器用不器用
「おや、珍しいですね」
ESの食堂で見かけたなまえさんは、髪をポニーテールにして一人でオムライスを食べていた。はむはむと急いで頬にオムライスを詰め込むさまは、なんとなくハムスターを彷彿とさせる。
彼女はよくこの食堂を利用しているらしい。珍しいのはここにいることではなく、その髪型だ。普段はサイドに流しているのだけれど、今日は高めのポニーテール。しかも、サイドに編み込みまでしている。
彼女のいるテーブルに近付いて声をかけると、彼女はもぐもぐと口の中のものを飲み込んでから、はにかむように笑った。
「こんにちは、日々樹さん」
「ええこんにちは! 今日は随分可愛らしい髪型ですね、何かあるのですか? 何やらお急ぎのようですし」
椅子を引いて彼女の向かいに座ると、彼女はほんのり顔を赤くして口許を手で隠した。
「いえ、急いでいるわけではないんです。お腹がすいていたうえに、今日はオムライスが食べたくて食べたくて仕方なかったので……つい、がっついちゃいました。髪はその……早起きしたので、日々樹さんのまねっこです」
うふふ、と可愛らしく微笑まれて、つい心臓が高鳴った。不器用な彼女のことだから、きっと早起きしたぶん何度も失敗しながら編み込みを作ったのだろう。それも私の真似だなんて!
「Amazing! では日々樹渉直々にお揃いにしてあげましょう……☆」
ガタッと立ち上がり、彼女の後ろへ回ってその髪に触れる。彼女はびくりと肩を揺らしたあと、背筋をピンと伸ばして微動だにしなくなった。
「ふふふ、朝から頑張ったんですねぇ」
「でも、やっぱりうまくいきませんでした。難しいですよ」
「そうですねぇ、自分でとなると、不器用な貴女には難しいかもしれません」
「……否定できないのが悔しいです……」
彼女は裁縫もちっともできないし、髪を編み込むのも上手くいかない。運動もろくにできないし、料理だって得意ではない。けれども、その瞳にきらきらと輝くひたむきさが、私にはたいそう眩しく見えるのだ。
「……できましたよ!」
「ありがとうございま……って、あれ? お揃いって、今の日々樹さんの髪型とってことだったんですね」
横髪を三つ編みにして、サイドに編み込みする。私とは左右反対になるように、お団子も小さく作ってやった。
「ええ、もちろん! こうすれば、貴女が今日家に帰ってこれを解く時にも、きっと私のことを思い出してくれるでしょう?」
上から彼女の顔を覗き込むと、彼女は真っ赤になって自分の髪に触れた。
「でも、嬉しくってもう、ほどけません」
髪の先で口許を隠し、彼女が私から目をそらす。不器用な癖に、どうして私の心だけはこうも真ん中を撃ち抜いてくるのだろう。
「なら、明日も結わえてあげますよ」
よしよしと頭を撫でる。額に、唇にキスをしたいけれど、残念ながら今はまだ叶わない。
彼女を不器用だと言う私だけれど、彼女との事に関しては私も人のことを言えないのかもしれない。
ESの食堂で見かけたなまえさんは、髪をポニーテールにして一人でオムライスを食べていた。はむはむと急いで頬にオムライスを詰め込むさまは、なんとなくハムスターを彷彿とさせる。
彼女はよくこの食堂を利用しているらしい。珍しいのはここにいることではなく、その髪型だ。普段はサイドに流しているのだけれど、今日は高めのポニーテール。しかも、サイドに編み込みまでしている。
彼女のいるテーブルに近付いて声をかけると、彼女はもぐもぐと口の中のものを飲み込んでから、はにかむように笑った。
「こんにちは、日々樹さん」
「ええこんにちは! 今日は随分可愛らしい髪型ですね、何かあるのですか? 何やらお急ぎのようですし」
椅子を引いて彼女の向かいに座ると、彼女はほんのり顔を赤くして口許を手で隠した。
「いえ、急いでいるわけではないんです。お腹がすいていたうえに、今日はオムライスが食べたくて食べたくて仕方なかったので……つい、がっついちゃいました。髪はその……早起きしたので、日々樹さんのまねっこです」
うふふ、と可愛らしく微笑まれて、つい心臓が高鳴った。不器用な彼女のことだから、きっと早起きしたぶん何度も失敗しながら編み込みを作ったのだろう。それも私の真似だなんて!
「Amazing! では日々樹渉直々にお揃いにしてあげましょう……☆」
ガタッと立ち上がり、彼女の後ろへ回ってその髪に触れる。彼女はびくりと肩を揺らしたあと、背筋をピンと伸ばして微動だにしなくなった。
「ふふふ、朝から頑張ったんですねぇ」
「でも、やっぱりうまくいきませんでした。難しいですよ」
「そうですねぇ、自分でとなると、不器用な貴女には難しいかもしれません」
「……否定できないのが悔しいです……」
彼女は裁縫もちっともできないし、髪を編み込むのも上手くいかない。運動もろくにできないし、料理だって得意ではない。けれども、その瞳にきらきらと輝くひたむきさが、私にはたいそう眩しく見えるのだ。
「……できましたよ!」
「ありがとうございま……って、あれ? お揃いって、今の日々樹さんの髪型とってことだったんですね」
横髪を三つ編みにして、サイドに編み込みする。私とは左右反対になるように、お団子も小さく作ってやった。
「ええ、もちろん! こうすれば、貴女が今日家に帰ってこれを解く時にも、きっと私のことを思い出してくれるでしょう?」
上から彼女の顔を覗き込むと、彼女は真っ赤になって自分の髪に触れた。
「でも、嬉しくってもう、ほどけません」
髪の先で口許を隠し、彼女が私から目をそらす。不器用な癖に、どうして私の心だけはこうも真ん中を撃ち抜いてくるのだろう。
「なら、明日も結わえてあげますよ」
よしよしと頭を撫でる。額に、唇にキスをしたいけれど、残念ながら今はまだ叶わない。
彼女を不器用だと言う私だけれど、彼女との事に関しては私も人のことを言えないのかもしれない。