「...おかしい。」
「璃黛、どうしたの?」
「ねぇ、アルもそう思わない?」
「だからどうしたのさ?」
「エドの様子、最近おかしくない?」
「兄さんがおかしいのはいつもじゃない?」
「まぁ、そうなんだけど...」
「いつも通りじゃないの?」
「んー、そうなんだけど。なんか落ち着きがない、...気がする。」
「それもいつもじゃない?ほら。」
「それもそうなんだけど...」
うーん...。
「エドー!屋上、行くよー?」
「お、お、お、おうっ」
ほら、変だ。
...この違和感はなんだろうね?
つまらない授業を受けながら、意味もなくペラペラとめくった辞書に書いてあった文字が目に留まる。
好きとは、
1 心がひかれること。気に入ること。
2 片寄ってそのことを好むさま。
3 自分の思うままに振る舞うこと。
ドキッ、と心臓が跳ねた。
今までそんなこと思ったりしなかった。
そんな感情はオレの辞書にはなかった。
そう、なかったはずなのだ。
...が、辞書様々である。
分からなかった問題がパーン!と理解出来た時のように、最近オレの中に君臨していたモヤモヤの正体が分かった気がした。
オレの中に存在するコレ。
理由が分かった今もオレの意思など関係無いとでも言うように、グイグイと己を主張し続けている。
(好き、ねぇ...)
正体が分かった今、スッキリした気持ちになった。直後に襲ってきた色々なものが織り交った重圧感に頭を抱える。
とりあえず、夜にでもアルに相談しよう。
(はぁ...、お昼何かな...)
ふぅ、とため息をついて時計を見たと同時に4限終業のチャイムが鳴った。
ガヤガヤする教室や廊下。
その中からパタパタと聞き覚えがある足音と話し声がふたつ。
お昼はいつも3人でと決めていた。
(意識するなよ、オレ。)
普通に、普通に、いつも通り、いつも通り、...と、心の中で何度も暗示をかけた。
「ーーーーけど...」
璃黛の声が聞こえてそっちを見れば、教室のドアからぴょこっと顔を出した。
「エドー!屋上、行くよー?」
「お、お、お、おうっ」
いま行く!と立ち上がる。
変に力が入って盛大にイスを倒し、ガターン!と教室に響くイスの音。
(オレ、バカ、意識しすぎ、)
そう思えば反射的に顔も赤くなる。
それを必死に誤魔化しながら、ビックリさせた人たちに軽く謝り2人の元へ。
璃黛がなんか言ってたけど、そんなことはもう耳に入っていない。
それよりも昼休みを普通に振る舞って過ごせるかが不安になっていた。
とりあえず、アルに相談するに当たって本題へ入るまでの前置きは必要無さそうだな...、と璃黛の後ろでニヤニヤしながらオレの様子を見るアルが目に入ったと同時にそう確信。
「ーーーって、聞いてる?!」
「んー、...っと!」
「ちょっと!エド!」
「あー、続きは後できいてやるよ!」
「もう!」
「困った兄さんだよね。ほら、璃黛も早く行こう?」
話しもそこそこに聞き流し、2人よりも先に屋上に続く階段へと足を踏み出した。
これから訪れる小一時間を考えるだけで、ドキドキする。
それにこれから先を考えれば考えるほど、モヤモヤする。
そんな気持ちを振り払うように、誰よりも先に屋上の扉を開け放った。
日常の狭間
2016.03.17了
バカ、意識しすぎ