急展開
初めは、くすんだ林檎みたいな色の髪が綺麗だと思った。それから、初夏の快晴の空みたいな瞳に吸い込まれるような魅力を感じた。その喉から出てくる言葉は一見なんだか乱暴で乱雑なノイズのように見えたけれど、何度か会話を交わすうちにいつしか言葉に隠されたわかりにくい彼の心に愛しさを感じるようになった。
端的に言えば私は彼に恋をしていた。けれど彼はそれを知ってか知らずか、飄々と掴めない態度を取るばかりだった。
今日のデートだってそうだ。ふたりきりで出かける約束をした日の夜は、期待と嬉しさで胸が苦しくてろくに眠れやしなかった。けれどこうしていざ当日になると、彼は思わせぶりなことを言うくせに指一本私に触れすらしない。自分の左手と彼の右手の間には見えない壁があるみたいだった。
私が行きたいと話していたカフェに入って、向かい合って座る。正面に座る彼は私と目が合うと余裕そうに目を細めて笑う。私は目が合うだけでこんなにもいっぱいいっぱいになってしまうのに、彼はどうせそんなことも知らないのだ。
「どうしたよ、今日は随分お利口さんじゃねェか。腹減ってンのか?」
「正直、お腹全然空いてない」
「おいおいそりゃねェだろ、このデカいパンケーキが食いてェっつってたのに」
「食べたいけど、でも……緊張してるんだもん、そんなに喉とおらないよ」
声出すことすらなんだかぎこちなかった。私が大袈裟にも抑えられない指の震えをそのままにそう言うと、燐音くんは茶化すように笑ってみせた。
「きゃはは、燐音くんがカッコよすぎて緊張してンのか? そりゃ悪かったなァ、お詫びにキスでもしてやろうか?」
どうせ、「何言ってんの」と私が拒むのを想定して彼はこんなことを言っているのだ。それがどうしようもなくムカついて、つい、テーブルに手をついて立ち上がり彼の胸ぐらを掴んでしまった。そのまま彼の抵抗もゆるさず唇に噛みつく。唇を離すと、彼はその水色の目を見開きポカンとしていた。
「私は本気だから、そういう茶化し方するなら遠慮なく乗るからね」
「…………お、おう、いや、今キス……」
「初めてだった? ごめんね」
みるみるうちに真っ赤になっていく彼の顔を見て、ふんと勝ち誇ったように笑ってやる。すると今度は彼がキュッと真剣な表情になって私の手を握ってきた。
「別に茶化したかったワケじゃねェが、お前が本気なら俺も責任は取る。結婚しよう」
「……は!?」
突然の求婚に頭が真っ白になる。しかし動揺した私を彼が笑うことはなく、その瞳は真剣さを失うことなく私を見つめていた。
こんなに綺麗な水色に見つめられて正気でいられる人間なんているのだろうか。気がつけば私はか細く「はい」と頷いてしまっていた。
端的に言えば私は彼に恋をしていた。けれど彼はそれを知ってか知らずか、飄々と掴めない態度を取るばかりだった。
今日のデートだってそうだ。ふたりきりで出かける約束をした日の夜は、期待と嬉しさで胸が苦しくてろくに眠れやしなかった。けれどこうしていざ当日になると、彼は思わせぶりなことを言うくせに指一本私に触れすらしない。自分の左手と彼の右手の間には見えない壁があるみたいだった。
私が行きたいと話していたカフェに入って、向かい合って座る。正面に座る彼は私と目が合うと余裕そうに目を細めて笑う。私は目が合うだけでこんなにもいっぱいいっぱいになってしまうのに、彼はどうせそんなことも知らないのだ。
「どうしたよ、今日は随分お利口さんじゃねェか。腹減ってンのか?」
「正直、お腹全然空いてない」
「おいおいそりゃねェだろ、このデカいパンケーキが食いてェっつってたのに」
「食べたいけど、でも……緊張してるんだもん、そんなに喉とおらないよ」
声出すことすらなんだかぎこちなかった。私が大袈裟にも抑えられない指の震えをそのままにそう言うと、燐音くんは茶化すように笑ってみせた。
「きゃはは、燐音くんがカッコよすぎて緊張してンのか? そりゃ悪かったなァ、お詫びにキスでもしてやろうか?」
どうせ、「何言ってんの」と私が拒むのを想定して彼はこんなことを言っているのだ。それがどうしようもなくムカついて、つい、テーブルに手をついて立ち上がり彼の胸ぐらを掴んでしまった。そのまま彼の抵抗もゆるさず唇に噛みつく。唇を離すと、彼はその水色の目を見開きポカンとしていた。
「私は本気だから、そういう茶化し方するなら遠慮なく乗るからね」
「…………お、おう、いや、今キス……」
「初めてだった? ごめんね」
みるみるうちに真っ赤になっていく彼の顔を見て、ふんと勝ち誇ったように笑ってやる。すると今度は彼がキュッと真剣な表情になって私の手を握ってきた。
「別に茶化したかったワケじゃねェが、お前が本気なら俺も責任は取る。結婚しよう」
「……は!?」
突然の求婚に頭が真っ白になる。しかし動揺した私を彼が笑うことはなく、その瞳は真剣さを失うことなく私を見つめていた。
こんなに綺麗な水色に見つめられて正気でいられる人間なんているのだろうか。気がつけば私はか細く「はい」と頷いてしまっていた。