開け放った窓の外から激しい雨の音がする。
もうすぐ梅雨だったっけ。
それにしても今朝はなんだか肌寒い。
もぞもぞと毛布にくるまろうとして、いつもと違う変化に気付いたのは毛布を引き上げた矢先のことだった。
「.........?」
動かしたと同時に腰に微かな重み。
脳が機能してくれば自然と感じる背中の温もり。
振り返ってみると、目の前にはすやすやと気持ち良さげに眠る幼馴染の顔があった。
「............?!」
状況が理解出来ずに暫し固まったが、どうやら昨夜は彼に添い寝されたようだった。
何故こんなことになっているのかと考えても、記憶が曖昧で思い当たる節がない。
昨日は仕事帰りに飲んだけど、それでもハルが居る意味が分からないし、そもそもなんで一緒に寝ているのか理解出来ない。
ハッ、として毛布にくるまれた自分の身なりを確認してみれば、身につけているのは下着のみ。
(うわぁ......もしかして酒の勢いで遙とやっちゃった?やっちゃったの、私?!)
まさかの最悪の事態に悶々と膨らむ昨夜の妄想。
いい具合に顔が青ざめてきた頃、隣で寝ていた遙が身動ぎをした。
「.........ん、......」
聞こえた声に恐る恐る振り返ってみれば、薄っすらと開かれた瞳と目が合った。
「.........起きたのか。」
「.....................」
「.........おい、まだ酒が抜けてないのか?」
心配そうに声をかける遙をよく見てみれば、今は見たくなかった程よく鍛えられている何も身につけていない上半身。
ああ、やっちまった......と頭を抱えるしかない。
「.........どうした?頭痛いのか?」
「..................」
「......おい、璃黛?」
「.........ねぇ、とりあえず、服、着ない?」
「......別にいい。」
「別に良くない!」
「朝からうるさいな。」
「誰のせいだと思ってるの!」
「璃黛だろ。」
そう言われればそうなんだけど、動揺しまくりな私を余所に遙は嫌に落ち着いている。
「.........昨日......なんで......ハルが居るの.........」
「......居たら悪いのか。」
「.........てか......服......下着で......裸で.........?」
「......覚えてないのか?」
「は、ハル......?ど、どういう意味、かな......」
脳内で悶々と繰り広げられる妄想に私は頭を抱えながら、そこまで言ったところで遙が鼻で笑って言い放った。
「.........俺だけの秘密。」
「......はあぁ?!」
しかもドヤ顔で。
それが事実を突き付けられているように感じてしまい、私の不安感を逆撫でさせる。
こんな時に限っていい加減にしてもらいたい。
「ちょっと......何それ.........」
「......そのままの意味に決まってんだろ。」
「理解出来ない!ちゃんと説明!ハル!!」
「うるさい。......もう少し、寝る。」
「ちょっと、寝ないで!てか、帰れよ!」
「......良いのか......?」
「むしろ帰ってください。」
「......ぐぅ......」
「分かりやすい狸寝入りしないでよ!」
「.....................」
「ちょ、ガチ寝しないで、遙!」
背を向けて寝る体勢の遙をゆさゆさと揺さぶり続けていると、急に遙が起き上がる。
そして腕を引かれたかと思えば、私は体勢を崩してそのままベッドへと倒れ込んだ。
「......いい加減にしろ。」
そう言われた目の前には天井と遙の顔あって、ぐるりと私の視点が反転したことが伺える。
なんだか悔しいので、抗議の一つでもあげてやろうとしたがそれよりも先に遙の口が開かれた。
「......昨夜の続き、......してやろうか?」
「はあ?!」
「.........知りたいんだろ?」
「.........この状態でその言葉はどう考えても無しじゃないですか、......遙くん。」
外の降り頻る雨音を聞き流しながら、どちらからともなく唇同士が触れ合った。
2014
修正 2016.05.05
全て溶けて混ざり合ってしまう前に