「えっ……!?」

ある休日の昼下がり、なまえちゃんと久しぶりにデートの約束をしていた。待ち合わせ場所にいた彼女を見て、思わず間抜けな声を上げてしまった。

「あ……日和さん。こんにちは」
「なっ、な……! どうしたのその髪!?」

なまえちゃんに駆け寄ってばっさりと切り落とされた髪に触れる。彼女はずっと長いこと髪を伸ばしていたのに、今はもうその面影もなく、なんなら茨より短いんじゃないかというくらいの短さになっていた。

彼女ははにかみながら、少し声の調子を落として視線を落とす。

「夏なので、思いきっちゃいました。……やっぱり、似合いませんか?」
「とっても似合ってるね! ぼくの彼女なんだから、そんなの当たり前だよね!」

ぎゅうっ、と人目もはばからず彼女を抱き締めてから、改めてショートヘアの彼女を見つめる。もちろん可愛いことに嘘はない。前のほうが良かったなんて失礼なことは思わない。けど、なんだか少しだけ寂しい気持ちがあった。

「…………でも、切る前にぼくに教えてくれなかったんだね、ちょっとだけ悪い日和」
「あ……ごめんなさい。結構衝動で切っちゃって……」
「うんうん、きみはぼくのものなんだから、なんだって相談してほしいね! わかってるよね? きみの髪もきみの手脚もきみの心も、全部全部ぼくだけのものだからね」

改めて彼女にそう言い聞かせると、彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。可愛い笑顔は髪を切っても変わらなくて、それがなんだかどうしようもなく愛おしく思えた。