※やや特殊設定(夢主が玲明学園の試験的プロデュース科生徒)



「俺が昔、革命児と呼ばれていたことを知っておられますか?」

あるとき、巽さんは私を呼びつけて、そんな話を切り出した。茨さんや日和さん、ジュンさんから色々聞いてはいたから、なんとなくは知っている。そのせいでコズプロからスタプロへ移籍することになったらしいことも。

「はい。なんとなく、ですけど」
「そうですか。俺は、玲明の特待生制度を批判して、革命を起こそうとしたのです。結局皆を平等に救うことは出来なくて、自分の身さえも滅ぼしてしまいました。なまえさん、貴女がここのところ、玲明でなんと呼ばれているか、知っていますよね」

静かに、穏やかに、彼は私に問いかける。少し言葉に詰まりながら、こくんと頷き小さく問いに答えた。

「……女神だ、って」
「そう。……貴女は玲明学園で、初めてのプロデュース科生徒として、かつての俺と同じようなことをしている。俺もお恥ずかしながら、神だなんて誤解されていました」

ある非特待生の子をプロデュースし、それが成功したことをきっかけに、私は玲明学園で女神なんて大層なあだ名をつけられることになった。

私は手を差し伸べたのではなく、背中を押しただけなのに。自分の実力や行い以上の評価をされると、なんだか落ち着かない。そんな大仰なことはしていないのに、私はただの無力な人間なのに。

巽さんは、私の手を取り、じっと私の瞳を覗き込む。吸い込まれるような澄んだ瞳に、戸惑いを浮かべた私がうつっていた。

「なまえさん、俺は貴女が心配なんです。貴女の行いや試みを止めるつもりはありません、ただ…………かつての俺と同じように、傷つけ傷つけられ、貴女が立ち上がれなくなってしまったらと思うと、気が気でないのです」

彼の手が、そっと私の頬に触れる。暫く入院していた彼の脚。これからも付き纏うであろう苦しみを、彼はどんな思いで抱えているのだろう。

「貴女はただの人間です。支えが必要なら、いつでも俺を頼ってください。時には逃げることも重要です。……何より、どうか、俺の最愛の人を傷つけないでいただけませんか?」
「巽さん……」

私の頬に触れる彼の手に、自分の手を重ねる。静かにまつ毛を伏せて、微かに口もとを緩ませ、笑って見せた。

「はい。私は女神ではないけど、一人でもないから。無理はしません、約束します。巽さんも、無理はしないって約束してください」
「……そうですな。俺も、神に誓って約束を守りましょう」
「ふふ、ありがとうございます。……大好き、」
「……えぇ、俺も愛しています」

磁石が引き合うように、触れるだけのキスをする。誰にどんなレッテルを貼られても、巽さんの前で私はただのひとりの人間でいられる。巽さんも、私の前ではただひとりの人間だ。彼も同じように思っていてくれたら、きっと、これ以上幸せなことはないだろう。