*四肢欠損
*ヤンデレ気味


 窓の外から差し込む月明かりを、ぼうっと見つめていた。真っ暗な部屋の中、眠ることだけがどうしてもできなくて、月を見ているしかなかったのだ。

 「まだ起きてたのかあ」

間延びした声が私に投げかけられる。月から視線を外して、部屋の入口に立つ彼を見た。彼は仕方なさそうに笑って私のベッドに近付く。

 「夜更かしは良くないなあ?」
「……ごめんなさい、眠れなくて」
「今夜は満月だからなあ……眠れないならママが子守唄を歌ってあげよう」

シーツを私の肩まで掛け直し、彼はベッドの縁に腰掛ける。母親がそうするように私の頭を撫でた。

 大きくてあたたかい手は、ちっとも母親らしくないはずなのに、不思議と安堵させられる。
 瞼を閉じて彼の穏やかな歌声を聞いていると、段々、意識が蝋燭のように溶けていく。

 「…………ママ、」

私が意識半分にそれを口にすると、彼は歌声をとめて、私の額を撫でる。

「どうした?」

私はぴくりとも身体を動かさず、ただ、微かに目を細めて彼を見た。

 「わたし、どうしていきてるの?」

白いシーツの中に埋もれた私の身体。太ももの先には、何もない。二の腕も途中まででぷつりと途切れている。手脚のない、一人では何も出来ない私の不完全で不格好で歪な身体。

 斑さんの大きな手は、私の腕の先にそっと触れる。

「俺に愛されるため以外に、何か必要かあ?」

優しく傷口を包む彼の手は、私から全てもぎ取ってしまった手だ。

「……ううん」

素直にそう答えて、身体を捩らせる。また頬を撫でてくれた手に頬を擦り寄せれば、彼は嬉しそうに微笑んだ。

 手脚を切り落とされてベッドに繋がれても、こんなふうに貴方に愛されたいと思う。歪だとはわかっている。けれどもう、私には貴方しかいないのだ。

……他の誰でもない貴方がそうしたのだから。