「なまえ……眠いの?」

こくん、こくんとさっきから何度も頭を傾けている彼女を、そっと自分の肩に寄り添わせる。彼女は重い瞼を閉じたまま、もごもごと唇を動かした。

「ん……ねむい……」
「そう……今日は泊まっていく?」

うん、と彼女が頷く。いつもなら遠慮するのに、今日はかなり眠いのかとても素直だ。よしよしと頭を撫でてから、彼女を抱き上げ立ち上がる。寝室のベッドに彼女を横たえるけれど、彼女は私の首に腕を回したまま離そうとしない。

「……凪砂くんも、寝ようよ……」
「私はまだ眠くないよ」
「やだ、一緒にいて……」

意識が曖昧だと、こんなにも素直に我儘を言ってくれるものなのか。彼女の珍しく子どもっぽい我儘に、私はくすくす微笑んでベッドに上がった。

「うん、わかった。これでいいかな」

彼女を抱き寄せてやると、彼女も私に抱きついて身体を寄せてくれた。掛け布団を肩までかけて、そっと彼女の髪を撫でる。

「うん……だいすき」
「ありがとう。私も大好きだよ、おやすみ」
「おやすみなさい……」

額に唇を寄せてそう言うと、彼女はものの数分で眠りについてしまった。規則正しい寝息を聞きながら、目の前の幸福をじっと見つめる。

こんなふうに穏やかな夜がまた迎えられたらいいな、なんて思いながら、静かに意識を夢の中へ溶かしていった。