心配なんです
小説家というものは、皆、狂人だと思う。
少なくとも私は、愛しい彼女を見ていてそう思わざるをえない。
「……まだ起きていたのですか」
夜中、リビングでまだ執筆を続けていた彼女に声をかけた。彼女は手を止めて、私を見上げる。白い肌にはクマがはっきり残っていた。
「うん、止まらなくて」
彼女は愉しげにそう微笑む。彼女はきっと、自分の身を削って、それを小説にしている。だから執筆する間、目に見えて彼女はやつれていくのだ。
椅子を引いて彼女の隣に腰掛ける。彼女の横髪を撫でてやると、彼女は心地良さげに目を閉じて私の手に擦り寄った。
「心配になりますよ、さすがに」
「……ふふ、でも止まらないんだもん」
「気持ちはわかりますよ」
でも、と言いかけて口を噤む。彼女の紡ぐ言葉は、私も好きだ。時折それを朗読させてもらうこともある。
そういう時間を私は愛しているけれど、でも、目の前で彼女が自殺まがいなことをしているとやはり不安になってしまうものだ。
「少し、寝ませんか。怖い夢を見てしまったので、一人では寝られないのです」
私がそうおどけると、彼女はこちらをジッと見てから、くすりと笑った。
「ふふ、仕方ないなあ。……今日だけだよ」
いつか、こんなふうに貴女を止められなくなる日が来るのだろうか。貴女の人生はきっと執筆とともにあるけれど、そんな貴女を愛しているのだけれど、それでも貴女の人生に少しでも私を入れてほしいのだ。
言葉にはできないけれど、少しでも私の愛が伝わればいい。寝室のベッドで、細い身体を強く抱き締めながらそう願った。
少なくとも私は、愛しい彼女を見ていてそう思わざるをえない。
「……まだ起きていたのですか」
夜中、リビングでまだ執筆を続けていた彼女に声をかけた。彼女は手を止めて、私を見上げる。白い肌にはクマがはっきり残っていた。
「うん、止まらなくて」
彼女は愉しげにそう微笑む。彼女はきっと、自分の身を削って、それを小説にしている。だから執筆する間、目に見えて彼女はやつれていくのだ。
椅子を引いて彼女の隣に腰掛ける。彼女の横髪を撫でてやると、彼女は心地良さげに目を閉じて私の手に擦り寄った。
「心配になりますよ、さすがに」
「……ふふ、でも止まらないんだもん」
「気持ちはわかりますよ」
でも、と言いかけて口を噤む。彼女の紡ぐ言葉は、私も好きだ。時折それを朗読させてもらうこともある。
そういう時間を私は愛しているけれど、でも、目の前で彼女が自殺まがいなことをしているとやはり不安になってしまうものだ。
「少し、寝ませんか。怖い夢を見てしまったので、一人では寝られないのです」
私がそうおどけると、彼女はこちらをジッと見てから、くすりと笑った。
「ふふ、仕方ないなあ。……今日だけだよ」
いつか、こんなふうに貴女を止められなくなる日が来るのだろうか。貴女の人生はきっと執筆とともにあるけれど、そんな貴女を愛しているのだけれど、それでも貴女の人生に少しでも私を入れてほしいのだ。
言葉にはできないけれど、少しでも私の愛が伝わればいい。寝室のベッドで、細い身体を強く抱き締めながらそう願った。