「またぁ?!」

「よろしく頼むよ。」


そう言って渡してきたのは大量の紙。
これを、今から、一人で?


「な?お願い。」


そう言ってロイはニコッと笑う。
キラキラとフィルターがかかってると錯覚するような笑顔が眩しい。

が、

おいおい冗談じゃない。
何か面倒な雑務を押し付ける度にその笑顔は反則だから。
滅多に笑わないくせに意中の女を落とすときにするような何その悩殺スマイル。
絶対分かってやってる!タチ悪い!
今日こそ勝手にしろって言ってやる!
他の女は騙せても私は騙さ...


「璃黛にしか頼めない。」


「...かしこ。」


...れない、とは言ってない。
そんな笑顔に今日も私は振り回される。







カサ、

トントン、

ガチャリ、

何度この作業を繰り返しただろう。

違う種類の紙を一枚ずつ重ねて、丁寧に角を揃えて、最後に左上をホチキスで留める。

最初に比べて少し雑になってくるのはご愛嬌。
集中力が限界なのだ。


「あー、もう6時...」


頼まれたのは2時間前。

目の前にあるプリントと、留め終えたプリントの山を見比べる。
このペースだと更に2時間以上かかりそうなのが目に見えてため息が零れた。

雑務を押し付けた当の本人は明日の全校ミーティングの打ち合わせへ。

この量からして結構前から準備されていたはずだが、いつものサボり癖が出たんだろう。
手付かずの状態で渡された。

キリのいいところで帰りたいのは山々だが、これは明日使う資料のため帰るに帰れない。
放っぽって帰ってやろうかとも思ったが、如何せん良心がキリキリと痛んだため文句を言いつつ結局やる。

何故そんなに世話を焼くかと言われれば、ロイとは小さい時からの付き合いだからだとしか言えない。
ただの幼馴染ならこうもいかないが、家が隣で一緒に育ったようなもんなのだ。お互いの良いところも悪いところも知り尽くしている。
それに私は下に兄弟がいるから、長女気質が働いてしまうのかもしれない。

甘やかしてる自覚は重々ある。
仕方ない。あの笑顔には昔から弱い。


「はぁぁぁぁぁあああもう!ハーゲンダッツ食べたい!ロイのアホ!ハゲろ!ハーゲンダッツ!」

「それは酷いな。」

「...お?」

「...何で居るんだって顔だな。そりゃ会議も終われば様子を見に来るのは当たり前だと思うが?」

「はぁ...」

「それとも何か?俺が先に帰ると思ったってことか?」

「...まぁ、...半分くらいは。」

「...ほう。よく分かった。それに堂々と大声で悪口とはなぁ、璃黛?」

「つい。」

「良い度胸だな。...全く、せっかく買ってやったのにやらんぞ。」

「え!なに!いる!」

「謝罪は無しか!」

「ごめんなさい!」

「潔い!」


そう言ってポンと置くように頭に乗せられた袋を受け取って中を覗いてみる。

中にはついさっき叫んだハーゲンダッツが。
しかもチョコレートブラウニー味。
新発売のCMを一緒に見た時に食べたいって洩らしたのを覚えててくれたらしい。

ロイってばホントにハイスペック!


「ロイすごい!エスパーじゃん!」

「そうだろう!璃黛のことなど手に取るように分かる!」

「ふーん。何そのテンション。ありがと、いただきまーす。」

「...最近軽くあしらい過ぎじゃないか?」

「そんなことない。んー、美味しい!」


雑務も悪くないだろ?と声をかけたら、バカ言ってないで作業始めてて!と怒られた。


(璃黛は本当に美味しそうに食べるな。)


甘やかされてる自覚はあるが、困らせた後にお礼を言ったりあげたりした時の璃黛の笑顔が見たくてついやってしまう。

迷惑をかけてる自覚も重々あるが、いつも幸せそうに笑う璃黛が悪いと思う。(無意識S気質)

小さい時からその可愛い笑顔を見るのが好きで、今では最高の癒しとなれば悪いと思いながらも辞められないのも仕方ないことなのかもしれない。

要するに、俺にとって璃黛の笑顔は反則だということだ。




「二人でやると早いなー」

「それよりサボらなければ、今日こんなに遅くならなかったでしょ!」

「思ったより早く終わったから良いじゃないか。」

「もう絶対手伝わない!」

「そんなこと言わないでくれ。」

「知らなーい。」

「なんだかんだ手伝ってくれるだろう?」

「そんなことないもん!いつまでも甘やかしてもらえると思わないでよね!」

「はは、ツンデレのセリフだな。」

「もー!バカロイ!」


いつもの帰り道、今日も君と一緒に。

日常の狭間
2016.07.22了
その笑顔は反則だから


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