◇Don't Touch Mine◇
「帰ったね! ただいまっ!」
「おかえりなさい」
天使のおふたりが帰っていって、暫くしてから日和さんたちが帰ってきた。日和さんは帰るなり私に飛びつき、ぎゅう、と強く抱き締めてきた。
「寂しかったね、お留守番できて偉いね! ……あれ、何か……待って。この匂い……英智くん? どういうこと、どうしてきみから英智くんの匂いがするの?」
日和さんは急に体を離して、冷たく低い声で私を見下ろした。怒っている。彼の怒るところなんて、今まで見たことがなかったのに。
「え……と、その……」
「まさか家に上がらせたのかね?」
「あの、雨に降られて困ってらしたから、つい……」
「…………来なさい」
腕を強く掴まれ、そのまま力任せに引っ張られる。ジュンくんはなんとも言えない顔でこちらを見つめていた。大人しく日和さんに着いていくと、滅多に入れてもらえない日和さんの自室に入らされた。日和さんはすぐにドアを閉めると、私をドアに押さえつけて口を開いた。
「彼に何かされた?」
「な……なにも、されてません」
「じゃあどうしてきみの中に英智くんの魔力が残っているのかね? ……触られたんだよね?」
触られた、と言われて思わず黙ってしまう。思い当たる節がないからだ。天祥院さんの体を拭いたのは日々樹さんだったし、私はタオルや毛布を出てきただけで天祥院さんに触れられてなんかない。
「どうして答えないの。あぁ、やっぱり留守番なんてさせるんじゃなかったね」
「待ってください、触れられてなんか……」
「どうしてそんな見え透いた嘘をつくのかね? ぼくには言えないような触れられ方をしたの? 可愛い顔をして、まさかきみはもう大人になっちゃったの?」
日和さんが何を言っているのかわからない。私が上手く弁明出来ずにいると、日和さんは私の首に手を回し、突然唇に噛み付いてきた。
初めてのキスに驚いて、咄嗟に日和さんの胸板を突き飛ばそうとする。でも日和さんはびくともせずに、もう片方の手で私の着ていたワンピースを破いた。ビリリ、と布が叫び声をあげて、足もとが露わになる。
私はあまりの出来事に思わず涙を滲ませ、逃避するようにぎゅうっと目を瞑った。日和さんの大きく滑らかな手が、私の太腿をなぞる。
「きみが大人になるなら、ぼくもきみをそういうふうに扱ってあげる。……言っても分からないなら体に教えるだけだね、きみはどうしたってぼくのものなんだって」
「ま、……まって、お願い、やめて……怖い、日和さん……」
「……怖い? あはは、英智くんには優しくしてもらったの? そんなものすぐに忘れさせてあげるね」
「ちがうっ、私は……本当に何にも、英智さんに触ったのなんて握手したときくらいで……」
私が泣きじゃくりながらそう言うと、彼は一瞬止まって私から距離をとった。
「握手? ……そのとき何か変な感じがしなかった?」
「変な……あ、何か、身体に何かが流れ込んでくる……みたいな……?」
ふと思い出してそう話すと、日和さんは私からパッと手を離した。そして少し顔を赤くして、ぎゅうっと私を抱き締めてきた。
「わあっ、勘違いだね! ごめんねっ、ぼくてっきりきみが英智くんに手篭めにされたのかと思って……!」
「てごめ……?」
「うんうん、まだ知らなくっていいね! 良かった、まだ綺麗なままで……あぁ、本当にごめんね、怖がらせちゃったよね」
日和さんはいつもの調子に戻って、優しく私の頭を撫でてくれた。私はぼう然としたまま、異様に速まった自分の心音を聞いていた。唇にはまだ柔らかな感触が残っている。初めて男の人とキスをしてしまった。あんなに熱をもった手で触れられたのだって初めてだ。
怖かった、だけでは説明のつかないもやが胸の中に渦巻いている。それが何なのかも、どうしてそんなものがあるのかもわからないけれど。
「おかえりなさい」
天使のおふたりが帰っていって、暫くしてから日和さんたちが帰ってきた。日和さんは帰るなり私に飛びつき、ぎゅう、と強く抱き締めてきた。
「寂しかったね、お留守番できて偉いね! ……あれ、何か……待って。この匂い……英智くん? どういうこと、どうしてきみから英智くんの匂いがするの?」
日和さんは急に体を離して、冷たく低い声で私を見下ろした。怒っている。彼の怒るところなんて、今まで見たことがなかったのに。
「え……と、その……」
「まさか家に上がらせたのかね?」
「あの、雨に降られて困ってらしたから、つい……」
「…………来なさい」
腕を強く掴まれ、そのまま力任せに引っ張られる。ジュンくんはなんとも言えない顔でこちらを見つめていた。大人しく日和さんに着いていくと、滅多に入れてもらえない日和さんの自室に入らされた。日和さんはすぐにドアを閉めると、私をドアに押さえつけて口を開いた。
「彼に何かされた?」
「な……なにも、されてません」
「じゃあどうしてきみの中に英智くんの魔力が残っているのかね? ……触られたんだよね?」
触られた、と言われて思わず黙ってしまう。思い当たる節がないからだ。天祥院さんの体を拭いたのは日々樹さんだったし、私はタオルや毛布を出てきただけで天祥院さんに触れられてなんかない。
「どうして答えないの。あぁ、やっぱり留守番なんてさせるんじゃなかったね」
「待ってください、触れられてなんか……」
「どうしてそんな見え透いた嘘をつくのかね? ぼくには言えないような触れられ方をしたの? 可愛い顔をして、まさかきみはもう大人になっちゃったの?」
日和さんが何を言っているのかわからない。私が上手く弁明出来ずにいると、日和さんは私の首に手を回し、突然唇に噛み付いてきた。
初めてのキスに驚いて、咄嗟に日和さんの胸板を突き飛ばそうとする。でも日和さんはびくともせずに、もう片方の手で私の着ていたワンピースを破いた。ビリリ、と布が叫び声をあげて、足もとが露わになる。
私はあまりの出来事に思わず涙を滲ませ、逃避するようにぎゅうっと目を瞑った。日和さんの大きく滑らかな手が、私の太腿をなぞる。
「きみが大人になるなら、ぼくもきみをそういうふうに扱ってあげる。……言っても分からないなら体に教えるだけだね、きみはどうしたってぼくのものなんだって」
「ま、……まって、お願い、やめて……怖い、日和さん……」
「……怖い? あはは、英智くんには優しくしてもらったの? そんなものすぐに忘れさせてあげるね」
「ちがうっ、私は……本当に何にも、英智さんに触ったのなんて握手したときくらいで……」
私が泣きじゃくりながらそう言うと、彼は一瞬止まって私から距離をとった。
「握手? ……そのとき何か変な感じがしなかった?」
「変な……あ、何か、身体に何かが流れ込んでくる……みたいな……?」
ふと思い出してそう話すと、日和さんは私からパッと手を離した。そして少し顔を赤くして、ぎゅうっと私を抱き締めてきた。
「わあっ、勘違いだね! ごめんねっ、ぼくてっきりきみが英智くんに手篭めにされたのかと思って……!」
「てごめ……?」
「うんうん、まだ知らなくっていいね! 良かった、まだ綺麗なままで……あぁ、本当にごめんね、怖がらせちゃったよね」
日和さんはいつもの調子に戻って、優しく私の頭を撫でてくれた。私はぼう然としたまま、異様に速まった自分の心音を聞いていた。唇にはまだ柔らかな感触が残っている。初めて男の人とキスをしてしまった。あんなに熱をもった手で触れられたのだって初めてだ。
怖かった、だけでは説明のつかないもやが胸の中に渦巻いている。それが何なのかも、どうしてそんなものがあるのかもわからないけれど。