去年に引き続き私たちは煩悩まみれだし、私は彼が大好きだし、彼も私を愛してくれる。それでも今年もまた一緒に年を越せたことが、そして今年もまた一年一緒にいられるということが、案外幸せに感じられたりするのだ。
「零〜、明けちゃったよ〜?」
数分前、すぐに戻ってくると言ってトイレに行ってしまった恋人に向けて、少し大きめに声をかけてみる。彼は間もなく水を流すと、ちょっと恥ずかしそうにいそいそとリビングに戻ってきた。
「あけましておめでとう。……なんだか間抜けな感じになっちゃったのう」
「あけましておめでとうございます。ふふ、いいんじゃない」
零は狭いのにわざわざ私の隣に入ってきて、甘えるように距離を詰めてきた。私が笑いながらみかんを剥きはじめると、零の手がそっと私の手を止めさせた。隣に顔を向ければ、ちゅ、と優しくキスをされる。
「……ふふ、新年初キスじゃ」
「はあ」
「初えっちもこのまましちゃおうかの」
「なんかおっさん臭いなぁ。ほら、みかん剥いてあげるから我慢して」
「おみかんじゃなくて我輩のを剥いてほしいんじゃけど」
「包茎じゃないのにどこをどう剥くのよ、ていうか正月からバカじゃないの」
くだらない会話を交わしながら、またみかんを剥く。ようやく剥けたみかんのひとつを彼に差し出すと、彼は素直に口を開けた。みかんをその口に食べさせて、自分もひとつ、みかんを食べる。
「甘いねぇ」
「……酸っぱいんじゃけど?」
「そう? 結構甘いよ」
「全然、んむ」
少し不貞腐れたように文句を言う彼の頬に手をあて、そのままくちびるにキスをする。深く、長く、キスをしてからくちびるをはなせば、零は不意打ちに驚いたのかほんのり顔を赤く染めた。
「ね。甘いでしょ」
「…………うむ、……やっぱり食べちゃってもいいかや?」
「ん? いいよ」
「ではありがたく……」
半分くらいはやってもいいか、とみかんを半分に割ってやると、零はみかんを丸ごと取り上げて机の端に置いた。そしてそのまま、床に押し倒される。
「まずは一発、大事にいただくのじゃ」
「まって食べていいって私じゃなくてみかんのほう、」
「みかんも後でた〜くさん剥いてやるからの」
「も〜……明日初詣行けなくなるじゃん……」
楽しげに笑う彼の顔を両手で挟んで頬をいじる。零は軽々と私の手を床に押しつけると、首すじに顔を近づけ皮膚に吸い付いた。
「おぬしの初めては全部ほしいんじゃよ、毎年毎年、いの一番に我輩におくれ」
零は愛おしげにその紅い瞳を細め、片手で私の頬を撫でる。同じような言葉を去年も聞いたような気がした。
「……そんなのお互いさまだけどね」
そっとその手に擦り寄って、くすりと微笑んでみせる。
「くく、そうじゃな。では相思相愛ということで、遠慮なくいただこうかの」
「手加減はしてよ、明日ほんとに何にもできなくなっちゃう」
「そうしたら零ちゃんが手取り足取りお世話したげる♪」
「もう、ほんとバカ」
口ではそんなことを言ってみるけれど、私は彼とふざけながらこうして触れ合うのが何より好きだった。年が明けても何かが変わることはない。去年に引き続き私たちは煩悩まみれだし、私は彼が大好きだし、彼も私を愛してくれる。それでも今年もまた一緒に年を越せたことが、そして今年もまた一年一緒にいられるということが、案外幸せに感じられたりするのだ。