「寝室は分けさせてください」

「断る。分けたところで毎晩おぬしのところへ行くが?」
 そろそろ同棲しようと俺の方から持ちかけたところ、彼女が嬉しそうに二つ返事で了承してくれたので部屋の間取りなどを相談していたときのことだった。基本的にはこだわりのない彼女が、寝室だけは頑なに別にしたがった。

「来るのはいいよ。でも別じゃないと嫌」
「なんでじゃ……」

「もしお互い疲れてたり機嫌が悪かったりしたとき、一人になれる空間って大事でしょ? それがないのはちょっと不安だし嫌なの」
「むぅ……じゃあ棺桶も置いておこう、一人になりたいときは棺桶に入れば良い」

俺としてはどうしても、広めのベッドで彼女と一緒に毎日寝たかった。そしてなんだかんだ言いくるめて毎晩そういうこともしたい。

これだけは譲りたくないと彼女を見つめると、彼女は頬杖をついてそっぽを向いたままごにょごにょと口を動かした。

「……零にずっと隠してたことがあるんだけど」
「なんじゃいきなり」

「もうこれで引かれるなら同棲なんかできないと思うんだけど。…………私実はめちゃくちゃ性欲強くて……ほぼ毎晩のようにひとりでシてるの、今。だからもし寝室を一緒にして、毎晩零と同じベッドだからって我慢しなきゃいけないのは嫌」
「……えっ」

 真っ赤になってそんなことを言う彼女に対し、思わず間抜けな声を出してしまう。彼女は引かれたと思ったのか、ちょっと泣きそうになりながら俺を見た。誤解を生む前に俺の方から口を開く。

「我輩は毎晩おぬしとえっちしたくて寝室を一緒にしたいのじゃ……! 一緒に住むのなら毎晩ふたりですればよかろう!? ちゃんと満足させるぞい! というか……これまでのセックスもおぬしに遠慮して優しくしておったので今後は遠慮なしでさせてもらうのじゃ」
「ん、えっあぁ……そ、そう? ……なんか気をつかってフォローしようとしてるとかじゃない? もしそうなら怒るよ」

「んなわけないじゃろ、本気じゃ、我輩のおちんちんを信じてほしいのじゃ」
「最悪なセリフすぎる……でもわかった、じゃあ寝室は一緒にしよう」

彼女はまだ赤い顔のまま、そう言ってはにかみ笑った。

 ──結局同棲後は毎日のようにすることになったが、残念ながら先に根を上げたのは彼女のほうだった。とはいえ本気で嫌がっているふうにも見えないので、「またまた〜」と聞き流しながら毎日事に及んでいる。