可愛いひと。ひとことで表すのならもちろん誰でも彼のことをそう言うだろう、と私は思う。それを本人に言うと複雑な顔で「いや、みんなひとことで表すなら『普通』って言うと思うぞ」と苦笑された。

 いったい彼のどこが普通だと言うのだろう? こんなにそばにいても、彼を普通だなんてちっとも思えない。私はそのやりとり以降、何度も彼の言葉を思い出しては深く考え込むようになった。

 たとえば、ぴょこんと跳ねた頭頂部の髪の毛のひとふさだとか、まんまるで綺麗な目とか、笑ったときのきらめきとか。外見にかんしてだって全然普通なんかじゃないと私は思う。だって街中で友也くんを見かけるときは必ずぴかぴか光ってるように見えるのだ。まるで引力のような抗えなさで、彼は私の視線を引き付けてしまう。

 それに内面についてだって同じことだ。さり気ない気遣いや面倒みの良さは、なかなか普通に身につくものではない。話しているだけでこんなにも幸せになるのに、彼の中身が普通だなんてありえない。

「だからね、友也くんて全然普通じゃないって思うの」

私がつらつらと彼の普通じゃないところを伝えると、彼はなぜだか夕日みたいに真っ赤な顔を隠すように頭を抱えた。そして視線は逸らしたまま、か細く震える声で返答する。

「う、うん……ありがとな。でもそれって俺が普通じゃないっていうか、その……自意識過剰かもだけど、なまえにとって特別、ってことなんじゃないか……?」
「……?」

すぐには彼の言わんとすることがわからなくて、私は甘いアイスココアを飲みながら首を傾げた。

 普通だと評する皆がおかしいのではなくて、私から見て彼が特別な存在だから……好きだから特別に見えているだけ? ようやくそう理解して、図らずもみるみるうちに顔に熱が集まってしまう。ということはつまり、私は今、滔々と彼に愛の告白をしていたようなものなのではないか。

「いや、ごめん流石に違うよな? あはは〜……」
「ちがうくないと思う……」
「へっ?」
「……友也くんのこと好きだから目が離せないんだと思う……」

顔の熱は治まらないまま、友也くんを見つめる。心臓が痛いほど脈打っていた。友也くんはびっくりした顔で固まっていたけど、ハッと顔を強ばらせるとテーブルに置いていた私の手を握った。

「おっ俺も……! そ、その、俺もすき……だよ、特別だって言ってくれて嬉しい……なまえが言ってくれるのが一番嬉しいもん」
「うそ。……ほんと?」
「こんなときに嘘なんかつくわけないだろ」
「それもそっか……」

 ぎゅっと重ねられた手のひらは微かに汗で滲んでいた。その手のひらの熱が私の熱と交わってますます熱くなっていく。カラン、とグラスの中の氷が音を立てた。