春のひかりのなかで花を紡いだ。青い芝生のうえに寝そべって、隣にいる君と目を合わせた。その頭に被せた花冠をそっと指先で撫でると、彼女はくすぐったそうに目を細めて微笑んだ。

僕は「来れて良かったね」と囁き笑顔を返す。そうしたら、「また来ようね」と彼女もそっと囁いた。

まるで白昼夢のような優しくあたたかな思い出だ。僕が何度も何度も引っ張り出して感傷にふけっていたせいで、擦り切れてくたびれてしまったのかもしれない。



「英智くん」

 頼りなく震えた声で目を覚ました。脳を突き刺すような光に顔を顰めながら、なんとか瞼をこじ開ける。ぼんやり霞んだ白い天井から目を逸らすと、泣き腫らした赤い目の彼女が僕の顔を覗き込んでいた。

「……やあ、おはよう……」
「…………おはよ、」

頬にぬるい涙がぽたぽたと、二粒落ちてくる。彼女はすぐに手で顔を覆って距離を取ろうとしたけれど、咄嗟にその手首を掴んだ。

「ごめん」

 しっかりと記憶があるわけではなかった。それでも自分が体調を崩して倒れたのであろうことくらいはわかる。それで彼女がどれほど血の気の引くような思いをしたのかも、おおよそ検討がつく。しかし彼女はぼたぼた涙を流して嗚咽を漏らしながら、ふるふると首を横に振った。

「だい、大丈夫、……私、私も、っごめんなさ、い」
「どうして、どうして君が謝るんだい」
「だって私、が泣いてたら、英智くん、申し訳ないって思う、でしょ」
「……僕が、僕のせいで君に心配をかけたんだから、僕が申し訳ないと思うのは当然だよ」

起き上がって彼女を抱き締めるほどの力は、僕にはなかった。それでも辛うじて掴んだ手を離さないように、なんとか指を動かし彼女の細い指に絡める。彼女の手はあたたかい。きっと彼女からすれば僕の手は冷たいのだろう。

「君に辛い思いをさせて、ごめん」
「……だいじょうぶ、だよ、ほんとに」

 彼女はそんな拙い嘘をついて、くしゃりと不器用な笑顔を繕った。僕は彼女の柔くあたたかな手をしっかりと握りしめたまま、彼女に倣って不器用に笑ってみせた。

 次の春にもまた彼女に花冠を作ってあげたい。夢想するだけならこんなにも簡単なのに、どうしてこうも春が遠く感じるのだろう。病室の窓から見える枯木には蕾さえついていなかった。