「……『おなか』には、『うみ』があるんです」

彼は、不意にそんなことを言った。彼の男の子らしい大きな手は、静かに私の下腹部に当てられている。

「海?」
「はい。おかあさんの『おなか』には、『うみ』があります」

ゆったりとした声が、穏やかに私の鼓膜を揺らす。寝そべったままの私のお腹に、彼はそっと唇を寄せた。

「私のお腹にも、あるの?」
「いいえ。まだ、ありません。……おかあさんではないので」

彼は身体を起こすと、私の頭のすぐ横に手をつく。ギシ、とベッドが軋む音がした。視界いっぱいに、海の色が広がる。

「……ぼくが、おかあさんに、してもいいですか?」

柔らかな囁きが、甘く唇を奪う。脚を絡めて、指先を絡めて、彼は強請るように私を見つめた。

 絡められた手をぎゅっと握り返す。頬を優しくくすぐる彼の蒼い髪に微笑みかけ、空いた手で彼を引き寄せキスをした。

「いいよ。私のお腹に、海、つくって」
「うふふ、『うれしい』です」

何度もキスをして、彼はまた私のお腹に触れた。今はまだ、海のないからっぽのお腹だ。