とくん、とくん、と心臓が心地好く高鳴っている。長い睫毛を伏せた彼女を前に、おれは呼吸の仕方もぎこちなく、距離を詰める。ふに、と唇が触れ合ったのはほんの一瞬だけだった。

「藍良くん、」

睫毛が触れそうなほど近い距離のまま、彼女は柔らかな唇で俺を呼ぶ。目を開けると、澄んだ黒い瞳と目が合った。宇宙みたいに深い黒色には、おれの間抜けな顔がうつりこんでいる。

彼女は幸せそうに目を細めて、おれの頬に手を添えた。きらきら、宇宙の瞳に星が瞬いているみたいだ。

「……もう一回、してもいい?」

おれの頬を包む手に自分の手を重ねると、彼女はやっぱり、世界で一番幸せそうに微笑んでくれた。それから小さく頷くと、長い睫毛が静かに伏せられる。

 柔らかい唇にもう一度キスをすると、なんだか泣きそうなほど幸せに思えて、つい衝動的に彼女を抱き寄せてしまった。彼女はくすくす笑って、おれの背中に手を回す。

「おれ、今すっごくカッコ悪い気がするよォ……」

キスひとつでこんなに緊張して、キスひとつでこんなに舞い上がってしまっている。もっと男らしく、慣れたふうに、カッコよく出来たらいいのに。こうして抱き締めているだけでも、幸せで幸せで仕方ない。

「ふふ、カッコよくなくても、好きだよ」

それでも、きみがそうやっておれを優しく受け容れるから、おれもこんなふうにありのまま甘えてしまうのだ。




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