幸福な朝
※一応「あんたのせい」の続きです。
朝、目が覚めると、一人だった。
大きく息を吸い込み、虚しく吐き出す。すると、リビングのほうから良い香りがした。ベッドの上でごろりと寝返りをうつと、俺の隣のスペースはもう冷たくなっている。昨晩俺を寝かしつけた恋人は、どうやら俺より早く起きて朝食を作っているらしい。
朝食よりも、起きたときにそばにいて欲しい……なんて女々しいことを考えながら、気だるい身体を起こす。ベッドサイドの眼鏡をかけ、手ぐしで髪を簡単に整えリビングへ向かった。
「あ、茨。おはよう」
「……おはよ」
「あはは、テンション低いね。パン一枚でいい?」
「二枚……」
髪を後ろで括った彼女は、パンをトースト機に二枚入れて、冷蔵庫から卵を取り出す。ベーコンの入った小さなフライパンに、卵が割入れられた。じゅわ、と子気味のいい音がする。フライパンに水を少し入れると、フタをしてしまった。
彼女はじっと、中でぱちぱちと音のするフライパンの前に立つ。近付いてそのまま昨晩と同じように、後ろから彼女を抱き締めてみる。
「茨、危ないよ。良い子だから向こうで待ってて」
「……やっぱりガキ扱いしてます?」
「してないしてない。ふふ」
彼女の視線はフライパンに注がれたまま。ここにいても邪魔だろう、と諦めて身体を離すと、彼女がこちらを振り返った。
「茨、ん」
俺の名前を呼んだ口をキスで塞ぐと、彼女は仕方なさそうに笑って俺の背中に手を回した。
「今日、お休みだよね?」
「うん」
「良かった。じゃあ今日は独り占めできるんだね」
「……普段からあんたのものですけどね」
俺がそう言って彼女を抱き返すと、彼女は笑って俺の後頭部あたりを撫でた。なんとなく、彼女に手綱を握られているような気がする。……癪だ。
「じゃあ、良い子でテーブルで待ってて。すぐ出来るから」
「……はいはい」
彼女の髪に唇を寄せ、大人しく身体を離しキッチンを離れる。穏やかな朝、彼女の上機嫌な鼻歌に、香ばしい朝食の香り。
クソみたいに陳腐だけど、こういうのを幸せと呼ぶのだろう。そう思いながらぼんやりとキッチンにいる彼女を見つめて、息を吐いた。
朝、目が覚めると、一人だった。
大きく息を吸い込み、虚しく吐き出す。すると、リビングのほうから良い香りがした。ベッドの上でごろりと寝返りをうつと、俺の隣のスペースはもう冷たくなっている。昨晩俺を寝かしつけた恋人は、どうやら俺より早く起きて朝食を作っているらしい。
朝食よりも、起きたときにそばにいて欲しい……なんて女々しいことを考えながら、気だるい身体を起こす。ベッドサイドの眼鏡をかけ、手ぐしで髪を簡単に整えリビングへ向かった。
「あ、茨。おはよう」
「……おはよ」
「あはは、テンション低いね。パン一枚でいい?」
「二枚……」
髪を後ろで括った彼女は、パンをトースト機に二枚入れて、冷蔵庫から卵を取り出す。ベーコンの入った小さなフライパンに、卵が割入れられた。じゅわ、と子気味のいい音がする。フライパンに水を少し入れると、フタをしてしまった。
彼女はじっと、中でぱちぱちと音のするフライパンの前に立つ。近付いてそのまま昨晩と同じように、後ろから彼女を抱き締めてみる。
「茨、危ないよ。良い子だから向こうで待ってて」
「……やっぱりガキ扱いしてます?」
「してないしてない。ふふ」
彼女の視線はフライパンに注がれたまま。ここにいても邪魔だろう、と諦めて身体を離すと、彼女がこちらを振り返った。
「茨、ん」
俺の名前を呼んだ口をキスで塞ぐと、彼女は仕方なさそうに笑って俺の背中に手を回した。
「今日、お休みだよね?」
「うん」
「良かった。じゃあ今日は独り占めできるんだね」
「……普段からあんたのものですけどね」
俺がそう言って彼女を抱き返すと、彼女は笑って俺の後頭部あたりを撫でた。なんとなく、彼女に手綱を握られているような気がする。……癪だ。
「じゃあ、良い子でテーブルで待ってて。すぐ出来るから」
「……はいはい」
彼女の髪に唇を寄せ、大人しく身体を離しキッチンを離れる。穏やかな朝、彼女の上機嫌な鼻歌に、香ばしい朝食の香り。
クソみたいに陳腐だけど、こういうのを幸せと呼ぶのだろう。そう思いながらぼんやりとキッチンにいる彼女を見つめて、息を吐いた。