好きとか、嫌いとか、

それ以前に好意を寄せる相手と2人きりになれる機会なんてそうそうないと思う。
身分が違えば近づくのさえ困難。


彼は生徒会役員で頭もいいし、私はただバカな1人の生徒だし、普通この2人が交わることなんてないんだよなあ。


...普通は。







「ロイー、ごめん。」

「うるさい。バカなのは分かった。」

「ホントにごめん。ごめんなさい。」

「謝る前に勉強しろ。脳に詰め込め。」



動かす手は止めないものの、
こんなやり取りが小一時間続いている。



私の通う学校は少し変わっている。

まず年初めのテストで順位が付けられ、成績優秀生と劣等生で2人1組のペアに分けられる。
簡単に言えば連帯責任システムがあるのだ。

例えば片方がいくらいい点取ろうがペアの片方が赤点だった場合、再テストから補習に至るまで連帯責任で全て一緒に受けなければならない。

成績優秀な人からすればいい迷惑である。



だが、学校的には良い事の方が多かったりする。

ペア同士自然と教え合い助け合いが生まれ、徐々に学校全体の偏差値も上がってきている。
最近では、他校からもカリキュラムに組み込もうと話しが出ているくらい注目されているのだ。


それに友達とは別に1年間同じ時間を共有するということもあり、ペア同士の絆も深まるし学校全体の雰囲気も良い。

しかも3年の時に男女のペアが恋人同士に発展した場合、結婚までゴールイン出来るという素敵なジンクスさえある。





そんな連帯責任システムを激しく恨む。


事の発端はこの間の中間テストで私が赤点を取ったことから始まり、今日行われた再テストでも懲りずに赤点を取ったことが原因。

おかげで補習のプリントが付いてきた。
もちろん2人分。

一度ならず二度も赤点を取ってしまい、ペアのロイが激しくご立腹なのである。



「あーあー、テスト期間が終わったかと思えば再テスト並びに補習プリント。苦手なのは分かるが、毎度同じ教科ばかり。しかも面倒なシステムだと知っておいて今回も赤点だなんて、ある意味天才だな。」

「いえいえそれ程でも。」

「おい、俺が褒めたと思ったか?ん?」

「や、すみません。」

「まだ終わらないのか?さっさと提出して帰るぞ。」

「あの、ロイさん、ここ、...わかんないです。」

「さっき教えた公式の応用で解けるはずだが?」

「仰る通り過ぎて何も言えないのですが、私には応用が出来ないようで困っております...」

「...ペン借せ。」



いつも思うがこのロイという人間は分からないと聞けば、丁寧かつ分かり易く理解出来るまで教えてくれる。

それに出来ればちゃんと褒めてくれる。
飴と鞭の使い方も上手いのだ、こいつは。







「終わりましたー!」

「はい、お疲れ。提出して帰るぞ。」

「ロイ。先帰ってても良かったのに、最後まで見てくれてありがとう。」

「はは、なんだ改まって。」

「いや、何時もにも増して罪悪感を感じてしまいまして、」

「ほぅ、珍しいこともあるんだな。」

「...バカにした風に言わないでよ。」

「風、じゃない。バカにしてるんだ。」

「もー!何それ!」

「ははは。ほら、ちゃんとマフラー巻いて。」

「なに、優しい、なんか企んでる?」

「璃黛は失礼なやつだな。」



そう言いながらも適当に巻いてたマフラーをきちんと巻き直してくれる。


ロイは女の子には基本優しい。


だからモテる。
(ムカつくことにかっこいい)

それに、女子からの人気も高い。
(恋敵多し)

ロイ自身も来るもの拒まずなところがあるし、
(俗に言う女好き)

噂は日に日に大きくなるばかりだ。
(ヤリ○ンだとか)

それでも好意を寄せる女の子は後を絶たないのだから不思議で仕方ない。
(どんな手使ってるんだか)



だけどホントは根っからの真面目で、だらし無い訳じゃないということは関わってみたら自ずと分かってきて、目先のことだけで決めつけてた時を申し訳なく感じたこともある。
(ぶっちゃけ意外だったけど。)



それに悔しいことに、
私も好意を寄せる女の一人なのです。

でも女として見てくれてるんだかいないんだか、悶々とする日々です。
他の女の子に比べて扱いが雑なのです。



「...魅力、ない、かなぁ。」

「どうした?いきなりだな。」

「いや、...てか、口に出してた?なんかすごく恥ずかしい...!」

「なんだ、好きなやつでもいるのか?」

「いや、その、」

「ほぉー、誰だ?同じクラスか?」

「だから違うんだって!」

「はは、嘘を付くのもヘタだな。」

「もー!黙って!」

「璃黛は魅力的だと思うぞ。その辺の女子より女女してないけど、話してみると面白い。」

「ロイ、そーゆーの反則だとおもう。」

「ははは、そんな顔する君が悪い。」

「からかわないでよ!ばか!」

「珍しく照れてる姿も可愛いじゃないか。意外な一面発見だな。」

「ロイ!」



ずるい。
ホントにずるい。

そんないつも言わないようなことをぽんぽん言われれば、私だって照れる。

好意を寄せてる相手に言われたら、
そりゃ顔も赤くなると思うんですが。

飴と鞭の使い方、上手すぎです。
もー!その笑う顔もかっこよすぎ!

ロイはずるい。
でも、ずるいから好きです。



さっきまであれ程恨んだ連帯責任システムだけど、それがなければこの恋心を知ることも無かったと思う。

それに、こうやって一緒に帰ることも無かったはずだし。
偶然だけど接点をくれたシステムに少しだけ感謝をしたとある日の帰り道。



ジンクスが本当になるのはまだ先の話。










日常の狭間
2016.03.17了
ずるいから好きです


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