外は文字通りの炎天下。
約束の時間は疾うに過ぎている。
刺さる日差しに多少の湿気、そんなダブルパンチを受けながら、待ち合わせ場所に待機している私は些かの苛立ちを覚えていた。
それにしても遅い。
いくらなんでも遅すぎる。
もしかしてあの男、今日の約束自体、忘れてるんじゃないだろうか。
あり得すぎる展開を想像して、私の口からは「はぁ…」と重いため息が漏れた。
そしてあれから更に30分。
いい加減、しびれを切らしている私は、また鞄からケータイを取り出して、本日何度目か分からない電話をかけた。
耳に当てた機械からは、ありきたりの電子音が聞こえてくる。コールが数回鳴ったところで、最後に繋がるのは、やっぱり留守番電話サービスだった。
ああ、もう!本当にもどかしい!!
そんなイライラを揉み消すように、私はまた、更に重量感のある大きなため息を一つ吐いた。周りの待ち人は入れ替わり立ち替わりで、ここでずっと待っているのはもう私一人くらいだ。
待つも来るも男女男女。
たまに同性かと思えばまた男女。
つまり、周りのほとんどがカップルだというわけだ。
比較的メジャーな待ち合わせ場所ということもあるけど、こうもカップルが多いと、なんだか私は少しだけ惨めな気分になった。
それに追い討ちをかけるように、ケータイは相変わらず繋がらない。コールが鳴るということは、多分、いつも通りサイレントモードにしてて気づいてないだけだと思うけど。そんなことを思いながらちらっと腕時計に目をやると、時刻は既にお昼を回ってしまっていた。
日差しは暑いし身体はベトつくしでもう帰ろうかな……と、目の前の駅へと目を向けたところ、ちょうどその時、私は駅のホームから出てくる見覚えがあり過ぎる人物の姿を目で捉えた。
彼はキョロキョロと辺りを見回しながら、自身のポケットからケータイを取り出した。そして画面を見たらしい彼は、少し焦った顔をしたあと、今度は必死に周りをキョロキョロとし始めた。
多分、あれ、着歴の多さに焦ったんだな。
そう思いながら眺めていると、彼はやっと視界に私を見つけたらしく、途端にぱあっと顔を明るくさせて、呑気に手なんか振りながらこちらに近づいてきた。
「おー璃黛、悪い悪い!待った……よな?」
「……清、遅い。」
「すまん、寝坊だ!」
「連絡くらい入れてほしいんですけど。」
「悪い!急いでたからな!」
「……私、めちゃくちゃ連絡したんですけど。」
そう言えば、清十郎はまた笑いながら「悪かったな!」と謝ってきた。
悪い悪いって、散々待たせたくせに笑いながら言われれば、さすがの私も腹立つんですけど。本当に悪いと思ってるのかわからない顔に、少しだけ蘇るさっきまでの苛つき感。
その私のあからさまな顔に対して、「久しぶりのデートなんだからそんなに怒るなよ。」と言う清十郎。そんな彼に対して、私は「そうさせたのは清十郎なんですが?!」と大きな声で言ってやりたい衝動に駆られた。
いやでも、多分言ったところでまた笑いながら、「悪い悪い!」って言われるだけだと思うけど。そう思えば、出したいと思わなくても、私の口からは自然と盛大なため息が漏れていた。
「ん?どうしたんだ?」
「いや…なんでもないし。」
「そうか?じゃあほら、手でも繋ぐか?」
「……いい。清、暑苦しいし、熱気くるし。」
「ははは、ひどい言われようだ!」
そう言いながらも、清十郎はいつものように豪快に笑いながら、「いいから、仲直りの印に繋ごうじゃないか!」と、結局、私の手を握ってきたのだった。
ちょっと不満が顔に出る。
それを見た清十郎は、「そろそろ機嫌直せよ。今からそんなんじゃ楽しくないだろ?」と、彼よりも背の低い私に対して、前かがみになりながら優しく顔を覗き込んできた。
「それに、璃黛は笑ってる顔の方が可愛いからな!」
そう言って、彼はまた暑苦しいくらいに豪快に笑った。
2014.09.10
修正 2016.07.22
君らしく笑う顔が好き