コトコト、コトコト、静かに沸騰するミルクをスプーンでかき混ぜる。ほどよい温度になったら、砂糖をひとさじ入れて、香りづけにバニラエッセンスを一、二滴垂らす。

そして出来上がった甘いホットミルクをお揃いのマグカップにそそいだら、ソファでひざを抱えている可愛い恋人のもとへ持っていく。

「お待たせ〜、ホットミルクだよ。どうぞ」
「ん……ありがと」

ひざに顔をうずめていた彼女は、ゆっくりと顔を上げて両手でマグカップを受け取った。その目はいつもより赤くて、小さく絞り出された声も少し鼻声になっていた。

 彼女の隣に腰を下ろせば、彼女は恐る恐る肩に頭を預けてくれる。彼女に安心してほしくて、俺は左手でマグカップを持ち、右手で彼女の肩をそっと抱き寄せた。薄い肩を撫でながらホットミルクに口をつけて彼女の言葉を待つ。

「……ごめんね、心配かけちゃって。薫くんも忙しいのに」
「気にしないでよ、俺がしたくてしてるだけだから。……というか俺も今までつらいときはなまえちゃんにいっつも助けてもらってたし、お返しくらいさせてよ」
「うん……ふふ、ありがと」
「どういたしまして」

今日は何か嫌なことがあったみたいだけど、実際に何があったのかは聞いていない。俺が帰るとひとりで泣いていたものだから、ひとまずお風呂に入れて髪を乾かして、お世話のかぎりを尽くして今に至る。

 無理に聞こうとは思えなかった。ただ、彼女の心を重くしている何かから、少しでも彼女の気を逸らせればいいと思った。

「薫くん、」
「なぁに」
「……今日、一緒に寝てもいい?」
「もちろん。いいよ」

髪を撫でながら微笑みかけると、彼女はふにゃりと嬉しそうに笑ってくれた。その濡れた目もとにくちびるを寄せて頭を撫で、このまま柔らかいよるが明けなければ良いのになぁ、とぼんやり考えた。朝になってまた彼女が俺の知らないところで傷つくのはやっぱり嫌だった。

 それでも子どもみたいなことは言っていられないから、せめて彼女の傷を癒せるような存在でいたい。やさしく包み込むようなホットミルクみたいに、砂糖ひとさじぶんの甘さで。