◇Present For You◇
「街へ買い物に? 一人で? う〜ん……絶対にチョーカーは外さないでね。それと用が済んだらまっすぐお家に帰ってくること。いいね?」
「はい!」
こちらの世界へ来てそろそろ一ヶ月。チョーカーさえつけていれば、一人でも外出できるようになった。何度か街へ買い物に行って、顔見知りもできた。
今日は日和さんとジュンくんにいつものお礼をしようと、日和さんからいただいているお小遣いを持って街へやって来た。街は相変わらずモンスターで賑わっている。
「あっ、こんにちは。お買い物ですか?」
「創くん、こんにちは。そう、美味しい茶葉をいただこうと思って……日和さんにプレゼントしたいの」
まずはいつもの紅茶のお店に入った。ここはカフェと茶葉のショップが一緒になっていて、日和さんとも一緒に来ることが多い。
「そうなんですね。いつもはこっちの茶葉なんですけど、特別な日ならこっちもオススメですよ♪」
「おっ、いらっしゃい。今日は一人で来たのか?」
「なずなさん、こんにちは。そうなんです、二人にプレゼントしたくて……」
奥から出てきたのは店主の仁兎なずなさん。小さくて可愛らしいけれど、人脈が広くて色んな人に「に〜ちゃん」と呼ばれ慕われている。
「そっか、喜んでくれるといいな。でも気を付けろよ、最近物騒な連中が多いから……あんまり遅くまで一人で出歩かないほうがいいぞ。まぁ、巴の番って知ってて手を出してくる奴なんかいないと思うけど」
「ふふ、気をつけます。創くん、こっちのオススメのをラッピングしてもらっていい?」
「はいっ、綺麗にラッピングしますね」
ここのカフェ・Ra*bitsは、なんだか来るたびに心が癒される。なずなさんは優しいし、創くんや、今日は出てこないけれど友也くんと光くんも、皆可愛くて見ているだけで心がほっこりするのだ。初めはモンスターが怖いとばっかり思っていたけれど、今はこうして心を許せるモンスターのほうが多い。
「ありがとうございました!」
ラッピングしてもらった茶葉を受け取ってお店を出る。これは二人とお茶をするためのものだから、まずはジュンくんへのプレゼント、それから日和さんへのプレゼントを買いに行こう。
ジュンくんはダンベルが欲しいってぼやいていたから多分それでいいとして、日和さんには何をあげようか。アクセサリーや服が良いだろうけど、彼に気に入ってもらえるかどうかがわからない。
「あれ…………一人で買い物?」
ダンベルを買ったあと一人で考え込んでいると、不意に後ろから声をかけられた。びくりと身体を跳ねさせ振り向くと、凪砂さんが無表情に私を見下ろしている。
「な……凪砂さん。こんにちは……えと、はい。今日は一人です」
「こんにちは。……そっか、何をしてるの?」
「実は……」
二人へのプレゼントを買いに来たことと、日和さんへのプレゼントで少し悩んでいることを告げると、凪砂さんは成程と呟いて腕を組んだ。一考してから、彼はほんの少し微笑んで私の持っていた買い物袋を手に取った。
「それなら、私も一緒に選ぶよ。日和くんとはもう随分長い付き合いだから、役に立てるかも」
「良いんですか? ありがとうございます」
それから、凪砂さんと色んなお店を回った。やっぱり服よりもアクセサリーかな、と思って色々回ってみたところ、やっとひとつ、素敵なピアスを見つけられた。
日和さんの瞳の色と同じ、アメジストの装飾がついた綺麗なデザインのピアスだ。凪砂さんに見せると、穏やかに「良いんじゃないかな」と笑ってくれた。
「きみは、日和くんのことが好きなんだね」
ピアスを買って店を出ると、凪砂さんが不意にそんなことを言ってきた。好き、と言われてつい言葉を失ってしまう。
「……はい」
でも名目上はお嫁さんなんだから素直に答えないと。と、ややぎこちなく頷く。けれど、別に日和さんのことが好きでないわけではなかった。
確かに日和さんは破天荒だし、彼に振り回されてこの世界に来てしまったけれど、優しく私の頭を撫でて微笑む日和さんのことはいまいち悪く思えない。むしろ……
「私も、日和くんが好き。……日和くんの昔の話は聞いた?」
「昔の……? いえ、何にも……」
「そう……私は日和くんと、生まれた時からずっと一緒にいる。だからわかるよ。きみの正体も、日和くんの嘘も」
「な……」
誤魔化すには驚きすぎて、そのまま何にも言えなくなってしまった。凪砂さんは変わらず穏やかに微笑んだまま、私の頭を優しく撫でる。
「日和くんを恨まないであげてね。彼はもう十分すぎるほど傷ついてきたから」
「…………昔、何かあったんですか?」
「うん。沢山あったよ。聞きたい?」
「……気になります、けど、日和さんが話してもいいって思ったときに知りたいです」
私がそう言うと、凪砂さんはなんだか満足そうに笑った。
「そうだね。私も、そうしたほうがいいと思う」
――凪砂さんに家まで送ってもらって、帰宅後プレゼントを渡すと、二人は予想よりずっと嬉しそうに受け取ってくれた。
よくよく考えてみれば、私はまだ二人について知らないことが多い。聞けば教えてくれるのだろうか。もう一ヶ月も一緒にいるけれど、未だに何となく距離を測りかねている。
「はい!」
こちらの世界へ来てそろそろ一ヶ月。チョーカーさえつけていれば、一人でも外出できるようになった。何度か街へ買い物に行って、顔見知りもできた。
今日は日和さんとジュンくんにいつものお礼をしようと、日和さんからいただいているお小遣いを持って街へやって来た。街は相変わらずモンスターで賑わっている。
「あっ、こんにちは。お買い物ですか?」
「創くん、こんにちは。そう、美味しい茶葉をいただこうと思って……日和さんにプレゼントしたいの」
まずはいつもの紅茶のお店に入った。ここはカフェと茶葉のショップが一緒になっていて、日和さんとも一緒に来ることが多い。
「そうなんですね。いつもはこっちの茶葉なんですけど、特別な日ならこっちもオススメですよ♪」
「おっ、いらっしゃい。今日は一人で来たのか?」
「なずなさん、こんにちは。そうなんです、二人にプレゼントしたくて……」
奥から出てきたのは店主の仁兎なずなさん。小さくて可愛らしいけれど、人脈が広くて色んな人に「に〜ちゃん」と呼ばれ慕われている。
「そっか、喜んでくれるといいな。でも気を付けろよ、最近物騒な連中が多いから……あんまり遅くまで一人で出歩かないほうがいいぞ。まぁ、巴の番って知ってて手を出してくる奴なんかいないと思うけど」
「ふふ、気をつけます。創くん、こっちのオススメのをラッピングしてもらっていい?」
「はいっ、綺麗にラッピングしますね」
ここのカフェ・Ra*bitsは、なんだか来るたびに心が癒される。なずなさんは優しいし、創くんや、今日は出てこないけれど友也くんと光くんも、皆可愛くて見ているだけで心がほっこりするのだ。初めはモンスターが怖いとばっかり思っていたけれど、今はこうして心を許せるモンスターのほうが多い。
「ありがとうございました!」
ラッピングしてもらった茶葉を受け取ってお店を出る。これは二人とお茶をするためのものだから、まずはジュンくんへのプレゼント、それから日和さんへのプレゼントを買いに行こう。
ジュンくんはダンベルが欲しいってぼやいていたから多分それでいいとして、日和さんには何をあげようか。アクセサリーや服が良いだろうけど、彼に気に入ってもらえるかどうかがわからない。
「あれ…………一人で買い物?」
ダンベルを買ったあと一人で考え込んでいると、不意に後ろから声をかけられた。びくりと身体を跳ねさせ振り向くと、凪砂さんが無表情に私を見下ろしている。
「な……凪砂さん。こんにちは……えと、はい。今日は一人です」
「こんにちは。……そっか、何をしてるの?」
「実は……」
二人へのプレゼントを買いに来たことと、日和さんへのプレゼントで少し悩んでいることを告げると、凪砂さんは成程と呟いて腕を組んだ。一考してから、彼はほんの少し微笑んで私の持っていた買い物袋を手に取った。
「それなら、私も一緒に選ぶよ。日和くんとはもう随分長い付き合いだから、役に立てるかも」
「良いんですか? ありがとうございます」
それから、凪砂さんと色んなお店を回った。やっぱり服よりもアクセサリーかな、と思って色々回ってみたところ、やっとひとつ、素敵なピアスを見つけられた。
日和さんの瞳の色と同じ、アメジストの装飾がついた綺麗なデザインのピアスだ。凪砂さんに見せると、穏やかに「良いんじゃないかな」と笑ってくれた。
「きみは、日和くんのことが好きなんだね」
ピアスを買って店を出ると、凪砂さんが不意にそんなことを言ってきた。好き、と言われてつい言葉を失ってしまう。
「……はい」
でも名目上はお嫁さんなんだから素直に答えないと。と、ややぎこちなく頷く。けれど、別に日和さんのことが好きでないわけではなかった。
確かに日和さんは破天荒だし、彼に振り回されてこの世界に来てしまったけれど、優しく私の頭を撫でて微笑む日和さんのことはいまいち悪く思えない。むしろ……
「私も、日和くんが好き。……日和くんの昔の話は聞いた?」
「昔の……? いえ、何にも……」
「そう……私は日和くんと、生まれた時からずっと一緒にいる。だからわかるよ。きみの正体も、日和くんの嘘も」
「な……」
誤魔化すには驚きすぎて、そのまま何にも言えなくなってしまった。凪砂さんは変わらず穏やかに微笑んだまま、私の頭を優しく撫でる。
「日和くんを恨まないであげてね。彼はもう十分すぎるほど傷ついてきたから」
「…………昔、何かあったんですか?」
「うん。沢山あったよ。聞きたい?」
「……気になります、けど、日和さんが話してもいいって思ったときに知りたいです」
私がそう言うと、凪砂さんはなんだか満足そうに笑った。
「そうだね。私も、そうしたほうがいいと思う」
――凪砂さんに家まで送ってもらって、帰宅後プレゼントを渡すと、二人は予想よりずっと嬉しそうに受け取ってくれた。
よくよく考えてみれば、私はまだ二人について知らないことが多い。聞けば教えてくれるのだろうか。もう一ヶ月も一緒にいるけれど、未だに何となく距離を測りかねている。