7月の最終日は地元の花火大会。
蒸し暑い日中とは打って変わって、気持ち的にも涼しくなってきた夕方の出来事。


「ほら。」


そう言って差し出された右手。


「...え?なに?」

「だから!手!」

「え?ええぇ?!いい!大丈夫!」

「いーから!璃黛、はぐれそう!」


そう言って有無を言わさず握られる。

平均より小さい私と彼。
人混みに埋れれば見つけるのは至難の技。
はぐれるのもきっと時間の問題だと思ったんだろう。

いやいや、でもさ、恥ずかしいんだけど!
意識してしまえば熱は自然と2箇所に集中する。

ドキン、と一瞬心臓が跳ねた。


「お前、手も小っさいのな。」

「なにそれ嫌味ー?」

「カワイイサイズじゃん?」

「...エド、馬鹿にしてるでしょ。」


そんな会話をしながら、エドは私の手をまじまじと見つめたあとギュッと握り返して来た。

そのまま歩いて川岸まで来た。
外灯も少なくて暗く、人も多くて息が詰まる。

だけど、打ち上げまでもうすぐだ。
期待と興奮からか、周りも騒ついている。


「.........から............ぇ?」

「なにー?聞こえないよー?」

「だ......!......らい.........けど、あ.........かねぇ?」

「聞こえないよー」


何度か同じことを繰り返すが、周りのざわめきで全くと言っていいほど聞こえない。


「こっち!」


耳元で一言。
そのままエドに引かれる方へ着いて行く。


「この辺までくれば平気か。」

「ちょっと疲れたぁ...。エドってば、ぐいぐい先に行くんだもん。」

「悪ぃ。あそこじゃ会話もまともに出来ないだろ?さっきよりマシだと思うけど。それにお前、人多いと酔うじゃん。」

「まぁ、たしかに。」

「ここ意外と穴場なんだぜ〜?」

「そうなんだ。」

「まぁ会場から少し離れるけどな。でも花火、キレイに見えるぜ!」


わざわざ気を遣ってくれたみたいだ。

確かに人はちらほら居るけどうるさく無い。
さっきと違い、会話もちゃんと出来ている。


「そろそろ始まるな。」


そう言ってエドが時計を確認したと同時くらいにドンッ、と花火が上がった。


「わぁー!」

「おー、上がったな。」


真っ黒な夜空に色んな光の花火が映える。

ふ、と花火に向けてた視線を璃黛に向けた。
夢中で花火をみている。


(なんか可愛いな。)


いつもとは違う雰囲気。
視線に気づいたのか、璃黛が花火に向けていた視線をオレの方へと向けた。

ドキッ、

心臓が跳ねた。
ぎゅっ、と離れていた手を引き寄せる。


「なぁ、璃黛...」


精一杯の勇気。
触れるだけのキスをした。

自然と目が合って、璃黛の顔が赤く見えるのは花火の光のせいだけじゃないと思う。

オレもきっとそうだろう。
それに、バクバクと心臓がうるさい。
しばらくお互い花火のどころじゃなかったと思う。


「エドと一緒に来れて良かった。」

「...オレも。」


チラッ、と璃黛の顔を覗き見れば、
瞳に花火が写ってキラキラ輝いている。
繋がれたままの手をギュッ、と握った。


(あー、なんかすっげぇ幸せ。)


終わらない恋になれ、だなんて柄にもなく思った。

日常の狭間
2016.07.22了
終わらない恋になれ


ALICE+