ふわふわのスポンジ、なめらかなクリーム、まっしろの上にちょこんと座っている赤い宝石。フォークを刺してひと口食べてみれば、ぶわっと舌から頭にまで甘さが広がる。

「おいしい」
私がぽろりと独り言のように呟くと、目の前にいた嵐ちゃんはすかさず目を輝かせ身を乗り出した。
「でしょ!? この前サークルで来たんだけどすっごく美味しくて、なまえちゃんと来たいって思ってたのよ」
「サークルってあの、プリキュアみたいな」
「プリティ5よ!」
「そうそれ」

 談笑しながら甘さを噛み締める。ちらりと向かいに腰掛ける嵐ちゃんを見ると、まるで美しく生けられた花のように背筋をしゃんとして、綺麗な所作でケーキにフォークを刺しこんでいた。

伏せ気味の長い睫毛や陶器のような肌、それから自然光を反射する綺麗な髪。そのすべてが磨き抜かれた宝石のように見えた。

「ケーキは……見た目も可愛くて綺麗で、中身も美味しくて……なんか嵐ちゃんに似てるね」
「あら嬉しい。なんだか詩人ね?」
「嵐ちゃんが綺麗だから、普通に綺麗だって言うだけじゃ足りないんだよ」
「フフ、ありがと」

嵐ちゃんは笑った。春の陽射しのように、雪どけのように、ふわふわのスポンジみたいに。

 何を見ても何をしても何を食べても、目の前の美しいひとを思い出してしまう。世界中に存在する綺麗なものを見るたび感じるたび、無意識にこの人のことを想起してしまう。

「……ねぇ、嵐ちゃん」
「なぁに?」
「……大好き」
「アタシも大好きよ。もう、今日はどうしちゃったの?」

ケーキを口に運ぶ。甘さがまた意識を支配する。二人きりで過ごすこの時間はとても幸せだ。口にしたお互いの好意が本当は同じものではないと気づいていても、そんなことは忘れられるくらい、甘くて幸せだ。

今はただ、そういう曖昧な甘さだけでいい。