画面にうつる綺麗な恋人の姿を見て、なるほどこれはアリだなと一人で腕を組み頷いた。エクステをつけて長くなった髪に、骨格を上手く隠しつつもナチュラルに女性らしさを演出するコーディネート、そして何より彼の嫌そうな顔。どれをとっても可愛くて可愛くて仕方なかった。文句をつけるとしたら、彼の新たな一面が全国のファンたちに届けられてしまったということくらいだろうか。

「いやあ、遅くなってしまい申し訳ございません! ただいま帰りましっ……何見てるんです」

相変わらずの調子でやって来た茨は、自分の映っているテレビを見るなりリモコンを奪い取って電源を消してしまった。明日は運良くオフを被せることができたから、今日は仕事が終わったらそのまま私の家へ来るよう約束してあったのだ。

「あっちょっと! まだ途中だったのに」
「なん……っであんたが観てるんですかね。言ってなかったはずですけど、わざわざ録画してたんですか?」
「うん、乱さんから教えてもらってたから。お腹すいてる? ご飯用意するね」
「ああ、ハイ……」

 仕方なくソファから立ち上がり、キッチンに立つ。そしてスーツのジャケットを脱いだ茨に対してちょっとからかうように声をかけた。

「ご飯、生姜焼きにしようと思うんだけどいい? いばにゃん♡」
「……」
「あと今日はプリン買ってきたんだ〜、いばにゃんはプリン好きだもんね」
「はっ倒しますよ」

茨は怒りと恥を隠しきれないといった表情でズンズンと距離を詰めてきた。私が耐えられずにずっとクスクス笑っていると、いよいよムカついたのかこちらへ手を伸ばし、全力でわき腹をくすぐってきた。

「あっちょ! ちょっとまっ、あはははっ!! やめっやめてやめて、ほんと危ないからっ! あーもーっ死んじゃう!」
「ええ、ええ死ぬまで続けてやりますよ、煽ったからにはやり返される覚悟もあるんでしょうしねぇ」
「ごめっごめんってば、あははっ!」

もう降参、とばかりに彼の肩を叩くと、彼はようやく勝ち誇った笑みで手を止めた。ぜえはあと息を整えようとするけれど、やっぱりなんだか可笑しくて笑いが止まらない。

可笑しいというか、普段は策略家だの毒蛇だのと隙を見せないようにしている茨が、こんなにも感情を素直に表に出して悔しがったり嫌がったりしているというのがたまらなく愛おしかったのだ。

「ね、今度女装してえっちしようよ」
「死んでも嫌です」
「けち」
「どうとでも」

 ぷいとそっけなく突っぱねる茨へ、今度は私から手を伸ばし、くすぐりはせずにハグをしてみる。かわいいねとか好きだよとかそういうことを言うと引き剥がされかねないので、ジッと黙ったままぎゅうっと彼の細い腰を抱き締めた。すると茨はぎこちなく、いかにも渋々といった手つきで私の頭を撫でてくれたのだった。もう、本当にかわいいひと。