──もうずっと、報われない恋をしている。

「……おはよう、真白くん」

彼女が優しく俺にほほ笑みかける。真冬の朝、登校時間は毎日同じ時間だ。毎朝彼女に会えるように。

「なまえさん。おはようございます」
「あれ、元気ないね。今日寒いもんね、体調には気をつけるんだよ」
「はい……」
「おはようございます! あなたの日々樹渉です☆」

喧しい声がガンガンと頭に響く。後ろを見ると、朝からハイテンションな部長が、薔薇の花を撒き散らしてニコニコ笑っていた。

「渉。おはよう、今日も元気だね」
「私はいつでも元気ですよん! おや? 友也くんは今日はしょんぼりしてますねぇ、なまえに虐められました?」
「朝からあんたがうるさいから……」
「これは失礼いたしました! ですが朝だからこそ快活に! 元気に! 今日という素晴らしい一日の幕開けを彩ろうではありませんか!」

いつも通り、普通じゃない部長はそうやっておどけてみせる。なまえさんは楽しそうにくすくす笑っていて、俺はどんどん気分が沈んでいく。

部長は、変態だし何を考えてるのかいまいちわからないけど、それでも凄い人だ。何もかも平凡で普通な俺と違ってきらきらしてて、才能に溢れてる。

なまえさんは部長のことが好きだ。……というか、二人はこっそり付き合ってるらしい。知ってるのはごく少数だけど、言われればすごく納得出来る。

部長がどれだけ凄いかなんて俺もよく知ってるし、なまえさんがどれだけ魅力的かなんて俺が一番よく知ってるから。

「真白くん、また部活でね。……渉に言い難いことでも、何かあるなら相談してね?」

優しく声をかけられて、なんとか笑顔を取り繕う。貴女のことが好きですなんて、そんなことを言えるほどの勇気はない。

「大丈夫ですよ、ちょっと寝不足なだけです」
「そう? ならいいけど……あ、待って渉! じゃあね真白くん」

先へ歩いて行く部長を追って、彼女は俺に挨拶をしてから去って行ってしまった。

きっと、冬が明けて卒業の季節になってもきっと、俺は何も言えないままなんだろう。先輩に叶わない恋をするなんて、どこまでもありきたりで普通すぎて、本当に嫌になるな。

なんて心の中で毒を吐いても、行動に移そうとも思えない。自分の情けなさと平凡さに呆れながら、真っ白な息を冷たく吐き出した。