まだ言わないで
⚠️夢主がプロデュース科の生徒です(転校生でもそうでなくとも読めます)
「やぁ、偶然だね」
学院のガーデンテラスという明らかに偶然ではないロケーションにもかかわらず、天祥院先輩は爽やかに笑って挨拶をしてきた。卒業生のくせに最近何かと学院へやってきて、そのたび私のところへ遊びに来るのだ。正直接し方がわからないから困っている。
私は食べかけていた昼食のサンドイッチを一旦置いて、一応にこやかに笑って挨拶を返した。
「天祥院先輩、こんにちは。学院に何かご用事でしたか?」
「うん。少しね。それと君の顔を見に来たんだ」
「そんな暇があるなら仕事を片付けて、早めに帰宅してください。健康第一ですよ、先輩の場合は本当に」
「つれないなぁ。ここのところ残業は減ったほうだよ?」
彼は当然のように私の向かいに腰掛け、しかし何も食べるようすはなく、胡散臭い微笑で私を見つめた。若干の居心地の悪さを感じつつ、今しか昼食のタイミングがないのでサンドイッチは食べてしまうことにした。
「先輩、お昼ご飯は?」
「さっき済ませたよ」
「……じゃあ用事のほうがまだなんです?」
「いいや、それもさっき済ませてきたんだ」
じゃあ早く帰れよ……とは言えず、無言でサンドイッチを頬張る。食事姿をまじまじと見られるのはなんだか落ち着かない。私は一度お茶を飲んで喉を潤し、口を開いた。
「私に何か用でしたら、流石に昼食よりそっちを優先しますけど」
「いいや、本当に顔を見に来ただけなんだ。気にしないで食事を続けてほしいな」
「そうですか……不愉快なのでやめてほしいんですけど、聞き入れてもらえますか?」
「そうだね、残念だけど聞いてあげられないな」
彼は何故か楽しそうに笑いながら頬杖をついた。私は諦めて、さっさとサンドイッチを完食してしまおうとまたひとくちパンに齧りつく。無言で食べていると、不意に先輩のほうから会話を切り出してきた。
「君の食事姿は、なんだかハムスターを見ているみたいで癒されるんだ。ほっぺにたくさん詰め込んで一生懸命咀嚼しているところが可愛くてね」
「…………なら本物のハムスターを飼えばいいでしょう」
「生き物を飼うのはちょっと。飼ったって君の代わりにはなりそうにないしね」
「はあ、そうですか……。それじゃ、可愛い姫宮くんとお食事されたほうがずっと癒されるんじゃないですか?」
「桃李ももちろん可愛いけれど……根本的なところで君と桃李は別だからね」
どこか噛み合わない会話を続けた末に、ようやくサンドイッチを完食する。最後にお茶を飲んで軽く溜め息をつくと、先輩はふと私の口もとに手を伸ばしてきた。そして少女漫画のテンプレみたいに私の口についていたらしいパンくずを取り、躊躇なくそれを自分の口に迎え入れた。
「そろそろ、わからないふりはやめてほしいな。多忙の隙を縫ってわざわざ君に会いに来る理由なんてひとつしかないだろう?」
「……わかりませんっ、失礼します!」
「おや」
勢いよく立ち上がって一礼し、荷物を持って足早にその場を後にした。どうせ授業後ESビルへ行ったら会わざるをえないのだが、みるみる熱くなっていく顔をどうしても見られたくなくて逃げてしまう。パタパタと熱い頬を手で扇ぎながら、次会ったときどんな顔をすればいいのだろうかとひとり頭を抱えた。
「やぁ、偶然だね」
学院のガーデンテラスという明らかに偶然ではないロケーションにもかかわらず、天祥院先輩は爽やかに笑って挨拶をしてきた。卒業生のくせに最近何かと学院へやってきて、そのたび私のところへ遊びに来るのだ。正直接し方がわからないから困っている。
私は食べかけていた昼食のサンドイッチを一旦置いて、一応にこやかに笑って挨拶を返した。
「天祥院先輩、こんにちは。学院に何かご用事でしたか?」
「うん。少しね。それと君の顔を見に来たんだ」
「そんな暇があるなら仕事を片付けて、早めに帰宅してください。健康第一ですよ、先輩の場合は本当に」
「つれないなぁ。ここのところ残業は減ったほうだよ?」
彼は当然のように私の向かいに腰掛け、しかし何も食べるようすはなく、胡散臭い微笑で私を見つめた。若干の居心地の悪さを感じつつ、今しか昼食のタイミングがないのでサンドイッチは食べてしまうことにした。
「先輩、お昼ご飯は?」
「さっき済ませたよ」
「……じゃあ用事のほうがまだなんです?」
「いいや、それもさっき済ませてきたんだ」
じゃあ早く帰れよ……とは言えず、無言でサンドイッチを頬張る。食事姿をまじまじと見られるのはなんだか落ち着かない。私は一度お茶を飲んで喉を潤し、口を開いた。
「私に何か用でしたら、流石に昼食よりそっちを優先しますけど」
「いいや、本当に顔を見に来ただけなんだ。気にしないで食事を続けてほしいな」
「そうですか……不愉快なのでやめてほしいんですけど、聞き入れてもらえますか?」
「そうだね、残念だけど聞いてあげられないな」
彼は何故か楽しそうに笑いながら頬杖をついた。私は諦めて、さっさとサンドイッチを完食してしまおうとまたひとくちパンに齧りつく。無言で食べていると、不意に先輩のほうから会話を切り出してきた。
「君の食事姿は、なんだかハムスターを見ているみたいで癒されるんだ。ほっぺにたくさん詰め込んで一生懸命咀嚼しているところが可愛くてね」
「…………なら本物のハムスターを飼えばいいでしょう」
「生き物を飼うのはちょっと。飼ったって君の代わりにはなりそうにないしね」
「はあ、そうですか……。それじゃ、可愛い姫宮くんとお食事されたほうがずっと癒されるんじゃないですか?」
「桃李ももちろん可愛いけれど……根本的なところで君と桃李は別だからね」
どこか噛み合わない会話を続けた末に、ようやくサンドイッチを完食する。最後にお茶を飲んで軽く溜め息をつくと、先輩はふと私の口もとに手を伸ばしてきた。そして少女漫画のテンプレみたいに私の口についていたらしいパンくずを取り、躊躇なくそれを自分の口に迎え入れた。
「そろそろ、わからないふりはやめてほしいな。多忙の隙を縫ってわざわざ君に会いに来る理由なんてひとつしかないだろう?」
「……わかりませんっ、失礼します!」
「おや」
勢いよく立ち上がって一礼し、荷物を持って足早にその場を後にした。どうせ授業後ESビルへ行ったら会わざるをえないのだが、みるみる熱くなっていく顔をどうしても見られたくなくて逃げてしまう。パタパタと熱い頬を手で扇ぎながら、次会ったときどんな顔をすればいいのだろうかとひとり頭を抱えた。