「兄さん隠れて!」
「うおおお!あっぶね!」
「もう、兄さん気をつけてよね。見つかるところだったよ。」
「バレたらシャレになんねーもんな。」
そう、シャレにならない。
ぶっ飛ばされるかもしれない。
...いや、それじゃ済まないかも。
私には同じ学校に通う幼馴染が3人居る。
エドワードとアルフォンスの通称エルリック兄弟と、ウィンリィ・ロックベルだ。
高校生になって1ヶ月ちょっとになるが、春うららかなとある日に事件は起こった。
その日はウィンリィと買い物をして帰ろうと話していたんだけど、進路相談があったらしく先に行っててと言われて1人ウィンドウショッピングしてるときにそれは起こった。
他 校 生 に 告 白 さ れ た の だ 。
通学するときに何度かすれ違ったこともあるらしいが、知らない人とお付き合いは無理なので丁重にお断りさせて頂いた。
...のだけれど「じゃあ友達から」と言われてそれなら良いか、とお互いにアドレスを交換したのだった。
......のだが、私は判断を誤ったらしい。これが始まりの合図だったと言っても過言ではない。
一 部 始 終 を 幼 馴 染 に 目 撃 さ れ て い た 。
他校生の彼と少し会話をして別れて直ぐに後ろから掴まれた肩にビックリして振り向けば、そこには笑顔のアルフォンスの姿。
「...ビックリしたー。アルじゃん!アルも何か買い物?」
「うん。そうだったんだけどさ。ねぇ、璃黛。」
「んー?」
「今の男の子誰かな?」
私の野生の本能がヤバイことになったぞと必死に脳に訴えていた。
それからはとんとん拍子。
アルに根掘り葉掘りが到着したウィンリィへ伝わり、きっとその日のうちにエドワードにも伝わったのだろう。
翌日の彼はすこぶる不機嫌が悪そうだった。
その割に何もアクションはなかったけど、気が付つけば日替わりで幼馴染に尾行されてる。
でも、それがバレバレである。
尾行というよりストーカーに近い。
許容している時点で公認ストーカーとでも言うべきか。...あまり良い気はしないが。
それに自分達の行動がバレてるだなんて彼らは思いもしないだろう。性格からして容易に想像できる。
というか、隠す気があるかさえ疑わしい。
今も数十メートル後ろでなんか言い合ってるのだが、声のトーンでバレバレである。
(...心配なら一緒に帰れば良いのに。)
小さい頃から過保護だとは思ってはいたが、それは自分が思ってた以上だった。
もう過保護のレベルではない。
ボディガードだ。ガードされているのだ。
そしてそんなことは言わずと知れたことで、既に周囲は黙認している。
「璃黛、まっすぐ家に帰るみたいだな。」
「うん、そうだね。」
「つーか毎日こんな尾行みたいなこと、バレたらやべぇぞ?」
小さい頃からの幼馴染。
可愛がってきたから大切なのは、僕も兄さんもウィンリィも変わらないだろう。
だけど璃黛に対して幼馴染から突飛した感情が僕にはある。自分でも分かっているつもりだ。
「そうなんだけど...。...ってアレ?璃黛は?」
「え?」
ふ、と璃黛が居た方へ目を向ければ姿がない。
家に帰るならこの道をまっすぐだ。
急いで十字路を見渡したが、見当たらない。
...どうやら見失ったらしい。
「ど、ど、どうしよう兄さん!ちょっと目を離した隙に!」
「アル、落ち着けって。そう遠くには行ってないはず。」
「よく分かったね?」
「え?」
「...って璃黛ー?!」
目の前に居たはずの彼女の声は後ろから。
「ねぇ、なんか言うこと...ないの?」
しかも、バ レ て る ?
「...じゃ!後は任せた!」
「ちょっ!兄さんの裏切り者ー!」
言うが早いか、我が兄は走り去った。
ちょっと。
どうしてくれんのさ、この状況。
「もう、エドってば。」
「はは...」
「...それで?」
「すみませんでしたー!!」
スタイリッシュに土下座をするしかなかった。
日常の狭間
2016.07.22了
公認ストーカー