朝、部屋に射し込む光で目が覚めた。寝返りをうってから時間を確認しようと薄目を開けると、まっさきにご機嫌な笑顔が飛び込んできた。

「うゎ、わ、ったる」
「おはようございます!」
「うるさ……なに、え? いつから、なんで、今何時?」
「私は日付が変わってすぐの頃から貴女に会いに、そして現在の時刻は午前七時十二分です」

手ぐしで髪を整え、目を擦りながら、どこか浮ついた様子の渉を見る。彼はまるで飼い主を前にした大型犬のようにうきうきとした笑みを浮かべていた。なんとなくその頭を片手で撫でてやると、彼は心地良さげに目を閉じる。

「私に会いにって、そんな夜中から?」
「貴女まさか心当たりがないのですか!?」
「いや、あるけど、でも……言ってほしいかなって」
「ンなるほど! ではお望みどおりお伝えしましょう、私は今日という特別な日に、誰よりも先に! 貴女をお祝いしたくてやって来たのですよ。さあ、お手をどうぞ!」

 渉はバッと立ち上がると、その綺麗な手を私に差し伸べてきた。くすりと笑ってその手を取れば、思いのほか強い力で引き寄せられ、バランスを崩し彼の胸板にすがりついたまま立たされた。まるでダンスを踊るようにリードされ、冷たいフローリングの床を歩く。

「今日はおとぎ話のプリンセスのようにおもてなしさせていただきますよ! 美しいドレスにかぼちゃの馬車、きらきら輝くガラスの靴! 貴女が望むものなら何でもご用意してさしあげます……☆」

くるくると綺麗に回されながら、当人の私より楽しげな渉を見上げる。幸せそうな渉を見ているとなんだかこちらまで嬉しくなってしまって、ついつい頬が弛んでしまう。笑いながらなんとか彼の手を握り直し、向き合って一旦息をついた。

「ありがとう、でも渉は魔法使いじゃないでしょ。あぁいや、そうかもしれないけど、私にとっては魔法使いっていうより王子さまかなって」
「……フフ、そうでしたね。ええ、私は貴女だけの王子さまですよ」
「うん、だから今日は魔法はいいよ。一日ずっと一緒にいて、それだけでいいから」
「おやおや、随分控えめなお姫様ですねぇ」
「そうかな、じゅうぶん欲張りじゃない? こんないい男を独り占めしちゃうんだから」

 私がなんとなく照れくさくなって笑うと、渉もあわせ鏡のように笑った。そしてまた上機嫌にくるくると踊りだすのだ。バラの花びらやら鳩やらを狭いワンルームに撒き散らしながら。

やっぱり私の王子さまは、王子さまというよりは日々樹渉って感じだ。だからこそ愛しいと、今日という日に会えたのが何より嬉しいと、そう思えるのだろう。