おてて
横並びのカップルシートに通され、お互いちょっとどぎまぎしながら隣同士腰掛ける。昼下がりのカフェには微かにお洒落な音楽が流れていた。注文を店員さんに伝えたあと、二人で食事がくるのを待っていた、そのときだった。
ちょん、と指先が一瞬、触れる。隣に座る彼の顔を見上げると、彼はほんの少しぎこちない表情を浮かべたまま視線を逸らした。
「あの……これは、提案というか相談、なんだけど」
「ああ」
「もう、付き合い初めて一ヶ月くらい経つじゃないですか。だからその……そろそろ、手とか繋いでみたいなって、思ったりして……」
緊張しつつそう話して、彼の反応を窺う。アドニスくんは深刻そうな表情で考え込んだあと、申し訳なさげな声を出した。
「なまえが望むことは叶えてやりたいと思う、が……その、手を握り合って、傷つけてしまわないか不安なんだ」
「……力いっぱいぎゅってされたら痛いかも、だけど……大丈夫だよ」
ほら、と言って彼の大きな手にそっと自分の手を重ねた。恐る恐る、指を絡ませて手を繋ぐ。ただ触れているだけなのにどうしようもなく心臓が早くなって、全身にどくどくと血が巡っていくのを感じた。下唇を噛みしめてから息を吐いて、なんとか平静を装う。
けれどふと顔を上げると、ほんのり顔を赤らめた彼と目が合った。その途端、ばくんと心臓が強く脈打って無くなってしまったような心地がした。手は離せないまま、恥ずかしくて視線を逸らす。
「アドニスくんの手、おっきいね」
「……なまえの手は小さいな。柔らかくて、簡単に壊れてしまいそうで、やっぱり少し怖い。痛くないか?」
「うん、全然。……私はこうやって触ってると、すごい緊張はするんだけど、それ以上になんだか嬉しくってにやけちゃうかも」
素直にそう告白して、誤魔化さずに笑ってみせた。するとアドニスくんはやわらかく微笑んで、ほんの少しだけ握った手に力を込めた。熱い体温が肌から伝わってくる。
「俺も、少し怖いがとても心地良い。力加減はまだ不安だが、早く慣れるようこれからはなるべく手を繋いでいても良いだろうか」
「うん! ぜひ、繋ぎたいです」
やや食い気味に頷くと、アドニスくんはまた嬉しそうに笑ってくれた。浮かれるような心地で繋いだ手を見つめると、ちょうど食事が運ばれてくる。すごく美味しかったような気がするのだけれど、浮かれすぎてあまり味を覚えていない。
そして食事を終えて、カフェを出ると、私たちはぎこちなく手を握りあって歩き出したのだった。
ちょん、と指先が一瞬、触れる。隣に座る彼の顔を見上げると、彼はほんの少しぎこちない表情を浮かべたまま視線を逸らした。
「あの……これは、提案というか相談、なんだけど」
「ああ」
「もう、付き合い初めて一ヶ月くらい経つじゃないですか。だからその……そろそろ、手とか繋いでみたいなって、思ったりして……」
緊張しつつそう話して、彼の反応を窺う。アドニスくんは深刻そうな表情で考え込んだあと、申し訳なさげな声を出した。
「なまえが望むことは叶えてやりたいと思う、が……その、手を握り合って、傷つけてしまわないか不安なんだ」
「……力いっぱいぎゅってされたら痛いかも、だけど……大丈夫だよ」
ほら、と言って彼の大きな手にそっと自分の手を重ねた。恐る恐る、指を絡ませて手を繋ぐ。ただ触れているだけなのにどうしようもなく心臓が早くなって、全身にどくどくと血が巡っていくのを感じた。下唇を噛みしめてから息を吐いて、なんとか平静を装う。
けれどふと顔を上げると、ほんのり顔を赤らめた彼と目が合った。その途端、ばくんと心臓が強く脈打って無くなってしまったような心地がした。手は離せないまま、恥ずかしくて視線を逸らす。
「アドニスくんの手、おっきいね」
「……なまえの手は小さいな。柔らかくて、簡単に壊れてしまいそうで、やっぱり少し怖い。痛くないか?」
「うん、全然。……私はこうやって触ってると、すごい緊張はするんだけど、それ以上になんだか嬉しくってにやけちゃうかも」
素直にそう告白して、誤魔化さずに笑ってみせた。するとアドニスくんはやわらかく微笑んで、ほんの少しだけ握った手に力を込めた。熱い体温が肌から伝わってくる。
「俺も、少し怖いがとても心地良い。力加減はまだ不安だが、早く慣れるようこれからはなるべく手を繋いでいても良いだろうか」
「うん! ぜひ、繋ぎたいです」
やや食い気味に頷くと、アドニスくんはまた嬉しそうに笑ってくれた。浮かれるような心地で繋いだ手を見つめると、ちょうど食事が運ばれてくる。すごく美味しかったような気がするのだけれど、浮かれすぎてあまり味を覚えていない。
そして食事を終えて、カフェを出ると、私たちはぎこちなく手を握りあって歩き出したのだった。