「白と黒のカフェってどこよ……?!」


はぁはぁと息を切らしながら、「そんなパンダみたいな柄のカフェなんてそうそう無いよ!」と私は思わず独り言を呟いた。

事の発端は数時間前。
大学の講義を受けていると、鞄に入れたままだったケータイのバイブ音が聞こえた。
講師の目を盗んで画面を見ると、タイトルが未記入の、知らないアドレスからのメールを受信していた。よく分からないものはスルーすることが多いけど、今日に限って「なんだろう?」と思ってそれを開いてみると、メールの本文には「モノトーンのカフェで待ってる。」とだけ書かれていた。
たったそれだけなのに、差出人が誰なのか分かってしまった。多分、宗介だ。

彼と私は高校時代に付き合っていた。
順調にいっていたはずが、卒業と同時に自然消滅してしまっていて、あれから既に二年が経ってしまっている。
恋心なんてもう無いに等しいのに、気が付けば、私は講義そっちのけに大学を飛び出していた。

電車を使ってよく出かけた街まで足を運び、高校時代の記憶を頼りに、カフェというカフェを探し回っているのが現状だ。なかなか見つからないことに苛立ちを覚えつつ、「本当にここに居るのか」という不安が押し寄せる。思えば、カフェなんて沢山あるし、外観が同じような店ばかりが並んでいる。

立ち止まって悩んでいると、「あ、返信すればいいじゃん!」と私は今の今まで忘れていた最高の手段を思い出した。
善は急げと鞄からケータイを取り出そうとして、ふと、視界の隅に見覚えがあるお店が目に留まった。昔、気に入って、よく宗介と足を運んだお店だ。
そういえば、確かここ、見た目に反して中が白黒調でパンダみたいって思ったな……なんてことを思い出した。まさかと半信半疑でウィンドウ越しに中を覗くと、いつかの記憶と同じように、お店の雰囲気に似つかわしくない彼の姿が静かにそこにあった。

恋心なんて、もうとっくに忘れていたはずなのに。
視線が交わると同時に、懐かしさと恥ずかしさが混じったような微妙な気持ちのまま、私は軽く手を降った。


2014.09.29 
修正 2016.07.22
私がここに来た理由


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