カーテンの隙間から漏れてくる日差しが顔にかかり、その眩しさから俺はうっすらと目を開けた。寝惚け眼に時計を見ると、いつもよりだいぶ早い時間に目が覚めたようだ。
その証拠に、いつも俺より先に起きていることが多い凛がまだ気持ち良さそうに寝息をたてている。
再度時計を確認すると、長針、短針共に、寝るにも起きるにも半端な時間を指している。俺はチッと舌打ちを一つして、「クソ。お前のせいで目が覚めたじゃねぇか。」と、昨夜カーテンを閉めた凛に対して聞いてるはずもない愚痴を零した。
朝の貴重な時間に多少の暇を持て余すことになってしまった俺は、枕元に置いているケータイを手に取った。
折り畳まれているケータイを片手で開けると、無機質な画面に新着メールを知らせる文字が表示されている。行儀良く並ぶボタンを慣れた手つきで操作して受信ボックスを開くと、そこには「おめでとう」などと、自身を祝福する言葉が書かれたタイトルが並んでいた。
(……ああ、誕生日か。)
そういえばと、俺は今日が自分の誕生日だったことを改めて思い出した。
最近は身の回りが忙しくて曜日の感覚さえ曖昧になっていた。「忙しいと自分の誕生日のことなんて忘れる。」なんて、以前誰かと話したことを頭の片隅に思い出して、実際体感すると、それって本当なんだなと思って俺は細く笑った。
祝われることを素直に嬉しく思いながら受信したメールを淡々と確認していると、日付が昨日に変わる直前に最近よく見る名前が目に入った。
シンプルに「誕生日おめでとう!」と書かれたタイトルの下に、“一橋璃黛”と差出人の名前が表示されている。その瞬間、ドクッと心臓が大きく波打った。
一橋璃黛というのは、最近人伝いに知り合った他校の女子だ。そして、恋愛的な意味で俺が気になってる人でもある。
多分、誰かに聞いたと予想はつくが、彼女が自分の誕生日を知っていたことに驚いた。しかも、彼女からのメールは日付が変わってすぐに送られている。そんな些細なことでも、男という生き物は自然とテンションが上がってしまうもので、それは自分も例外ではなかったようだ。嬉しくてニヤニヤしてしまうのと、ドキドキと脈打つ心臓を落ち着けるように深呼吸を一つして、俺は本文を表示させるためにゆっくりとボタンを押した。
そこには、『宗介、誕生日おめでとう!誕生日だって聞いたから、夜中だけど送っちゃいました。今日が宗介にとって楽しい一日になりますように。PS.また今度遊びに行こうね〜』と、定型的でありながらも彼女らしくデコレーションされた文字が表示されていた。
(……やべぇ、すっげ、嬉しいかも。)
柄にもなく悶えてしまいそうだ。まだ凛が起きていなくて本当に良かったと思う。
自分で思ってる以上に彼女にご執心だったことに驚きつつ、こんな誕生日も悪くないなと思った。
日常の狭間
2014.09.14
2016.03.11了
ふわふわのひととき