◇About You◇
「ほんっ…………とに有り得ないんすけどぉ!?」
「ジュンくんってば声が大きいね!」
「大きくもなりますよ! 大体おひいさんがいきなり番を作ったなんて、茨やナギ先輩がなんて言うか……それにあんた天使の連中からも睨まれてるじゃないっすか、この子がちょっかい出されたらどうするんすか!?」
先程日和さんが話していた、他人の前で私は日和さんの番ということにする、という報告を受けてジュンくんはかなり困惑していた。ちょくちょく話がわからないので、取り敢えずのところは黙って二人の話を聞いてみようと思う。
「茨と凪砂くんには、頃合を見て本当のことを話しても良いね。茨がどう動くかが心配だけど……大体、ジュンくんもそうだけどここいらで仲良くしてる子は皆適齢期だよね。誰のものでもないか弱い女の子が外に出て、無事でいられるはずがないね? そんなの、ぼくよりきみのほうがよっぽど知っていると思うけど」
「それは……そうっすけど…………」
「あと天使の子たちだけど、流石にぼくへの罰や恨みで何の関係もない子に害をなすとは考えづらいね。それにあの子たちはぼくや凪砂くんには基本的に関わりたがらないから、いないものとして扱って問題ないね。それで、何か問題がある?」
「…………まぁ、おひいさんがちゃんと考えてのことなら……」
二人の話は、どうやら無事に決着がついたらしい。日和さんは満足そうに笑って、私の手を取り玄関の大きな扉を開けた。ふわ、と外からの涼しい風が頬を撫でる。
「それじゃ、まずは凪砂くんたちにご挨拶だね。きみの詳しい設定は歩きながら話すから、ボロが出ないようしっかり覚えてね♪」
「は、はいっ!」
日和さんと手を繋いだまま、モンスター達で賑わう街を歩く。道中話されたことは、大体次のような内容だった。
まず、私は魔法使いだけど魔法が使えないということ。
「魔法使いって、一体何者なんですか?」
「うん、良い質問だね。彼らは人間であることが多いね。人間世界に人間として生まれても、ある一定の魔力量を超過してしまうと人間世界にいられなくなるね。彼らは自らの術で世界の境界をまたぎ、こちらへやって来る。そして魔法を使った色んな商売をしてるってわけ。そこできみは、生まれつきその一定の魔力量を超過してしまっているけれど術は使えないへっぽこ魔法使いってことにするね!」
へっぽこ、と突然貶されてなんだかしょんぼりしてしまう。ジュンくんは苦笑いしながら、まぁまぁと私の背を撫でてくれた。
「一目見れば、魔力量が尋常でないことがわかるね。これはチョーカーのお陰。でも、きみは術を使えない。この嘘で整合性をとるってわけだね。で、術を使えないきみをハロウィンの日にぼくが保護してあげたってシナリオだね!」
「嘘つくの上手いっすね、おひいさん」
そして次に、私は日和さんにひと目で気に入られて、ハロウィンの夜出会ってすぐ番になったということ。
「……番になるって、具体的にどういうことなんですか? お嫁さんなら、結婚式とか……指輪とか?」
私がそう言って首を傾げると、日和さんとジュンくんは顔を見合わせて少し黙ってしまった。変なこと言っちゃったのかな、と二人の返答を待つと、日和さんはパッと笑顔に戻ってはぐらかした。
「うんうん、それはきみが大人になったら教えてあげるね!」
「う……そうですか……」
「まだ早いっすよ。知らなくて良いっす」
番、というのが人間にはないからわからないけれど、もしかしてモンスターだと結婚するのにも何か特別なことがあるんだろうか。
「そういえば……魔力、って何なんですか? 私の想像しているもので合ってるのかなって……」
「あれっ、ジュンくん魔力のお話してなかったの?」
「あ〜〜……忘れてました。まぁ簡単に言うと筋肉みたいなもんすよ。魔法を使うための筋肉、それが魔力です。人間にはこれが一切ねぇんすけど、モンスターなら誰にでもあります。個人差ありますけど、おひいさんみたいな悪魔とか、あとは天使とか吸血鬼あたりが尋常じゃないほど多いっすね」
ジュンくんがそう説明すると、日和さんはなんだかあからさまに嫌そうな顔をした。
「まるでぼくが筋肉ダルマみたいな言い方だね! やめてほしいね!」
「もののたとえっすよ」
「じゃあ日和さんって、沢山魔法が使えて強いんですか?」
「あー……そうっすね。この人……あんまりモンスターに向けて魔法使いませんけど、相当強いっすよ。昔は結構ブイブイ言わせてたらしくて……なんでも五奇人っていう、」
ジュンくんがこそこそと私の耳元にそんな話を囁くと、日和さんは慌てて私の両耳を塞いでしまった。聞こえないけれど、頭上で二人が言い合っているのはわかる。仲良しだなぁ、と思いつつ、さっきジュンくんが言いかけた『五奇人』というものがなんとなく気になった。
「はあ……油断も隙もないね! ほら、凪砂くんのお家に着いたね」
見れば、日和さんたちの住んでいたお屋敷と同じくらい大きなお屋敷の前にいた。日和さんはノックもせず、自分の家のように扉を開ける。
「凪砂くーん! いるー?」
「……日和くん? どうしたの、突然……その子は?」
ちら、と日和さんの後ろから中を覗くと、銀髪の美しいひとが静かに私を見下ろしていた。頭には日和さんと同じ立派な角があって、背中に生えている黒い羽根も日和さんとそっくりだ。
「この子は名前ちゃん。ぼく、この子と番になったの。凪砂くんに紹介しておこうと思ってね」
「番……? そう……そっか。初めまして、私は乱凪砂。日和くんの友人だよ。こんなところで立ち話もなんだし、中で話そう。丁度茨がアフタヌーンティーをいれてくれたところだから」
凪砂……さん、はそう言って優しく微笑んだ。日和さんは凪砂さんにハグで挨拶をして、私を振り返る。そして私の手を取ると、少し不安の残る私に笑いかけてくれた。
「ジュンくんってば声が大きいね!」
「大きくもなりますよ! 大体おひいさんがいきなり番を作ったなんて、茨やナギ先輩がなんて言うか……それにあんた天使の連中からも睨まれてるじゃないっすか、この子がちょっかい出されたらどうするんすか!?」
先程日和さんが話していた、他人の前で私は日和さんの番ということにする、という報告を受けてジュンくんはかなり困惑していた。ちょくちょく話がわからないので、取り敢えずのところは黙って二人の話を聞いてみようと思う。
「茨と凪砂くんには、頃合を見て本当のことを話しても良いね。茨がどう動くかが心配だけど……大体、ジュンくんもそうだけどここいらで仲良くしてる子は皆適齢期だよね。誰のものでもないか弱い女の子が外に出て、無事でいられるはずがないね? そんなの、ぼくよりきみのほうがよっぽど知っていると思うけど」
「それは……そうっすけど…………」
「あと天使の子たちだけど、流石にぼくへの罰や恨みで何の関係もない子に害をなすとは考えづらいね。それにあの子たちはぼくや凪砂くんには基本的に関わりたがらないから、いないものとして扱って問題ないね。それで、何か問題がある?」
「…………まぁ、おひいさんがちゃんと考えてのことなら……」
二人の話は、どうやら無事に決着がついたらしい。日和さんは満足そうに笑って、私の手を取り玄関の大きな扉を開けた。ふわ、と外からの涼しい風が頬を撫でる。
「それじゃ、まずは凪砂くんたちにご挨拶だね。きみの詳しい設定は歩きながら話すから、ボロが出ないようしっかり覚えてね♪」
「は、はいっ!」
日和さんと手を繋いだまま、モンスター達で賑わう街を歩く。道中話されたことは、大体次のような内容だった。
まず、私は魔法使いだけど魔法が使えないということ。
「魔法使いって、一体何者なんですか?」
「うん、良い質問だね。彼らは人間であることが多いね。人間世界に人間として生まれても、ある一定の魔力量を超過してしまうと人間世界にいられなくなるね。彼らは自らの術で世界の境界をまたぎ、こちらへやって来る。そして魔法を使った色んな商売をしてるってわけ。そこできみは、生まれつきその一定の魔力量を超過してしまっているけれど術は使えないへっぽこ魔法使いってことにするね!」
へっぽこ、と突然貶されてなんだかしょんぼりしてしまう。ジュンくんは苦笑いしながら、まぁまぁと私の背を撫でてくれた。
「一目見れば、魔力量が尋常でないことがわかるね。これはチョーカーのお陰。でも、きみは術を使えない。この嘘で整合性をとるってわけだね。で、術を使えないきみをハロウィンの日にぼくが保護してあげたってシナリオだね!」
「嘘つくの上手いっすね、おひいさん」
そして次に、私は日和さんにひと目で気に入られて、ハロウィンの夜出会ってすぐ番になったということ。
「……番になるって、具体的にどういうことなんですか? お嫁さんなら、結婚式とか……指輪とか?」
私がそう言って首を傾げると、日和さんとジュンくんは顔を見合わせて少し黙ってしまった。変なこと言っちゃったのかな、と二人の返答を待つと、日和さんはパッと笑顔に戻ってはぐらかした。
「うんうん、それはきみが大人になったら教えてあげるね!」
「う……そうですか……」
「まだ早いっすよ。知らなくて良いっす」
番、というのが人間にはないからわからないけれど、もしかしてモンスターだと結婚するのにも何か特別なことがあるんだろうか。
「そういえば……魔力、って何なんですか? 私の想像しているもので合ってるのかなって……」
「あれっ、ジュンくん魔力のお話してなかったの?」
「あ〜〜……忘れてました。まぁ簡単に言うと筋肉みたいなもんすよ。魔法を使うための筋肉、それが魔力です。人間にはこれが一切ねぇんすけど、モンスターなら誰にでもあります。個人差ありますけど、おひいさんみたいな悪魔とか、あとは天使とか吸血鬼あたりが尋常じゃないほど多いっすね」
ジュンくんがそう説明すると、日和さんはなんだかあからさまに嫌そうな顔をした。
「まるでぼくが筋肉ダルマみたいな言い方だね! やめてほしいね!」
「もののたとえっすよ」
「じゃあ日和さんって、沢山魔法が使えて強いんですか?」
「あー……そうっすね。この人……あんまりモンスターに向けて魔法使いませんけど、相当強いっすよ。昔は結構ブイブイ言わせてたらしくて……なんでも五奇人っていう、」
ジュンくんがこそこそと私の耳元にそんな話を囁くと、日和さんは慌てて私の両耳を塞いでしまった。聞こえないけれど、頭上で二人が言い合っているのはわかる。仲良しだなぁ、と思いつつ、さっきジュンくんが言いかけた『五奇人』というものがなんとなく気になった。
「はあ……油断も隙もないね! ほら、凪砂くんのお家に着いたね」
見れば、日和さんたちの住んでいたお屋敷と同じくらい大きなお屋敷の前にいた。日和さんはノックもせず、自分の家のように扉を開ける。
「凪砂くーん! いるー?」
「……日和くん? どうしたの、突然……その子は?」
ちら、と日和さんの後ろから中を覗くと、銀髪の美しいひとが静かに私を見下ろしていた。頭には日和さんと同じ立派な角があって、背中に生えている黒い羽根も日和さんとそっくりだ。
「この子は名前ちゃん。ぼく、この子と番になったの。凪砂くんに紹介しておこうと思ってね」
「番……? そう……そっか。初めまして、私は乱凪砂。日和くんの友人だよ。こんなところで立ち話もなんだし、中で話そう。丁度茨がアフタヌーンティーをいれてくれたところだから」
凪砂……さん、はそう言って優しく微笑んだ。日和さんは凪砂さんにハグで挨拶をして、私を振り返る。そして私の手を取ると、少し不安の残る私に笑いかけてくれた。