我輩のまけ!
「好きな人ほし〜、素敵な恋したいよ〜」
と彼女が馬鹿みたいにのたまうので、俺はちょっと期待を込めて質問を返した。
「どんな男がタイプなんじゃ」
「ん〜身長が180くらいあって〜」
「ほうほう」
「顔が良くて〜、カッコイイ系で〜」
俺だな……と自信満々に頷きながら、楽しそうに条件を並べる彼女を見つめる。
「程よく筋肉もあって〜……あっあとなんでもいいけど音楽やっててほしいな〜」
「ほーん」
「え〜あとなんだろ、あっ性欲ちゃんとあるひと!」
ニコニコ笑いながら言い切った彼女に、こちらからもニッコリと笑顔を返す。
「それは……見事にマッチする男がおるぞい」
「えっだれ!?」
「我輩♡」
「…………」
彼女は訝しむように俺を見つめ、それからう〜んと唸った。どこに不満要素があるというのか、さっきの条件はもはや俺について話していると言われても納得するほどだというのに。
「零はな〜……私零で勃起しないかも」
「そりゃ生えておらんからのう」
「そういう話じゃないじゃん! 大事なのはこう、心のちんちんが勃起するかどうかなんだよ!」
「女の子がちんちんとか言わないの!」
アハハ、と彼女は楽しそうにけたけた笑う。彼女はちょっと、いやかなり下品で、しかしそれが生々しくなくむしろ無邪気な子どものようなので、俺はついその見た目とのちぐはぐさにハマってしまった。可愛い顔から出てくる男子小学生みたいなノリがいっそ可愛いと思っていた。もちろん、好きだからそういうところすら愛しく思うというだけかもしれない。
彼女はグラスを揺らしてカラカラと中の氷を回す。
「ま〜要するに零は友達でしょって話」
「我輩とはえっちできぬということかえ」
「でき……ないかなぁ」
「およよ、しょんぼりなのじゃ……」
「だって真剣に見つめあったらまけちゃうし、好きだから……人間として? それで恋なんかしたらもう取り返しつかないよ〜、私めちゃくちゃめんどくさい女だからね」
ぐだぐだと、いまいちハッキリしない言葉を羅列され思わず顔を上げた。彼女は酔っているのか赤い顔で頬杖をつきそっぽを向いたままぼんやりしている。
「……え、今のはなんか際どくなかったかえ、そういう言い方されると……一度好きになってしまったら引き返せんから怖いというふうに聞こえるぞい」
「んー……まぁそうなんじゃない? なんにせよ、零とは仲良しな友達だから。変に関係変えたりして話せなくなんのはやだ」
「いや待て、俺とセックスできないって話ならまだわかる。でもそうじゃね〜なら納得しね〜ぞ」
「おおう、俺零ちゃんだ。どしたのいきなり……怒った?」
彼女はちょっと茶化すように笑ってみせる。俺はなんだか妙に悔しくなって、手もとのウイスキーを一気に煽り、タンッと勢いよくテーブルにグラスを置いた。かあっと熱くなる喉を衝動のまま震わせる。
「も〜我輩でいいじゃろ! なんでじゃなんでじゃっさっきの条件ぜ〜んぶ満たしておるのに! 何がダメなのじゃ!?」
「ん、ん、ちょっとまって、えっ零は付き合いたいの?」
「さっきからそう言っとるじゃろ!」
「いや言ってないよ」
「言っ…………てないかも」
シーン、とふたりの間に沈黙が流れる。そして黙って目を合わせ、しばらくしてから耐えきれないというふうに彼女が吹き出した。
「んふっ、あはは! 馬鹿じゃないの、……言ってないよそんなの聞いてない、言わなきゃわかんないでしょ。ただでさえおモテになられるんだからさ〜」
「むぅ…………それで? こんな奇跡的にタイプな男が付き合いたいと言ってるのに対して、おぬしはどうなんじゃ」
少し顔をしかめたまま、じっと彼女を見つめてみる。彼女はグラスの中身を口に含み、一度視線を逸らしてから、こちらへ弾けるような笑顔を向けた。
「じゃあありがたく拾ってもらおうかな」
「……っうむ!」
俺が思わず子どもみたいに元気よく返事をすると、彼女は可笑しそうにまた笑った。テーブルの上に置かれた手にそっと自分の手を重ねる。
「ちゃんと大事にするぞい、あと明日になって覚えとらんとかは無しじゃからな」
「さすがに記憶飛ばないよ〜、一生覚えとくね、こんないい男に口説いてもらったんだし」
彼女は、真剣に見つめあったらまけちゃう、だなんて言っていたけれど確かにそのとおりだ。こうして甘く蕩けた瞳を見つめていると、すっかり心のうちまで支配されてしまったような気分になる。惚れたほうが負けと言うならこの場合完全敗北に違いない。
と彼女が馬鹿みたいにのたまうので、俺はちょっと期待を込めて質問を返した。
「どんな男がタイプなんじゃ」
「ん〜身長が180くらいあって〜」
「ほうほう」
「顔が良くて〜、カッコイイ系で〜」
俺だな……と自信満々に頷きながら、楽しそうに条件を並べる彼女を見つめる。
「程よく筋肉もあって〜……あっあとなんでもいいけど音楽やっててほしいな〜」
「ほーん」
「え〜あとなんだろ、あっ性欲ちゃんとあるひと!」
ニコニコ笑いながら言い切った彼女に、こちらからもニッコリと笑顔を返す。
「それは……見事にマッチする男がおるぞい」
「えっだれ!?」
「我輩♡」
「…………」
彼女は訝しむように俺を見つめ、それからう〜んと唸った。どこに不満要素があるというのか、さっきの条件はもはや俺について話していると言われても納得するほどだというのに。
「零はな〜……私零で勃起しないかも」
「そりゃ生えておらんからのう」
「そういう話じゃないじゃん! 大事なのはこう、心のちんちんが勃起するかどうかなんだよ!」
「女の子がちんちんとか言わないの!」
アハハ、と彼女は楽しそうにけたけた笑う。彼女はちょっと、いやかなり下品で、しかしそれが生々しくなくむしろ無邪気な子どものようなので、俺はついその見た目とのちぐはぐさにハマってしまった。可愛い顔から出てくる男子小学生みたいなノリがいっそ可愛いと思っていた。もちろん、好きだからそういうところすら愛しく思うというだけかもしれない。
彼女はグラスを揺らしてカラカラと中の氷を回す。
「ま〜要するに零は友達でしょって話」
「我輩とはえっちできぬということかえ」
「でき……ないかなぁ」
「およよ、しょんぼりなのじゃ……」
「だって真剣に見つめあったらまけちゃうし、好きだから……人間として? それで恋なんかしたらもう取り返しつかないよ〜、私めちゃくちゃめんどくさい女だからね」
ぐだぐだと、いまいちハッキリしない言葉を羅列され思わず顔を上げた。彼女は酔っているのか赤い顔で頬杖をつきそっぽを向いたままぼんやりしている。
「……え、今のはなんか際どくなかったかえ、そういう言い方されると……一度好きになってしまったら引き返せんから怖いというふうに聞こえるぞい」
「んー……まぁそうなんじゃない? なんにせよ、零とは仲良しな友達だから。変に関係変えたりして話せなくなんのはやだ」
「いや待て、俺とセックスできないって話ならまだわかる。でもそうじゃね〜なら納得しね〜ぞ」
「おおう、俺零ちゃんだ。どしたのいきなり……怒った?」
彼女はちょっと茶化すように笑ってみせる。俺はなんだか妙に悔しくなって、手もとのウイスキーを一気に煽り、タンッと勢いよくテーブルにグラスを置いた。かあっと熱くなる喉を衝動のまま震わせる。
「も〜我輩でいいじゃろ! なんでじゃなんでじゃっさっきの条件ぜ〜んぶ満たしておるのに! 何がダメなのじゃ!?」
「ん、ん、ちょっとまって、えっ零は付き合いたいの?」
「さっきからそう言っとるじゃろ!」
「いや言ってないよ」
「言っ…………てないかも」
シーン、とふたりの間に沈黙が流れる。そして黙って目を合わせ、しばらくしてから耐えきれないというふうに彼女が吹き出した。
「んふっ、あはは! 馬鹿じゃないの、……言ってないよそんなの聞いてない、言わなきゃわかんないでしょ。ただでさえおモテになられるんだからさ〜」
「むぅ…………それで? こんな奇跡的にタイプな男が付き合いたいと言ってるのに対して、おぬしはどうなんじゃ」
少し顔をしかめたまま、じっと彼女を見つめてみる。彼女はグラスの中身を口に含み、一度視線を逸らしてから、こちらへ弾けるような笑顔を向けた。
「じゃあありがたく拾ってもらおうかな」
「……っうむ!」
俺が思わず子どもみたいに元気よく返事をすると、彼女は可笑しそうにまた笑った。テーブルの上に置かれた手にそっと自分の手を重ねる。
「ちゃんと大事にするぞい、あと明日になって覚えとらんとかは無しじゃからな」
「さすがに記憶飛ばないよ〜、一生覚えとくね、こんないい男に口説いてもらったんだし」
彼女は、真剣に見つめあったらまけちゃう、だなんて言っていたけれど確かにそのとおりだ。こうして甘く蕩けた瞳を見つめていると、すっかり心のうちまで支配されてしまったような気分になる。惚れたほうが負けと言うならこの場合完全敗北に違いない。