「ねぇ、これでも僕も男の子なんだけど。」
そう言ってイタズラ顔でにこっと笑った。
こんな渚くん、私は知らない。
最近同じクラスの彼氏が出来ました。
名前は葉月渚くん。
日に当たると透けてきらきらしそうな瞳と、触ると柔らかそうなふわふわの明るい髪が特徴。
部活は水泳部でブレストロークが得意。
考えるより先に直感で動くタイプで、予想できない突飛した行動が面白い。
その行動で周りは振り回されたりするけど、憎めないのが渚くんのすごいところ。
そんな彼はクラスでもムードメーカー的存在。
元気で明るく社交的な性格と、小柄で可愛い容姿をしているからか、最近は女子からの人気も上がり気味。
それに見た目華奢なのにどこに入るのか、可愛い容姿からは想像できないくらいよく食べるのだ。
またそこがハムスターを連想させる。
本人はペンギンが良いって前に言ってたけど。
そんな彼がちょこちょこと動き回りながら、くるくる変える表情を自分の席から観察するのが最近ちょっと楽しい。
そんなこと思いながら眺めていると、クラスの女子にお菓子もらってる。
嬉しそうに食べていてなんだか可愛い。
かと思えば、今度は竜ヶ崎くんにじゃれ始めた。
竜ヶ崎くんちょっと怒ってる。
でも渚くんは笑ってるし。
…あ、視線に気づいた。
なんだか楽しそうにこっちに向かってくる。
「璃黛ちゃんなに笑ってるのー?」
「渚くんって可愛いなぁ、と思って」
「えー?!璃黛ちゃんまで?僕、好きな子にはかっこいいって言われたいんだけど!」
「はは、渚くんは可愛いが似合うよー。」
「…みんな、可愛い可愛いって……」
「……渚くん?」
うつむき加減で表情見えない。
拗ねちゃったのかと思って言葉をかけようとしたら、急に腕を掴まれて教室から連れ出された。
いつもと違う雰囲気の渚くん。
怒らせちゃったかなと腕を引かれながらチラッと横顔を覗きみれば、鋭い目付きと目が合った。
連れて来られたのは廊下の死角。
(……え、…な…に………?)
目の前にはいつものクリクリした小動物のような瞳の渚くんではなく、目の奥がギラギラした狼獣のような瞳をした渚くんの姿。
ドキッ、と一瞬心臓が跳ねる。
背中には壁で目の前には渚くん。
壁には手を着かれて逃げ場はない。
顔が近づいたと思ったらキスをされた。
ほんの一瞬の出来事に、時間が止まったような気がした。
「ねぇ、これでも僕も男の子なんだけど。」
「…………」
渚くんはそう一言。
こんな渚くん知らない。
私はびっくりして声も出なかった。
「びっくりした?可愛いなんて言って油断してたら、こうやって璃黛ちゃんのこと食べちゃうんだから。」
がおーっと言ってイタズラ顔でにこっと笑った。
嘘みたいにさっきの雰囲気は感じられない。
初めて見せられた新しい一面。
未だに心臓は激しく波打っている。
(……身を守るためにも、可愛いはしばらく禁止にしよう。)
楽しそうに教室戻っていく渚くんの後ろ姿を見ながら、私は一人そう誓った。
2014
修正 2016.05.05
そして感じる身の危険