愛してるから
ベッドのうえでぼんやりしていた。段々熱くなってくる体をそのままに、手足を投げ出して、ベッドに残った彼の香りをずっと嗅いでいた。すると外からコツコツと革靴の音がして、間もなく鍵が開かれた。
「帰ったぞい〜……って、うん? あれ?」
零はすぐに異変に気づき、大股で寝室にやってきた。おそるおそるドアが開けられ、すぐにぶわっと彼の匂いが鼻腔へ届く。
「零、」
「ヒート、来週とか言っておらんかった? まぁ良いんじゃけど……よしよし、寂しかったのう」
彼がドアを閉めてベッドへ近づくと、私はすぐに布団をひるがえして彼に抱きついた。体温の低い彼の肌は冷たくて気持ちがいい。けれどそれ以上に、彼のアルファ特有の香りが胸をいっぱいにしてしまう感覚が心地よかった。心地良さは急速に性的欲求へと形を変えてゆく。
「零、っれい、好き……大好き、愛してる、大好きなの」
「うむ、うむ、知っておるよ。安心せい。ともかくおくすりを先に飲まねばのう」
「やだっ、嫌、零の赤ちゃんほしい、っお願いちょうだい、零の、」
「ステイステイ、んも〜すぐ暴走しちゃうんじゃから……赤ん坊を作ると決めるのは発情期以外のとき、そう決めたじゃろ。ほれ、ちょいと大人しくしていておくれ」
私が飼い主に久々に会えた犬みたいに興奮して彼にすがりついていると、彼は飄々とそれを躱し、自分のベルトで私の両手を縛ってベッドへ転がした。そしてそのまま私を置いて、抑制剤と水を取りに行ってしまう。
「いやっ、行かないで! 零、零、いや、置いて行かないで! やだ、なんで……」
たった数分にも満たないような僅かな時間でも、彼と離れたくない。ずっと肌に触れていてほしい。彼から発せられる匂いを常に肺に入れておきたい。それなのに彼はちっともそれを叶えてくれない。
悲しくなってぐすぐす泣いていると、(当然のことなのだけれど)零はすぐに戻ってきた。慣れた手つきで私に薬と水を飲ませ、ぐずる赤ん坊をあやすように頭や頬を撫でたり額にキスをしたりしてくる。
「よ〜しよしよし、おくすり飲めて良い子じゃのう」
「…………零、嫌い……」
「なんでじゃ!」
「全然お願い叶えてくれない、キスもしてくれない、セックスもしてくれない、嫌い……」
それはすべて彼の深い愛情ゆえなのだが、発情期でかなり愚鈍になってしまった私にはなんにもわからなかった。わざと拗ねたような声を出すと、零は困ったように笑って私の頬を撫でた。
「勘弁しておくれ、万が一にも傷つけたくないんじゃよ」
「……でも、じゃあ、えっちは結局してくれないの?」
「う〜む…………今はやめておこうかの。ほれ、もうお休み。寝て起きたら多少は楽になっておるじゃろ」
「じゃあうたってて、お願い」
頬を撫でる手を両手で握る。すると零はベッドサイドに腰を下ろして、静かに鼻歌を歌ってくれた。優しい低音が耳に馴染む。多分、抑制剤と一緒に睡眠薬も飲まされたのだろう。私は先ほどまでの激情も忘れ、あっという間に眠りに落ちてしまった。
「帰ったぞい〜……って、うん? あれ?」
零はすぐに異変に気づき、大股で寝室にやってきた。おそるおそるドアが開けられ、すぐにぶわっと彼の匂いが鼻腔へ届く。
「零、」
「ヒート、来週とか言っておらんかった? まぁ良いんじゃけど……よしよし、寂しかったのう」
彼がドアを閉めてベッドへ近づくと、私はすぐに布団をひるがえして彼に抱きついた。体温の低い彼の肌は冷たくて気持ちがいい。けれどそれ以上に、彼のアルファ特有の香りが胸をいっぱいにしてしまう感覚が心地よかった。心地良さは急速に性的欲求へと形を変えてゆく。
「零、っれい、好き……大好き、愛してる、大好きなの」
「うむ、うむ、知っておるよ。安心せい。ともかくおくすりを先に飲まねばのう」
「やだっ、嫌、零の赤ちゃんほしい、っお願いちょうだい、零の、」
「ステイステイ、んも〜すぐ暴走しちゃうんじゃから……赤ん坊を作ると決めるのは発情期以外のとき、そう決めたじゃろ。ほれ、ちょいと大人しくしていておくれ」
私が飼い主に久々に会えた犬みたいに興奮して彼にすがりついていると、彼は飄々とそれを躱し、自分のベルトで私の両手を縛ってベッドへ転がした。そしてそのまま私を置いて、抑制剤と水を取りに行ってしまう。
「いやっ、行かないで! 零、零、いや、置いて行かないで! やだ、なんで……」
たった数分にも満たないような僅かな時間でも、彼と離れたくない。ずっと肌に触れていてほしい。彼から発せられる匂いを常に肺に入れておきたい。それなのに彼はちっともそれを叶えてくれない。
悲しくなってぐすぐす泣いていると、(当然のことなのだけれど)零はすぐに戻ってきた。慣れた手つきで私に薬と水を飲ませ、ぐずる赤ん坊をあやすように頭や頬を撫でたり額にキスをしたりしてくる。
「よ〜しよしよし、おくすり飲めて良い子じゃのう」
「…………零、嫌い……」
「なんでじゃ!」
「全然お願い叶えてくれない、キスもしてくれない、セックスもしてくれない、嫌い……」
それはすべて彼の深い愛情ゆえなのだが、発情期でかなり愚鈍になってしまった私にはなんにもわからなかった。わざと拗ねたような声を出すと、零は困ったように笑って私の頬を撫でた。
「勘弁しておくれ、万が一にも傷つけたくないんじゃよ」
「……でも、じゃあ、えっちは結局してくれないの?」
「う〜む…………今はやめておこうかの。ほれ、もうお休み。寝て起きたら多少は楽になっておるじゃろ」
「じゃあうたってて、お願い」
頬を撫でる手を両手で握る。すると零はベッドサイドに腰を下ろして、静かに鼻歌を歌ってくれた。優しい低音が耳に馴染む。多分、抑制剤と一緒に睡眠薬も飲まされたのだろう。私は先ほどまでの激情も忘れ、あっという間に眠りに落ちてしまった。