「……あ、」
「………………」
校門で意中の彼を待ち伏せる。
そんなベタなこと普通に生活してればすることないと思っていたのに、現時点で私はそれをやって退けてしまった。
なんで居るんだとでも言いたげな顔をした遙と目があって、そのまま彼は口を開いた。
「……どうした?」
「……ハルに用があって。」
「恥ずかしいから、待ち伏せなんてやらないんじゃなかったのか?」
もちろん、やらないつもりだった。
……でも、でもね?
「連絡取るにしても、ハルはケータイ持ち歩いてないじゃんか!!」
「……必要ない。」
ほらね。
だから仕方なく待ち伏せしたんだよ、私。
他校の制服なんて目立つのに、わざわざ遙が出てくるまで校門で待ってたんだよ。
言ったところで伝わる訳がないので、これはとりあえずおいて置くことにする。
恥ずかしい思いまでして岩鳶高校まで来たのにはちゃんと理由がある。
「………ハル、!」
そう一言彼の名前を呼べば、きょとんとした顔で私を見つめる彼の姿。
「誕生日、……おめでとう!!」
私はそう言って軽く頭を下げて、プレゼントが入っている紙袋を遙に向かって差し出した。
今まで素直におめでとうなんて言えた試しがないから、なんだか恥ずかしさが込み上げてくる。
同時にバクバクと心臓の鼓動も早くなった。
(………あれ?)
見てないので分からないが、遙の気配はあるのになかなか受け取ってもらえない。
私は不安になって、下げていた頭をそろそろと上げて遙を見た。
「……ハル……? ……っ!」
目の前の彼はいつも無表情なことが多いのに、頬を染めて口元を腕で覆いながら静かに照れていた。
遙のレアな姿を目の当たりにして、私の顔の筋肉がだんだんと緩んでいくのを実感した。
きっと私は今、ニヤニヤしてることだろう。
「……おい、見るな。」
「はは、そんなこと言われても困る。」
「………笑うな。とりあえずあっち向け。」
「そんな殺生な……!」
ピロリーン
その機械音に遙の顔が軽く歪んだ(気がする)。
なんだかんだ使命感を感じた仕事はきっちりやるのが私、一橋璃黛という人間だ。
口ではそう言いながらも、珍しい遙の姿をちゃんと写メに収めるのだった。
「……おい!」
「ん?……ああ、はい。誕生日おめでとう。」
「……違う、こっちじゃない。お前のケータイを俺に貸せ。」
「え、嫌だよ。」
「……じゃあ、今すぐ消せ。」
「い、や!」
「……やっぱり貸せ。」
「だから嫌だって。それにハルは通話しか出来ないでしょ。」
「…………」
さっきから遙の出された右手は空を切りっぱなしだ。
仕方がないので、その手に紙袋を握らせる。
そして私は改めて遙に向かって言う。
「誕生日おめでとう。今日、遙が産まれてくれたことがすごく嬉しい。」
そう一言だけ。
その後、遙は何も言葉を発しなかったけど、プレゼントを受け取ってくれたのをみれば分かる。
「いつもは静かな誕生日だけど、たまにはこんなのも悪くないでしょ?」
そう言えば、ぷいっと顔が反対側に逸らさせる。
それは照れてるときにする行動だと知っているので、私はそれを見て軽く微笑み、そのまま無言で遙の隣を着いていった。
今年も、来年も、ずっと一緒にお祝いさせて。
そう語るように静かに歩く帰り道。
帰ったら、みんなで囲んでケーキを食べよう。
日常の狭間
2014.06.30
2016.03.11了
今すぐ君に会いにいく