堕ちてきて
※ファンタジー設定
※ややグロテスクな描写があります。閲覧は自己責任でお願いします。
天祥院、だからテンシ。そんなふうに月永くんからは呼ばれるけれど、僕は天使なんかじゃない。天使は本当に存在していて、しかもどんな本で読むよりずっと綺麗で無垢で優しいのだ。
「……英智くん、どうして笑ってるの?」
目の前で、可愛い僕の天使が首を傾げた。そっと頭を撫でて、彼女の白い翼に触れる。
「きみがいるのが嬉しいんだよ」
「ふぅん……私も英智くんがいるのは嬉しい。それと同じこと?」
「うん、そうだよ。……おいで」
手を広げると、彼女は躊躇なく僕の胸に飛び込んでくる。腰の辺りに腕をまわして抱き締めると、彼女はそっと僕の頬に擦り寄った。
「きみがそばにいることが、何より嬉しいし幸福だよ。……それでも、いつか僕を置いて帰ってしまうのかい」
「うん……兄弟が、待ってるから…………でも、英智くんが寿命になればきっと天使になって、天国でずっと一緒にいられるよ」
彼女は知らない。僕がどこまでも薄汚れた人間であることを。彼女は透明な宝石のような、人間ではないものだから、その純粋な瞳にはきっと僕の罪が見えないのだ。僕は間違いなく、死んだら地獄へ行ってしまうのに。
「そう……残念だよ」
「英智くん……? あっ、!?」
ベッドの枕の下からナイフを取り出し、彼女の細い身体を抱き締めたまま、背中にある羽根の付け根を思い切り引き裂いた。
ぶちぶち、と肉を切り裂く感覚が手に伝わる。彼女は僕の肩に必死にしがみついていた。
「ひっ、ぁあ!! うぁ、え、英智くん、え、い」
「ああ、ああ、ごめんね。もう少し我慢していて」
声にならない叫びが耳を劈く。白いシーツも白い羽も白い肌も、真っ赤な血で汚れている。残った片翼も切り落としてから、彼女をベッドに横たえた。
「綺麗だよ、とっても。人間みたいだ」
「い……たい、痛いっ、た、たすけて、おねがい……」
真っ青になって、彼女はがたがたと身体を震わせる。前もって用意しておいた縫合用の糸と針を取り出して、血をガーゼで拭いながら丁寧に傷を縫い付けた。
額には汗が滲んで、心臓は甘美な程に高鳴っている。彼女は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、嗚咽を漏らしていた。それがたまらなく愛おしくて、いつものように優しく頭を撫でてやる。
「よく我慢できたね。麻酔は効かないみたいだから強硬手段に出たけど、上手くいって良かった」
「ひっ、ぐ……うぅ、英智くん、なんで……」
うつ伏せになっていた彼女を仰向けにして、彼女の上に覆い被さる。羽根を失ってもなお、彼女の美しい瞳は人間離れしているように見えた。
ああ、まだ足りない。まだ彼女は神さまのものだ。彼女の全てを僕のものにしたかった。神さまの使いではなくて、僕だけの彼女でいてほしい。
「愛してるからだよ」
柔らかな唇にキスをして、清潔な真っ白のワンピースをはだけさせる。
「……だから、僕のところまで堕ちてきて」
大粒の涙を指で拭って、額に唇を寄せた。どうしても、何をしてでも、僕は彼女が欲しかった。ただそれだけなのだ。
※ややグロテスクな描写があります。閲覧は自己責任でお願いします。
天祥院、だからテンシ。そんなふうに月永くんからは呼ばれるけれど、僕は天使なんかじゃない。天使は本当に存在していて、しかもどんな本で読むよりずっと綺麗で無垢で優しいのだ。
「……英智くん、どうして笑ってるの?」
目の前で、可愛い僕の天使が首を傾げた。そっと頭を撫でて、彼女の白い翼に触れる。
「きみがいるのが嬉しいんだよ」
「ふぅん……私も英智くんがいるのは嬉しい。それと同じこと?」
「うん、そうだよ。……おいで」
手を広げると、彼女は躊躇なく僕の胸に飛び込んでくる。腰の辺りに腕をまわして抱き締めると、彼女はそっと僕の頬に擦り寄った。
「きみがそばにいることが、何より嬉しいし幸福だよ。……それでも、いつか僕を置いて帰ってしまうのかい」
「うん……兄弟が、待ってるから…………でも、英智くんが寿命になればきっと天使になって、天国でずっと一緒にいられるよ」
彼女は知らない。僕がどこまでも薄汚れた人間であることを。彼女は透明な宝石のような、人間ではないものだから、その純粋な瞳にはきっと僕の罪が見えないのだ。僕は間違いなく、死んだら地獄へ行ってしまうのに。
「そう……残念だよ」
「英智くん……? あっ、!?」
ベッドの枕の下からナイフを取り出し、彼女の細い身体を抱き締めたまま、背中にある羽根の付け根を思い切り引き裂いた。
ぶちぶち、と肉を切り裂く感覚が手に伝わる。彼女は僕の肩に必死にしがみついていた。
「ひっ、ぁあ!! うぁ、え、英智くん、え、い」
「ああ、ああ、ごめんね。もう少し我慢していて」
声にならない叫びが耳を劈く。白いシーツも白い羽も白い肌も、真っ赤な血で汚れている。残った片翼も切り落としてから、彼女をベッドに横たえた。
「綺麗だよ、とっても。人間みたいだ」
「い……たい、痛いっ、た、たすけて、おねがい……」
真っ青になって、彼女はがたがたと身体を震わせる。前もって用意しておいた縫合用の糸と針を取り出して、血をガーゼで拭いながら丁寧に傷を縫い付けた。
額には汗が滲んで、心臓は甘美な程に高鳴っている。彼女は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、嗚咽を漏らしていた。それがたまらなく愛おしくて、いつものように優しく頭を撫でてやる。
「よく我慢できたね。麻酔は効かないみたいだから強硬手段に出たけど、上手くいって良かった」
「ひっ、ぐ……うぅ、英智くん、なんで……」
うつ伏せになっていた彼女を仰向けにして、彼女の上に覆い被さる。羽根を失ってもなお、彼女の美しい瞳は人間離れしているように見えた。
ああ、まだ足りない。まだ彼女は神さまのものだ。彼女の全てを僕のものにしたかった。神さまの使いではなくて、僕だけの彼女でいてほしい。
「愛してるからだよ」
柔らかな唇にキスをして、清潔な真っ白のワンピースをはだけさせる。
「……だから、僕のところまで堕ちてきて」
大粒の涙を指で拭って、額に唇を寄せた。どうしても、何をしてでも、僕は彼女が欲しかった。ただそれだけなのだ。