◇Thinking about Him◇
「夕べは災難でしたね。怪我とかありませんか?」
翌朝、朝食の席に日和さんはいなかった。ジュンくんは少し心配そうに私の顔を覗き込む。ぼんやりと昨晩のことを思い出して、少し赤面してしまった。
「大丈夫っ……大丈夫です、怪我はしてませんから……」
「へぇ? 怪我以外はしてそうっすね。……あの、オレずっとあんたに聞きたかったんすけど」
ふと、ジュンくんが真剣な声色で私をじっと見据えた。何を言われるのか想像もつかないので、私は彼を見返して黙りこくる。
「……おひいさんのこと、憎くないんすか。あんたはオレと違って、身寄りのないところを拾われたんじゃねぇ。言わば無理やり拉致されたんすよ。確かに行くあてもないから此処にいるのはわかりますけど……あんた、おひいさんのことどう思ってるんです?」
「…………憎くなんてないです……日和さんはたまに怖いけど、優しくしてくださるし、私は……全然、嫌いなんかじゃないですよ。ちゃんと好きです」
「家族と一生会えなくなっても一緒にいるほどですか?」
「え、でも日和さん、来年のハロウィンには帰してあげるって……」
私が戸惑いつつそう首を傾げると、ジュンくんはばつの悪そうな顔で小さく溜め息をついた。諦めているような、呆れているような、そんな声色で彼は話を続ける。
「あんたが本当に、どうしても帰りたいって言うなら……ですよ。正直今のあの人見てると、あんたのこと帰すつもりなんかなさそうなんですよね」
「……帰れない、可能性のほうが高いってこと……?」
「よく考えてみてください。……オレはあんたの意志を尊重しますよ。まぁ、個人的な思いとしては……おひいさんの傍にいてやってほしいですけどね。なんであんただったのかはわかんねぇけど、それでも、これ以上おひいさんに何かを失ってほしくないんで」
ジュンくんは真剣な眼差しで、じいっとこちらを見つめた。よくよく日和さんのことを考えてみても、やはり憎しみとか怒りなんてものはちっとも浮かんでこなかった。まるで太陽みたいな人。私にとっての日和さんは、まさにそんな印象だ。
「日和さんのことは……その、好きです。だから私、日和さんのこと、もっと知りたいです。でも……家族ともう会えないことを引き換えに出来るかって、本当にその覚悟があるのかって言われたら……まだ、わかりません。どっちも私にとって大切なものだから……」
「……そうですよね。まぁ、天秤にかけてくれてる時点でありがてぇ話っすよ。……また何かあったらいつでも言ってください」
ジュンくんはそう言って微笑み、席を立ってしまった。一人残された食卓で、もくもくと美味しいご飯を食べる。
お母さん、今頃どうしてるだろう。私のこと、探してくれているんだろうか。心配しているんだろうな。……私は、これからどうするべきなんだろう。
翌朝、朝食の席に日和さんはいなかった。ジュンくんは少し心配そうに私の顔を覗き込む。ぼんやりと昨晩のことを思い出して、少し赤面してしまった。
「大丈夫っ……大丈夫です、怪我はしてませんから……」
「へぇ? 怪我以外はしてそうっすね。……あの、オレずっとあんたに聞きたかったんすけど」
ふと、ジュンくんが真剣な声色で私をじっと見据えた。何を言われるのか想像もつかないので、私は彼を見返して黙りこくる。
「……おひいさんのこと、憎くないんすか。あんたはオレと違って、身寄りのないところを拾われたんじゃねぇ。言わば無理やり拉致されたんすよ。確かに行くあてもないから此処にいるのはわかりますけど……あんた、おひいさんのことどう思ってるんです?」
「…………憎くなんてないです……日和さんはたまに怖いけど、優しくしてくださるし、私は……全然、嫌いなんかじゃないですよ。ちゃんと好きです」
「家族と一生会えなくなっても一緒にいるほどですか?」
「え、でも日和さん、来年のハロウィンには帰してあげるって……」
私が戸惑いつつそう首を傾げると、ジュンくんはばつの悪そうな顔で小さく溜め息をついた。諦めているような、呆れているような、そんな声色で彼は話を続ける。
「あんたが本当に、どうしても帰りたいって言うなら……ですよ。正直今のあの人見てると、あんたのこと帰すつもりなんかなさそうなんですよね」
「……帰れない、可能性のほうが高いってこと……?」
「よく考えてみてください。……オレはあんたの意志を尊重しますよ。まぁ、個人的な思いとしては……おひいさんの傍にいてやってほしいですけどね。なんであんただったのかはわかんねぇけど、それでも、これ以上おひいさんに何かを失ってほしくないんで」
ジュンくんは真剣な眼差しで、じいっとこちらを見つめた。よくよく日和さんのことを考えてみても、やはり憎しみとか怒りなんてものはちっとも浮かんでこなかった。まるで太陽みたいな人。私にとっての日和さんは、まさにそんな印象だ。
「日和さんのことは……その、好きです。だから私、日和さんのこと、もっと知りたいです。でも……家族ともう会えないことを引き換えに出来るかって、本当にその覚悟があるのかって言われたら……まだ、わかりません。どっちも私にとって大切なものだから……」
「……そうですよね。まぁ、天秤にかけてくれてる時点でありがてぇ話っすよ。……また何かあったらいつでも言ってください」
ジュンくんはそう言って微笑み、席を立ってしまった。一人残された食卓で、もくもくと美味しいご飯を食べる。
お母さん、今頃どうしてるだろう。私のこと、探してくれているんだろうか。心配しているんだろうな。……私は、これからどうするべきなんだろう。