朝、目を覚ますと、昨晩一緒に眠りに落ちたはずの彼女の姿がなかった。靄がかった意識のままでベッドの下に脱ぎ捨てていた下着とTシャツを着、ぺたぺたと素足でリビングへ向かう。リビングには明かりが点いていたけれど、彼女が起きてそこに居るとは思えないほど静かだった。

 ほんの少しの不安に表情を曇らせつつリビングのドアを開けると、カーテンの隙間から外を見つめる彼女の後ろ姿を見つけた。

「……?」

何してるの、と声をかけようとしたけれど、あまりの真剣さに思わず俺までつられて息をひそめてしまう。さすがに足音で気がついたらしく、彼女は俺を振り返ると無邪気に笑った。そして小声で囁く。

「おはよ。見て」
「なになに?」

彼女に合わせて小さな声で、そうっと窓際に腰を下ろす。カーテンの隙間から外を覗き込むと、ベランダの柵に止まって囀っている小鳥が見えた。

「ふふ、可愛いでしょ」
「ほんとだね。なんの鳥だろ? スズメとかじゃないよね」
「なんだろう……チュンチュン言ってるから、うぐいすとかでもないと思うんだけど……でもこんなに近くで見ることってあんまりないから、もうずっとこうやって見てたの」

そう言ってはにかみ笑った彼女を見て、無性に胸の奥がむず痒くなる。多分、「愛しい」とか「好き」って言葉が一番近しいと思う。

 朝の光りが窓越しに部屋へと差し込む。その柔らかな光りが、彼女の髪を透かしてきらきらと瞬いている。俺が彼女の横顔に見入っていると、不意に彼女がこちらを向いた。

「見て、増えた」
「え?」

見れば、彼女が見つめていた小鳥の隣にもう一羽、同じ種類の可愛らしい小鳥が止まっていた。二羽の小鳥たちはお互いに毛繕いをし、しばらくすると連れ立って飛んで行ってしまった。

「あ……行っちゃった。仲良しみたいだったね、恋人だったのかな」
「ん〜、どうだろう、わかんないけど……そうだったらいいね」

 さっきの小鳥たちがしていたみたいに、彼女の細い肩を抱いて身を寄せ合う。時間がゆるやかに流れていくのを感じる。いつまでもこんなふうにのんびりぼんやり同じ時間を過ごしていられたらどんなに良いだろう――なんて陳腐なことを考えて、彼女のつむじにそっとくちびるを寄せた。